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69「落ちる瞬間を見たのか?」勘、最後の依頼

〜孤児院をでたイツキ。次は怪奇現象の解明・除去の依頼へ向け、顔出しをする予定だが〜

 ただいまの時刻は、3時を過ぎた頃。

 幸いというべきか、何事もなく孤児院を後にできたイツキは、このまま予定通り怪奇現象が起きるという屋敷へ、顔を出しに向かう。

 依頼人が住む、例の屋敷は同じ北区画にあるため遠くはなく、イツキの歩きだと1〜2分で着いてしまうほどである。


(ここか…これといって、おかしなものはないが…さて、ね)


 実際に数分でたどり着いたイツキは、目の前にそびえ立つ古風で、いかにもといった屋敷を見上げる。

 ぱっと見たところ、吸血鬼が住んでいると言われても納得してしまえる様な、『The・屋敷』といった見た目をしていた。

 大きさもなかなかで、不気味さを助長している蔦の張った古い外装さえどうにかすれば、リレイがいる屋敷にも勝る立派さを備えている。

 屋敷の周りは、一応塀で囲まれているが簡単に登れてしまう程度で、正面にある門もショボい。

 イツキでなくとも簡単に壊せそうなほどだ。

 他には、門から玄関までは小さめだが庭も付いている…荒れ果てているが…。


 そんな見た目ではあるが、イツキが見たところおかしなものは感じないという。

 おかしな、というのは心霊云々の話ではなく、違和感を感じるか感じないか…いわゆる第六感、もしくは勘のことだが…たかが勘と侮るなかれ。

 イツキの短くも濃い時間で鍛えられた勘は、恐ろしいほど鋭く正確で、何度も見抜けぬはずの罠や攻撃を避けてきた。

 その勘が、特に違和感を与えてこなかった事から、少なくともイツキに害となるものはなく、また、そのままの通りおかしいと思われる様な点もなかった。


 しかし、である。

 おかしいものが見つからないとなると、原因がわからず依頼達成が遠ざかることを意味する。


(依頼主の妄言でない限り、何かしらの原因がある。それが夜にしか現れないのか、本当に霊的なものか…もしくは魔力が関係してくるのか)


 遠ざかったから、諦める…わけにもいかないので、その原因を推測する。

 違和感を感じなかったのは、今この場にその原因がないから、という結果になった。

 ただ、イツキの勘が働かなかっただけの可能性も勿論あるが、そうなると厄介なことになる。

 何故なら、イツキの勘が働かないときは、いつも決まった条件下のみであり、その条件の一つが厄介だと予想されることに繋がる。


 ***

 まず、勘が働かない条件とは…

 一つは、勘が働く前に既にイツキが原因を見つけている場合。

 これはもはや分かりきったことで、既に原因が分かっている事に、勘など働きようがないからである。


 二つ目は、あまりイツキが関わらなかったりで、よく知らない事が絡んでいる場合。

 これは、そもそもイツキの勘とは、その場の状況や自身の知識・経験から答えやヒントをぱっと閃かせるものである。

 例えば、敵の基地に侵入する際、設計図や罠の位置などを知らずに入ったとしても。

 今までの経験や壁の傷、床の足跡などから…罠の位置や種類、もしくは人の動きから、人数や人の種類、目的地が閃く…などを可能としていた。


 これがもし、なんの予備知識も経験もなく、また基地の中が新品同様なほど綺麗な状態を保たれていたなら。

 誰がどの様な目的で、どの種類の罠をどこに仕掛けるか思いつく筈も無いし、痕跡がないから、人の動きも何も読み取ることができない。


 三つ目は、そもそも原因が存在しない場合。

 これも分かりきった事で、存在しないのに勘など働きようがないから。

 ほぼ一つ目と同じであるが、三つ目はイツキが気づいているかいないかは関係ないので、分けさせてもらった。



 ちなみに、イツキは選択肢の中から適当に一つ選んだりする、そういった直感はあまり信用しない。

 イツキの勘は、あくまでも自身の経験や知識から裏付けられた一つの情報として、扱っているので信用しているが、本当になんの根拠もない勘は重要視はしない。

 例外は、あまりにもその勘が警鐘を鳴らすなど、強い衝動を起こすものに限り、その場合は警戒しつつも勘に従う。

 ***


 と、この様に、今回この屋敷で起きていることが、いまだ理解しきれていない魔法関係だったり、地球でもあまり関わることのなかった心霊関係だと、勘が働かない。

 そして、実際勘は働かず、しかし既に原因を見つけたわけではない。

 となると、よく知らないことが原因で勘が働かない事になり、よく知らぬ事がこの依頼に関わるということは、それだけ原因の解明と除去が大変だという事。

 つまり、厄介なのだ。


(さて、行くか)


 またしても、面倒が起きそうな予感を覚え、うまく進まない可能性に若干イラつきつつ、勝手に門を開け玄関へ進む。

 門には誰もおらず、訪問を知らせるものも見つからなかった為、勝手に入る事にしたのだ。

 一応イツキは、鍵がかかっていた場合は勝手に入らず、中の人を呼んで見るつもりはあった。

 ここに寄ったのも、夜にいきなり訪ねて悶着が起きない様にする為なのだから、わざわざ顔見せで印象を悪くする必要もない。

 …まあ、結果勝手に入る事になったが。


 うじうじ悩むなどあり得ず即行動のイツキは、ドアの前まで来ると軋まないギリギリの強さで、屋敷に響かせるかの様にノックをした。

 この屋敷の中に人がいることは既に感知済みだったりするが、玄関からかなり離れた場所に1人だけで他に誰もおらず、ノックに気づかぬ可能性もあったので強めに叩いた。


 この広さの屋敷に侍女や執事の類がいないのは、少し不自然な気もするが、怪奇現象が起きる場所にいたいと思うものなどそうはいない筈である。

 だから誰もいないのか、元からか偶々誰もいないだけなのか…

 といっても、イツキには1人しかいない理由などどうでもいいので、適当に考えていると、ノックの音に気がついたのか、中の人物が動いた。

 そして十数秒後にドアが開き、出てきたのは…


「何の用だ」


 黒く日焼けしたガタイの良い男だった。

 笑いも不機嫌そうな顔もせず、しかし無表情ではない表情で、無愛想にイツキに聞く男。


「冒険者だ。依頼で来た」

「!…そうか、助かる。…中に入るか?」

「ああ」

「そうか。…付いて来い」


 聞かれた事に、相変わらずの無愛想さで答えるイツキは、ついでにギルドカードを取り出そうとするが、その前に男が疑わずに信じた事でやめた。

 男は一瞬驚いた様子を見せると、心の底から安堵が溢れ出たかの様に、それももう解決したかの様に呟くと、依頼の話をする為かイツキを中へ誘う。


 イツキも、怪奇現象について詳しい話を聞きたかったので、相手から切り出された事にこれ幸いと話に乗っかる。

 肯定したイツキに男は軽く頷くと、体を反転させどこかの部屋へ歩き出した。


 *****


 案内されたのは、いかにも接客に使いそうな、額縁の絵や何らかのツノ、観葉植物などが置かれ、机を間にソファが二つ置かれた部屋だった。

 男がソファの方へ向かったので、イツキはその対面のソファへ腰掛ける、と同時に男も座る。


「茶はいるか?」

「いや、いい」

「そうか、なら早速依頼について話すぞ」

「ああ」


 あまりお茶を入れる気がある様には見えず、一応といった体で尋ねてきた男に、こちらも相変わらず断るイツキ。

 一つ目の小屋建ての依頼では、出された紅茶を飲んでいたイツキだが、出されない限りは基本的に断る事にしている…特に理由もないが。

 ここで飲むと言っていたら実際に用意したのか、気にならなくもないが、もう過ぎた事なので流すとして。


 せっかちなのか、早くどうにかして欲しいのか、お茶がいらないとわかるとすぐ依頼の話に入ろうとする男。

 イツキも早い分には構わない…どころか、早い方が好ましいので文句など全く無かった。

 と、その前に…


「ああ、そうだ…ギルドカードだけ確認させてくれ」

「…」


 理由はともあれ、急ぎたい筈の男もギルドカードの確認は行う様で、忘れていた様子を見せつつカードを催促する。

 カードを見せる事自体に何の問題もないが、話が始まるところで遮られた事には文句でもあるのか、魔力を流しつつ無言でギルドカードを渡すイツキ。


 そんな無言の抗議とも取れるイツキの行動も、一切反応せず表示される情報に目を通す男。

 名前、年齢、ランク、そして性別を見て少し意外そうに目を見開くと、頷きながらカードをイツキへ帰した。

 性別のくだりは、声や体の細さから女だと思い込んでいた故の反応である。


「じゃあ、話を始めるが…何を言えばいい?」

「そうだな…始まった時期、起きる場所と時間帯、他にも関係しそうな事全て、だな」

「…分かった。順番に行くが…」


 実はイツキを女だと思い込み少し固かった男は、同性だとわかると少し声が柔らかくなる。

 そして流石にもう遮るものはないので、依頼について話を始めようとするが、どんな情報が必要なのかわからず逆に訪ねる事になった男。

 イツキは、2つ目の依頼の際の様に特に欲しい情報を上げつつ、知っていることを全部話せと暗に伝える。

 Gの駆除の際の依頼主であった男は、イツキの要望に全く覚えられていなかったが、今回の男は違うらしくほんの少しの間で覚え切った。

 そしてわざわざイツキがあげた順番で、説明し始めた。


「先々月あたりからだな。最初は小物が落ちる程度だったんだが、だんだん種類が増えていったな」

「落ちる瞬間を見たのか?」

「ああ。風が吹いたとか、不安定な置き方をしていたわけじゃなく、唐突にコロッと落ちるんだ」


 まずは始まった時期だが、割と最近だという。

 起こる現象も気のせいと思う程度のことだったと言うが、だんだん種類や規模が大きく増えていったと、辟易した様子で語る男。

 男の様子から、怪奇現象が起きる瞬間をしっかり見ており、妄言でないことがうかがえた。

 イツキの念の確認にもしっかりと答える男に、幻覚でも見ていない限りはまず間違い無いだろうと、結論を出した。


「起きる場所だが………」


 こうして、10分をかけて、男から聞けることすべてを聞いた


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