表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lv1の剣  作者: 豚野朗
王都
101/206

再会(エリザベスの部屋)

「エリザベス様のお部屋でお待ちください」

 俺は昨日も訪れたエリザベスさんの部屋に通された。

 ぱっと見は昨日と同じような内装で、何も変わらない。ただ先に部屋に入ったエリザベスさんとメイドが、少し疲れた様子なのは謎だ。

 部屋の前まで来た後、エリザベスは俺を廊下で待つように言って、先に部屋に入った。そしてがさごそと廊下にまで聞こえるような音を立てながら、片づけをしているのが聞こえた。

 それで五分くらいして、やっと入ることを許されたのだ。

 豪華な廊下に、俺のような一般人が廊下で立たされ続けるのは少しの恥ずかしさがあった。

 そしてクローゼットが内側から膨らんでいるのは少し気になったが、女性の部屋だし詮索するのはやめておこうと思った。ぎしぎしと言っていて、いつ破裂するのかとても不安だ。


 俺が部屋に入ったのをエリザベスさんは確認して、「私は少しの間、講義を受けてきます。城の案内に、別の者を呼びますので、私の部屋で待っていてください」と言って、そそくさと部屋から出て行った。

 エリザベスを見送ると、俺は手持無沙汰になってしまう。

 そして同時に朝から慌ただしかったので、やっと落ち着けたような気がする。

 一呼吸おいて、部屋にある椅子に倒れるように座り込む。

 その時、メイドが入ってきて、俺の目の前の机に美味しそうなクッキーとお茶を置いてくれた。

「ありがとうございます」と礼を言うと、メイドさんは軽く頭を下げて、「もう少しお待ちください。迎えの者がすぐに来ます」と言って、部屋から出て行く。


 クッキーを口に入れると、ほんのりとした甘さが口の中を満たし、頭に染みる。頭の中がすっきりとしていく。

 朝からエリザベスさんと話していて、いつの間にか脳が疲れていたのかもしれない。

 お茶を飲みながら、考えを巡らせる。

 エリザベスと一緒に考えて答えの出なかった俺がどうすれば魔王軍との戦いに潜り込めるのかという問題について。


 しかし考えても答えは出ない。

 当然と言えば当然だが、答えの見えなさに辟易としてしまう。

 どうすれば良いのか、見当もつかないのに、明後日にはタイムリミットが来てしまうという理不尽さ。

 それはどんな試験問題よりもはるかに難しいであろう問題だ。

 この世界で生きるにはあまりにも不適合な俺が、さらに厳しい戦場という環境に飛び込みたいというのだから、無理もないのだ。


 クッキーとお茶をあらかた胃の中に収め、考えも煮詰まってきた頃、部屋のドアがガチャリと開いた。

 そして俺が反応する前に、声を掛けてくる。

「お久しぶりです。新川修平さん」

「あ、あなたは……」

 その声には聞き覚えがあった。


「本日は、私、カエデが案内いたします」

 部屋の中に入ってきたメイド服姿の女性は、エルフの隠れ里でミコと一緒に戦ったエルフのカエデであった。

 エルフという種族だけあって、見目麗しい顔つきととがった耳が特徴的だ。

 何故ここに、と咄嗟に質問が口から飛び出そうになったが、すぐにその答えが思い浮かんだ。

 エルフの隠れ里が邪悪龍ディアボロに破壊され、役割を終えた後、里に住んでいたエルフたちはアリスの父親である人間の王に会いに行ったのだ。

 それならば、当然、王都にいるのは当然だろう。

 もう色々とあり過ぎて、エルフたちが王都にいるであろうという事を頭から抜けていた。


「久しぶり。カエデさん、元気そうでよかった。その恰好は……、メイドをしているんですか?とても似合っています」

 俺は立ち上がって、カエデの手を取る。

「はい。キング王は私達、エルフを歓迎してくださって、生活できるように役職を下さったんです。私はエリザベス様付きのメイドにしてくださいました。他の者も今、この城に集まっていますよ。多くはこの『大侵攻』で最前線に行く予定ですが。新川さんもよくぞ、王都までいらっしゃいました。小耳にはさみましたが、また魔王の幹部を倒したそうですね。流石です」

 エルフも『大侵攻』に駆り出されているのか。

 やはり今この世界の危機なのだろう。

「いや、ほとんどアリスのおかげだよ。俺なんて、ただの剣を持っているだけの一般人だよ」

 考え事をしていたせいか、卑屈な言い方になってしまったような気がした。


「そんな事はありませんよ。魔王の幹部を倒した戦場にいた事は、語り継がれるべき偉業です。しかしアリス様も急な話ですね。王都に来てすぐに、『大侵攻』に参加されてしまうなんて。ミコ様のお墓詣りをしていただきたかったのですが……」

「ミコの墓……」

 ミコの名前を聞いて、心の中がどんよりとする。

「はい。キング王に取り計らってもらって、王家代々の墓の近くに埋葬させていただきました」

「そうなんだ。後で俺も墓参りしても良いかな」

 まだ気持ちに整理はついていないが、墓参りをすれば少しはましになるかもしれない。

「ええ。ぜひ。ミコ様もきっと喜ぶでしょう。でもその前に新川さんは、やりたいことがあるのでしょう?」

 俺には俺の目的のためにやることがある。

「あ、ああ、ここには『大侵攻』のための人たちがいると聞いているんだけど、合わせてもらってもらっても良いかな」とカエデに言う。

「はい。エリザベス様から聞いています。まずは、私の父が担当している武具倉庫へ案内します」

 カエデの父親のガリアさんは、エルフの隠れ里の実質的な長だった人だ。

 里にいた時には、とてもお世話になった。ダークナイト・グランド戦でも、とても頼りになったエルフである。

「私の父もアリス様と同じ部隊で、最前線に向かいますので、是非会って頂きたいです」

 カエデに先導してもらって、部屋から出た。


 しっかりと学んで、俺に何ができるのか探さないと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ