妖精王女(セクハラ)
「ようこそ。いらっしゃいました。妖精族3代目王女のリリンと申します」
庵の中には、絶世の美女がおしとやかに座っていた。
椅子に座って、ティーカップでお茶を飲みながら、入ってきた俺たちを歓迎してくれる。
床まで届きそうなストレートの長い黒髪と細い肢体。まるで人形のような作られたような美しさで、神秘的な雰囲気すら感じられる。
「あなたが妖精族の……?」と俺は聞き返してしまった。
「はい。私がリリンです。何か問題がありますか」と少し柔らかな口調だが、とげのある返事が返ってきた。
初対面で失言をしてしまった。
それは目の前にいる女性が普通の人間に見えたからだ。
外にいた妖精たちは掌に載せられるほど小さかったのに、俺と同じ背丈の女性が妖精族の王女と名乗ったのに違和感を持ってしまったのだ。
当然のように、あれと同じような大きさだと思っていたので、咄嗟に違和感から抜け出せなかった。だから失礼な感じに聞いてしまったのだ。
「い、いえ、ただ大きかったので!思わず!」と弁明をするも、リリスさんは自分の大きな胸を細い腕で抱きしめるように隠した。
彼女の来ている薄絹のようなドレスだから、肌の柔らかさが見えてしまい、目の毒だ。
「新川さん!何を言っているんですか。リリン様に向かって!」
アリシアさんに正当な理由で怒られる。
そして頭を押さえつけられて、無理やり頭を下げさせられる。
「ち、違います。身長の方です。身長が大きいと言っているんです」と必死に言い訳をする。
ぐいぐいと女性と思えないほどの力で頭を押さえられているが、これはレベル差によるものである。妖精の王女様に失礼をしてしまったと加減を忘れてしまっていて、割と俺の腰がやばい事になっている。
ただ俺の腰が心配だが、初対面にセクハラを行う変態というレッテルを早く取っ払わなければならない。
「本当にすみませんでした。そういうつもりじゃないんです。ただ妖精と聞いていたので、人間と同じくらいの大きさだったのに驚いたんです。信じてください」
「あ、新川さんは少し失礼なところもあるけれど、まじめな方なんです。許してあげてください」
アリシアさんとともに謝罪をして、リリンに許しを請う。
もしも許しを得られなければ、どうなってしまうんだ。
確実に女神の剣の祝福の答えはもらえないし、外の妖精の態度を見るに処刑もされるかもしれない。
妖精にくぎを刺されておいて、初手で失礼をかましてしまうとは、もう油断としか言いようがなかった。
自分に蹴りを入れたい。
「お許しを……」と頭を下げ、謝罪をし続けていると、くすくすと笑い声が聞こえた。
顔を上げると、口を綺麗な手で隠しながら笑っているリリンが見える。
「え……っと……」と俺が戸惑っていると、「ごめんなさい」とリリンさんが謝っていた。
「はい?」
「冗談ですよ。妖精族の中で、王女となる力を持つ者は身体が大きく成長するのです。私を見て、戸惑われる方がいらっしゃるのですよ。だから慣れています」
種明かしがされて、ほっと胸をなでおろす。
「じょ、冗談でしたか。はあ、心臓が止まるかと思いました。自分の心臓が止まりかねませんので、もうお戯れはおやめください」とアリシアさんが深いため息をつきながら言った。
外面から見て取れなかったが、かなり緊張していたようだ。
そりゃあ、そうか。妖精族というのがどういう役割をしているのか分からないけど、その王女様をセクハラで怒らせてしまいそうになったのだから、肝が冷える事だろう。
無駄に心労を与えてしまったようなものだし、いつかお礼をしないとな。
「ふふ、お仕事をした後なので、少しいたずらしたくなってしまったのです。妖精族ですから」とリリンは舌を出した。
最初は神秘的な印象を受けたけど、いたずらをしてごまかすような仕草をすると、子供のようにも感じる。
「妖精族はいたずら好きと聞きます。旅人にいたずらを仕掛け、困らせる。そのような童話を聞いたことがありますね」
「ええ。妖精族はいたずら好きなんです」とアリシアさんの言葉にリリンは頷く。
「いたずら好きなのは分かったので、あの……本題に入っても良いですか」
「どうぞ」とリリンに促され、「この剣を見ていただけないですか」と俺は本題に入る。
俺は自分の腰に差している剣をリリンの前に差し出した。
「この剣ですね。確かに凄まじい力を感じます。この力ですね、感じたのは。まるで太陽のような聖なる力の塊。あなた方の声が聞こえた時、この力を感じていたので招き入れたのですが、目の当たりにすると恐ろしさすら感じます」
手にすることもなく、ただ見るだけでリリンは剣にこもっている力を認めた。妖精族の王女の力は確かなようだ。
「分かるんですね。じゃあ、この力を剣から取り除いたり、弱めたりとかは……」
それが妖精族の王女様へのお願いだ。
ポンポ商会会長から妖精族の王女様はとてつもない力を持っているから、そういう事ができるんじゃないかと聞いているのだ。
もしも本当にできるのなら、すべての問題は解決できる。
せめて経験値を奪われるという能力をなくすことができれば……。
妖精族の王女様は重々しく口を開いた。




