表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lv1の剣  作者: 豚野朗
王都
109/206

相談(元の世界)

 俺とアリシアさんは一旦、エリザベスの部屋に戻ってきた。

 ちょうどエリザベスが戻って来ていたので、一緒に考えてもらう。

 俺とエリザベス、アリシアさん、エリザベスで一つのテーブルを囲み、座って向き合った。

「私の商会の商会会長がアリス姫と会話して、新川さんを連れていく条件は、明日一騎打ちでアリス姫に何らかの方法で一撃を与えることとなりました。ただ今の新川さんには、この条件をクリアすることは不可能なので、商会会長が二つ提案してもらいました。一つは祝福の解除です。しかしドワーフの王カージ様と妖精族の王女リリン様のお二人にお話をしてきたところ、どちらも祝福の解除は難しいという結論でした」

 まずアリシアさんが簡単にまとめる。


「さらに女神によってかけられた祝福はこの世界の外の力のために、解除できる人はほぼいないという事です。そして教会都市のトップが、解除できる可能性がある唯一の存在であり、可能性も低いと仰っていました」

「教会都市ですね。少し遠すぎるわね」

「ええ、ですから、教会都市に頼むのは物理的に不可能です。だから第二案の新川さんの知恵を借りて、この世界にない方法を使うべきだと思われます。それで新川さん、何か思いつきましたか?」

 全員の視線が俺に向く。


「アリスに一撃か……。でも今までの戦いを見て来たけど、あれに渡り合える気がしないんだけど」

 魔王の幹部を倒してきたアリスの戦いぶりは一番近くで見てきた俺が知っている。

 とんでもない速度で走り回り、剣を振るい、まるで嵐のような魔法を使う。例え手加減をしてもらっていたとしても、全く歯が立たないのは明らかだった。

 アリスがいなければ、俺は何度死んでいたか。

 不意打ちだとしても、それをアリスが簡単に受けるはずがない。

 だからこそ、俺の元の世界の知識を使わなければならないという事だろう。

 アリスの知識の外側で、俺がアリスをたった一撃でも越えなければならない。

 しかし残り一日足らずで、それができるかどうか。


「そのような話であれば、どんな形であれ、一撃という形であればアリスお姉さまは認めて下さると思います。嘘は決してつきませんから。新川さんは戦士ではありませんので、どんな汚い手を使おうと許して下さると思います」

「どんな汚い手って……」

 エリザベスの身もふたもない事を言う。

「一対一でなければならないとは思いますけどね。流石に背後から別の誰かを使って、不意打ちをしたらアリス姫はお怒りになるでしょう」

 流石に二人で襲い掛かったら、怒られるか。

「しかしアリスお姉さまに複数人で戦っても、無策なら返り討ちになってしまう事でしょう。現に朝からアリスお姉さまは何人もの兵士にけいこをつけていらっしゃいます。数で押すだけでは、アリスお姉さまに傷一つつけられないでしょう。下手に数を増やせば、アリスお姉さまの手加減ができなくなって、更に隙を減らしてしまいます」

「それはそうだろうな。不意打ちを成功させるなら、一対一でなければならないのか」

「ええ。不用意な作戦は、成功を下げる可能性すらあります。アリス姫からも分かりやすい作戦なら、油断を誘えるかもしれないですね」

「アリスお姉さまはそんな事で油断はしないと思うけど、怪しまれるよりはましね。何かいい鎧か魔導書でも用意しましょうか?」とエリザベスが俺に聞く。

 仮にも王女様であるエリザベスならば、かなりいいものを揃えてくれるだろう。


 しかし俺は首を横に振った。

「それは考えたけど、アリスが知っていたら条件の一撃というものを与えられない。アリスにきっとよけられるから、ただ良い物というだけじゃ無理だと思う。どうにか完全に意表をついて、この一撃という物を入れる。アリスが知らないという事と、アリスの避けられない方法である事の2つを達成しないといけない」とエリザベスに説明する。

 すると「確かに」と言って、エリザベスは難しい顔をした。

「アリスお姉さまが知らず、かつ避ける方法の分かりにくいとなると難しいですね。新川さんが振るって、ある程度速度のあるものでなければならないと」

「あるいは、広範囲にあてられるとか……」

 アリスが面食らっている間に、不意打ちで何かを当てて、それを一撃とする。

 それしか俺に残された方法はないが、難し過ぎる。


 うんうんと三人でしばらく黙り、頭をこね繰り返す。

 しかし「私のような商人には、さっぱり思いつきません。そもそもアリス姫と戦おうとする方が、おかしいんですけどね」とアリシアさんは根を上げた。

「アリスお姉さまを傷つけられるものなど、この国にはいません。熟練の兵士が複数人でかかっても、アリスお姉さまには触ることさえできないので、ほぼ不可能と言っても過言ではないはずです。それを乗り越えなければならないので、並大抵のことでは無理です。アリスお姉さまを傷つける方法があれば、前線で戦う者たちにも教えたい所です。それだけできっと生存率を飛躍的に上げられます」

 エリザベスさんも首を振って、諦めてしまう。


 そうかとうなずきながら、俺は元の世界に思いをはせる。

 平和な戦いのない日本という世界。

 この世界とは真逆の魔物と諍いのない世界だ。

 だから俺は戦いなんか、全く知らないし、武器を持ったことも一度もない。授業で竹刀をもった時が、最期ではないだろうか。

 レベルという概念もなく、全ての人間が同じステータスから始まり、こちらの人間から見ればほとんどステータスが変化せずに終わるのではないだろうか。もしアリスみたいな高速で移動して、化け物みたいな力を持つ人がいたら一躍有名人だろう。

 だから戦いなんて俺の身近にはなかったから、想像がつかない。簡単な武器なら、思いつくけれども……。

 剣や槍、斧、弓……と思案していくけれども、これらは全部、この城の倉庫で見ていたもので意表を突く道具にはならない。

 そしてさらに武器を連ねて行って、あっと思いついた。

「銃……」

 この世界で見たことがない、誰もが思いつくようなありきたりな武器。

 速度も十分にあるだろう。


「ジューとは、なんですか?」とアリシアさんが俺に問いかけてきた。

 その言葉を聞いて、銃の概念がない事を確信する。

 商人のアリシアさんが知らないのだ。他の物が知る訳がない。

「それが新川さんの世界にあるものですか?」

 エリザベスの方も知らないようだ。

 だとしたら、確実にこの世界にないものだ。

 速度も申し分ないはず、正直銃の本物を見たことがないから分からないけど。

「銃っていうのは……」

 俺は自分の知っている銃の知識を、二人に伝えた。

 これでアリスの条件をクリアできる。俺は目の前が少し、明るくなった気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ