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Lv1の剣  作者: 豚野朗
王都
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商人(アリシアとの再会)

「アリシアさん、お久しぶりです」

 城の中の客間に、十数人の男女が集まっている。

 今回の『大侵攻』のために、各地の商人たちが来ていて、ここが待合室となっているのだ。そしてその中に顔見知りのアリシアさんがいた。

 顔見知りというか、アリスと共に始まりの町で一緒に戦った戦友ともいえる商人だ。あの後、アリスに誘拐されたから、ろくに挨拶もできていなかった。馬車で少し話したけれど、その後は連絡の取り方が分からなかったから、離すのはそれ以来、本当に久しぶりだ。

 だからアリシアさんが来ていることを名簿で見て、エリザベスさんにアリシアさんの所を紹介してもらったのだ。

 初対面の人間に俺の色々を説明するのは苦労するので、俺の事を知っているアリシアさんが城に来ていたのは本当に幸運だ。


「新川さん、お久しぶりです。アリスがいるので、新川さんも来ていると思っていましたが、お元気でしたか?」

「はい。元気です、今は。アリシアさん、エリザベスさんから紹介状をもらってきたので、商会会長と合わせて欲しい。会って、いろいろと珍しいものを仕入れたいんだ」

「紹介状があるなら、私が拒絶する理由はありません。紹介状を確認しても?」

「はい。これです」

 アリシアさんの手に、エリザベスさんからもらった紹介状を手渡す。


「はい。確認します」

 アリシアさんは紹介状を確認して、「問題なさそうですね」とすぐに返してきた。

「商会会長は今、商談中ですがすぐに戻ってくる予定です。仕入れたいものを先にお聞きしてもよろしいでしょうか。私の方でも調べられるものであれば、探せますが」

 そんな風に、アリシアさんは言ってくれたが、まだ何があればいいのかという物は決まっていない。

 アリスを説得できる何かを探しているが、エリザベスさんと昼食の時に会話したもののお互いに収穫はなかった。

 それでガリアさんに言われた通り、エリザベスさんに商会会長への紹介状を書いてもらって、何か良さそうな掘り出し物がないか話に来たのだ。


「何か特定の物という訳ではないんです。事情があって……」

 そしてアリシアさんへこれまでの事情を説明した。

 アリスに別れを告げられたことや『大侵攻』へ参加するためにアリスを説得する方法を探していることなどをかいつまんで説明する。

「なるほど。アリスと会いましたが、新川さんがいらっしゃいませんでしたので何かあると思いましたが、そんな事になっていましたか。新川さんについて聞いても、はぐらかされてしまって……。でも新川さんが困っているのであれば、お手伝いさせていただきます」

「ありがとうございます。それで目的が定まっていない状態ですけど、何か俺が強くなれるような商品はありませんか」

 単純に言うと、俺が強くなればいいと言えるが、それがあるのか確認したい。


「いえ、私には思いつきません。そんなものがあれば、これから行く兵士たちへ渡しています」

「そりゃそうだよなぁ……」

 レベル1の俺に渡すよりも、俺よりも強い奴に渡す方が良いに決まっている。それにそんな便利アイテムがあれば、アリスが知らないわけないな。

「すみません、力になれなくて……」と申し訳なさそうに小さくなってしまう。

「だ、ダメでもともとだったので、気にしないでください」

「そうですが、アリスにずっと付き添って頂いていたので、私としてもお礼をしたかったのですが……。今回は役に立てないようです」と肩を落とした。

「そ、そんなことないですよ。ロックジャイアントの戦いのときには、助けてもらいましたし……」

「あれは、むしろこちらが新川さんを巻き込んでしまった形でしたし……。そうです、ちょうど今朝、商会からのお礼金を先ほど、入金しましたが確認しましたか」

「へっ?」

 そういえば、アリシアさんと前に会話した時にお礼をするという話があったような気がする。


「ステータスカードに記載されていますので、確認して見てください。多分、びっくりすると思いますよ」とくすくすとアリシアさんは笑った。

「それにアリスの方からも入金があると思いますので、きっと貴族と同じくらいのお金を持つことになりますよ」

 貴族か……。魔法都市でのあれこれで、あまり貴族に良いイメージがないんだよな。リダ家と魔王の幹部が実験をして、とても悲惨な出来事があったのだ。

「お金の引き出しに関しては、商会に立ち寄って頂ければ即金でお渡しします」

「今、出してもらう事ってできます?それと何か商品は見れますか?」

「はい。大丈夫ですよ。ここに持ってきているものはすべて国の買取済みですのでお渡しできません。店に戻らないと、一つもありません」

「そうか。残念だな」

 いったん、出直さないと買えないのか。でも時間があまりにもないな。取り寄せとかも絶対無理だろうし。


「この後、私の勤めている店にいらっしゃいますか?」

「そういえば、始まりの町の店はどうしたんですか?あそこでアリシアさんと会ったはずですよね」

「あそこはもう店を畳みました。ただアリスのために用意した店なので、アリスがいらっしゃらなければ開けておく必要がありません。だから私は元々いた王都に戻ってきた訳です」

「アリスのためだけに……。王族っていうのは、凄いですね。店も自分用に用意するなんて」

 感心していると、アリシアさんは首を横に振った。

「いえ、あれは私が進んでやった事です。本来であれば、始まりの町のアリスへ行商をすればいい話なんですから。わざわざ始まりの町に行って、店を開く必要もありません。そもそも始まりの町では、収益が出にくいんですよ。レベルの高いモンスターもいませんし、王都のように高額所得者もいないので出す必要がないのです。ただ私がアリスと交友があったので、アリスが孤独になってしまわれないように店を近くにだしたんです」

「そうなんですか」

「はい。アリスはあれでいて繊細なので、心配だったんです。他者に配慮しすぎて、無理してしまう事が多くて……。困っていた人を助けて回って、傷だらけになっているのをたくさん見てきました。無茶ばかりして、その結果レベルも上がって……。レベルが上がると、またいろんな人を助けられると喜ぶような人でしたから。そこから離されて、一人でいらっしゃるようになったらどうなってしまうのか不安になったので、店をだしてもらえるように交渉したんです」

 アリスが繊細かどうかというのは実感はないが、アリシアさんのアリスとの仲の良さは目の当たりにしている。

 アリスと一緒に乗ってきた馬車は元々アリシアさんの物で、それを簡単に渡してしまうんだから信頼が高い事は分かる。


「アリシアさんの方でアリスを説得する事ってできますか?」

 アリシアさんと会えたし、もしアリスを説得できるようなら任せたい思いがあった。

 しかし無情にも首を横に振られる。

「さすがに、私にも新川さんを『大侵攻』という戦場へ連れて行くように説得できるほどの力はありません。それに『大侵攻』へ新川さんを無理に行かせてしまって、死なせてしまうはめになるのはごめんです。新川さんを守り抜くことができるのはアリスしかいません。だからあなた自身で、アリスを納得させるべきです」

「そうするつもりだけど……。『大侵攻』って、今までで一番ヤバいんだろう」

 今まで何人もの人たちと話してきて、『大侵攻』が人間が滅亡するほどの恐ろしい進軍だ。アリスがいるとしても、生還するのは難しいらしい。レベルが4桁の人でもそうなのに、レベルが1の俺は想像するにも難しくない。


「はい。でも新川さんは行きたいのでしょう。それならその覚悟をアリスにみせるしかありません」

「覚悟を見せると言ってもなあ。その覚悟の示し方が全く当てがないんだよなあ」

『大侵攻』へ行くために自分の役割を見つけたい所だが、納まりそうな居場所がない。

 アリスを説得して、今まで通りアリスの剣として行ければ一番楽なんだろうけれど,、国宝という勇者の剣があるから、その役目を狙う事は難しい。

 だからこそ、新しい何かを明日までの短い間に手に入れなければならない。

 アリシアさんとこれまでの事や世間話をしながら、商会会長が戻ってくるのを待った。

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