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聖なる魔王  作者: et cetera
3/9

長くなってきたので分割します

「つ・・・疲れた・・・」


エブルさん達に街まで馬車に乗せてもらったおかげで閉門ギリギリだったけど無事にトレランティアに入ることが出来たのは助かった。

手続きもいつの間にかしてくれて宿も紹介してくれた事には心から感謝している。


「多分いい人なんだけどなぁ・・・」


どんどん話しかけてきてどんどん色々決めて行く彼のペースについていくのはすごく大変だった・・・



~夕暮れ~


「いやー、間に合ってよかったねムスビ君!」


彼の商隊と一緒に諸々の手続き済ませてくれた青年・・・エブルさんは人懐っこい笑顔をこちらに向けて話しかけてくる。


「本当に助かりました。ありがとうございます」


頭を下げて顔を上げると目の前に彼の顔がある。


「ち・・・ちか・・・」


「それでさ!ムスビ君今日の宿は?どことか言われてる?」


ムスビの言葉にかぶせるようにどんどん話し始めるエブル。


「決まってないなら僕たちのとまるとこ一緒にどう?子供一人だと宿をとるのも大変だよ?」


父さまの予定にシュンパティア群での1泊は組み込まれていない。


朝日が昇った後に村を出て、夕暮れ最後の船が出る前にクレランティアに辿り着き、船に乗るはずなのだが・・・


最終の船はとっくの昔に港を出てしまっている。


父さまは心配性だけど色々と抜けているのだ。


父さまは自分の事をいたって普通の平凡な学生生活を送った至って普通の大人だと言っていたけどそれは普通というものに対してに失礼だと思う


あの人の基準の普通を普通と呼んだならこの世に生きる殆どの人は普通では無くなってしまうはずだ。


「泊まらず、船に乗る予定だったので、宿は・・・」


「そうなの?船もう出ちゃってるよ?子供一人で宿をとるのは難しいし町中とは言え夜に外は危ないから今日は一緒においでよ!」


「えっと・・・あの・・・」


どうしたらいいか、考えている間にエブルは立ち上がってムスビの手を取るとどんどん進み始める


「これから通る道は人が多いからね!手を離さないでね?はぐれちゃったら探すの大変だから」


爽やかな笑顔をこちらに向けながらそんな事を言ってくるがそれでも若干の迷いを見せるムスビを見たエブルは笑顔のまま荷馬車を指して


「はぐれちゃって見つからなかったら君の荷物貰っちゃうよ?」


等と言い出すものだからどうせ宿までだしすぐ着くだろうとムスビは繋がれた手を絶対に離さない様にしっかりと握りしめてついて行く事にした。


「あ!ムスビ君!見てみなよ!流しの唄謡いだよ!」


「ムスビ君!これ食べてみなよ!この町でしか食べられない海の生き物だよ!」


「ムスビ君あの服綺麗だとは思わないかい?君が女の子ならああいう服を着たらきっとみんな振り返るだろうね」


「あの・・・」


「ムスビ君岬の灯台に火が灯るよ!ちょっと行ってみようか!」


ニコニコと笑うエブルに連れられるまま歩いているうちに彼と共に来ていた人達の姿もいつの間にか無くなっているのだが一向に気にした様子もなくあちらこちらへフラフラ歩き続け


海を見下ろせる灯台の近くの岩の上でようやく足を止め途中で買い込んできた食料や飲み物を広げ始めた


「あの・・・宿は・・・」


「大丈夫だよ!みんなが先に行って部屋を取ってくれているから僕たちはゆっくり行こう!」


「それにしてもムスビ君、ナギ様から聞いてた話だと元気な子だと思ってたんだけど大人しいんだね!」


「父さま以外の人はあまり・・・話したことが無いです。」


「え?もったいないよ!ナギ様と一緒に居たら色んな人に会えるし、その人たちから色んな話しを聞けるでしょ?」


今までの明るい顔から驚いた顔になったエブルは真剣な顔でムスビのほうを向いて問いかける


確かに父さまの所には色んな人がやってくるけど・・・ムスビはその人たちが怖い。


父さまの所に訪ねてくる人達は大体笑顔を浮かべて父さまに話しかけているけど父さまは大体難しい顔をして話を聞くだけで帰ってもらっている

そしてそんな人たちが来ているときは私は大体庭で待ってるので帰る彼らが家に背を向けた後の顔が見えてしまう。


多くの人はついさっきまで父に向けていた笑顔を一瞬で消し、ひどく苛立った様子で立ち去っていくのだ。


その様子は幼い頃にナギの目を盗んでムスビを連れだした大人たちと同じに見えてムスビは常に彼らから距離を取っていたのだ。


たまににナギが話してる場にムスビを呼ぶこともあったが、そんな時は挨拶だけしてナギがムスビの事を自慢気に話しているのを聞き流し、早々に口実を付けてまた庭に出て話をしているナギを見ながら時間を潰す様にしていたし、そんなムスビをナギは困ったような笑みを浮かべても無理に呼ぶこともなかったのでナギがどんな会話をしているのかすら知らないのだ。


「父さま以外の人は、怖いです。」




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