プロローグ1
真夜中の道を私達は歩いていた
空には月が出ているはずだが今は雲の布団に隠れている
街灯もあるがその間はやや薄暗く何か潜んでいる気がして立ち止まりそうになるが
「万里もしかして怖くなった」
これが私の幼馴染みの赤羽木崎である
因みに私は石田万里と言う
ほんとに幼稚園で出会ってからは大概一緒にいるから希に姉妹に間違われることも
「こ・・・・・・怖くない!私は幽霊やお化けなんて非科学的こと信じていないから」
虚勢を張ったが実は少し怖かった
何でこんな真夜中にあんな屋敷に行くとは
普段の私なら100%断っていただろう
「でもついてきてくれた」
「た・・・・た・・・確かめるためよ。幽霊やお化けはいないと言うことを」
「じゃ急ぎましょう」
前をゆく木崎に置いて行かれないように急ぎ足で追った
何でこんなことになったかと言うと昼休みまで時間は戻る
「ねぇ万里、幽霊やお化けはいると思う?」
午前の授業が終わり机の上にあった教科書を引き出しに仕舞いながら辺りを見ると、教室にいた人達はそれぞれの行動を開始していた
友人を誘い学食に向かうものや
もしかしてダイエット中なのかと思うその場で寝出すものや
私や木崎みたいに弁当持参の者は机の上にそれを広げている
端から見ているとちょっとした宴会のように見える
「さてと今日は何かしら」
基本弁当は母親が作るが大体が前日の残り物にたまに蛸の姿をしたウインナーや冷凍物の唐揚げが入っていることもある
「昨日の晩は確か海老フライにコロッケだったかなじゃ」
ゆっくりと開けるといきなりたこさんと目があった
その横には申し訳なさそうに海老フライがコロッケを枕にしていた
野菜を探すが欠片も見当たらない
まあどちらも野菜は嫌いだし
その横に真ん中に赤い玉が乗っている御飯
「万里相変わらずの弁当ね」
木崎が弁当を持って
「ねぇ一緒に食べない?」
木崎のそれはかなり豪華である
何でも木崎の実家は料亭をしているらしく
たとえ残り物でも豪華なものになる
横に置かれると月とすっぽんになるが私はあまり気にしない
お腹に入れば皆同じである
木崎は目の前に自分の椅子を持って来て弁当を広げながら
「ねぇ万里、幽霊やお化けはいると思う?」
「はい?」
丁度私が海老フライに手を伸ばそうとした時にいきなりそう聞かれた
「万里聞こえなかった?もう一回言っていいけど」
「木崎が変なこと言うから反応できなかっただけだよ」
辺りを見るが弁当を食べることに集中していて誰も見ていない
「じゃどうなの?」
私は海老フライを口に運びながら
「木崎、私の性格知ってるわね」
「非科学的な事は信じない」
「それがわかってるなら言わなくても」
「わかってるから聞いてみた。確認のためね」
「ねぇ万里町外れに古びた屋敷があるの」
勿論知っている
生徒の間ではでるらしいあれがと噂になっていて、それを目撃した生徒も数人いたとかいないとか
高校生になって幽霊やお化けとは馬鹿馬鹿しいと馬耳東風にしていたが木崎までも
「それがどうしたの」
「私と万里で確かめにいかない?」
「だから私は非・・・・」
「万里怖いんでしょう?」
「怖くないし、実際にいないものに恐怖は感じないわよ」
「じゃ8時に迎えに行くね」
ちょっと待って私はまだ
「何しに行くの、それに私まだ行くとかは言っていないわよ」
「幽霊やお化けを見つけて捕まえるためよ、それに幼馴染みの事はわかるわ、万里は断らない」
多分テレビの影響だろう
昨日の夜も怪談特集をしていたみたいだし
勿論私は見ていないが
「わかった」
こうしていやいや・・・・少しの好奇心があったかもしれない・・・・屋敷に行く約束をした
「万里見えてきたわよ」
前方に古びた屋敷が見えてきた
いつのまにか月が雲の布団から出て辺りを照らし出した
「時間がないわ」
木崎に手をとられて歩き出して改めて屋敷を見ると
まるでおいでおいでしているみたいに揺れて見えた