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Lv1の剣  作者: 豚野朗
エルフの隠れ里
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襲撃者(次の目的地)

 パチパチと燃えた木が弾ける音。

 ざっざっと周囲を人が歩くような声が聞こえる。

 カチャカチャと何かが当たり合う音もあった。


 音につられて、目を覚ました。

 目に入ったのは。知らない天井。

 木で囲まれた狭い部屋だ。


 ぼうっとした頭で、ここがどこなのか考える。

 それが馬車の中だと理解するのに、少し時間がかかった。

「そうか。馬車か、あいつに無理やり連れ出されたんだっけ」

 身体にかけられている毛布を横にどけて、しまっているドアから外に出る。


 少し冷たい朝の冷えた空気が身体に突き刺さる。

「さむっ……」

「あっ、おはようございます。よく眠れましたか?」

 馬車を引いていた馬を世話をしていたエルフが、俺に気付いて挨拶した。

「おはようございます。はい、それはもうぐっすりと。徹夜で見張りをしてもらったおかげです」

「それはよかったです。朝食も作っていますので、すぐに食べられますよ」

 ブラシで馬の毛並みを整えていて、馬は嬉しそうにブルルと鼻を鳴らしていた。

 他のエルフたちは、各々食事を作ったり武器を整備したりしている。

 集中しているようで、話しかけにくいので火の音がする方へ向かった。


「起きたわね。まったくこんな時間まで寝ているなんて……。もう太陽も登っているわよ」

 アリスが先に地面に座って、お茶のようなものを飲んでいた。

「早過ぎるだろ。昨日は、いろんなことがあったんだから寝させてくれよ」

「おはようございます。新川さん、あなたも飲みますか。少し苦いですが、美味しいですよ」

「おはようございます。ガリアさん、じゃあ、いただきます」

「どうぞ」

「ありがとう」

 木のコップに入れられた薄緑色の湯気の立つ液体をもらった。

 一口飲んでみると、本当に緑茶みたいな味がする。

 言っていた苦みも、お茶の苦みなので逆にほっとした。

「美味しいです」

「それはよかった。そろそろできあがりますので」

 火にかけられた鍋の中で、たくさんの野菜と肉が美味しそうな匂いを立てている。


 ぐぅとお腹が鳴る。

 昨日の夜は、軽いものをお腹にいれただけだったから、お腹がすいていた。

 出来上がるのを、火の近くで暖まりながら待つことにする。


 *


 昨日……。


「誰ですか!あなたたちは」

 俺は馬車を囲む人たちに問いかけた。

 武器を構えたまま油断なく、近づいてくる。


「お前たちこそ、誰だ。先ほどの爆発はお前たちに関係しているのか」

 囲んでくる人たちの中でも一際大きい人影が、俺たちに問いかけてきた。

 先ほどの爆発というのは、アリスの『プロミネンス・エクスプロージョン・セイバー』の事だろうか。

 だったら、それは関係がある。


 それをそのまま伝えたら、襲われそうな雰囲気がある。

「な、何のことか分かりません」とごまかす。


 しかし「それは、私よ」と隣で自信満々に言い放つアリスさん。

「な、なに言ってるんだ!違いますからね!」

 アリスの前に出て、あわあわと手を振る俺は怪し過ぎる。

 何とかごまかさないとと慌ててしまって、逆に変になってしまった。


 襲撃者の武器がガチャガチャとなる。

 まずい、襲い掛かられると思って、剣をアリスに渡そうとした。

 しかしアリスは受け取ろうとする気配はない。


「もしや、アリス・キング様ですか?」

 俺たちに問いかけてきた人が、アリスの名前を呼んだ。

「そうよ。あなたたちは、隠れ里のエルフ達ね」

「はい。お会いできて、光栄です」

 流れるように膝をつき、頭を垂れる。


「顔を上げなさい。それで何故、ここにいるのかしら。エルフは、隠れ里から必要以上に出ることはないと聞いたのだけど」

「それは……、いえ、それは後で説明いたしましょう。アリス様がいらっしゃるなら、心強いです。あの方も、喜びます」

「あの子は、元気かしら」

「もちろんです」

 そしてその人は顔を隠しているフードを後ろに払い、その顔を明らかにした。

 続いて、すべての襲撃者たちもフードをどけていく。

 そして武器を収めて、同じように膝をついた。


 線の細い美形な顔の造形。

 そして一番目に付くのは、大きなとがった耳だ。

 まさにエルフという恰好だった。


「隠れ里によるつもりだったけど、案内をお願いしても良いかしら。武器と治療薬も少しだけもらえると助かるわ」

「是非。私どももアリス様のお力をお借りしたいと考えているのです」

「もちろんよ。友達のいる里になら、無償で協力するわ」

「ありがとうございます」

 アリスとエルフの間で、どんどんと話が決まっていく。

 俺を差し置いて。


「なら、俺は戻ってもいいよな」

「ダメに決まっているじゃない。帰る足はどうするのよ。馬車の操作はできないのでしょう」

「あっ……」

 戻りた過ぎて、基本的なことを忘れていた。

「それに魔物もダークナイト・グランドだっているのよ。一人で戻れるの?」

 アリスの言葉に一理も二理もある。

「戻れないです」

 馬車の壁に寄りかかって、現実逃避に空を見る。


 エルフたちがアリスが口にしたダークナイト・グランドについて、何か言っていたが赤く染まった空を見上げていた俺の耳には聞こえていなかった。

 結局、俺は戻るという手段を使えないようだ。

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