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65「もう一度見せるから…」否定されなかった間違い、出てくるのは

〜イツキの勘違いからミエリアも勘違いを〜

 

 確かに間違われることが増えたのは異世界に来てからだが、地球でもイツキも気付かぬ内に間違われることはいくらでもあった。

 気付かなかったのは、イツキがキレることを恐れた仲間たちが、カバーしていた為だった。

 しかし、何があろうともミエリアにそんな事情が分るはずもなく…。

 最近、ということは、ちょっと前は別の場所にいたと思い、そこでイツキの勘違いが起きる様なことがあったのではと考えた。


 思い返してみれば、昔何でも屋をやっていたとか、聞いたこともない施設に攫われたとか、言っていた。

 ならば、こことは違う別の場所で育ち、その際に中性的だと思い込んだのではないかと、かなり辻褄の合う考え方をした。

 残念ながら、掠りもしていないが。


(やはり、そうなるか)


 イツキも、地球と異世界との違いなのか、という考えを出していた為、似た様な意見が出たことに、その通りなのかと思いだしていた。

 イツキは世界の違い、ミエリアは大陸の違いと、2人とも前提は違うものの、それ以外は同じ意見なのですり合わせもせず、間違った認識が2人にできることとなる。


(そうなると、私は、少なくともこの都市内では女に見える…と)


 未だに、この都市範囲内でしか女顔…というより女性に見えることを認めないイツキ。

 どれだけ女に見られたくないのだ、と思うが、実際性別を間違われる事が嫌な理由は、これと言って無かったりする。

 性別を間違われるのは誰だって好まないだろうし、理由だってただ何となく不愉快だから、程度だろう。

 イツキも、その例に漏れなかっただけなのだ。


 そして、女顔であることを認めようとしない理由とは、イツキが自分で(フィルター付きで)見た顔つきから出した答えが中性的であり、誰にも否定されなかったが故に、中性的だと確定してしまっているから。

 認めようとしないというより、認めることが無い、その選択肢が外れている為に、側から見るとやけに否定的に見えるのだ。

 それでも、仲間などのごく一部の者達から諭されていれば、考えを改めていただろうし、少なくとも女寄りの顔つきだとは思っていた筈である。

 しかし、仲間達は否定する事も無く時は経ってしまった。

 一時は真実を教えようという案もあったのだが…


『『絶対無理!』』


 と、すぐに却下された。

 案を出した者は知らなかったのだが、実は既に一度、中性的であるとのイツキの言葉を、肯定してしまっている。

 それを今さら否定など怖くてできない、という理由だった。

 もちろん、言えば『そうなのか』と受け入れるだろう。

 しかし、一度肯定している者達もいるわけであり、それを打ち明けた際のイツキの予想される反応が怖すぎた為、止められた。


 予想された反応は二つあった。

 一つは、大事にしている仲間から、恐怖故に嘘を付かれたという事実から、ショックを受ける可能性。

 二つ目は、理由はともかく、嘘をついたという事実からキレる可能性。

 そして、二つの反応が同時にくるかもしれないし、全く別の予想外の事もあり得るので、自分達だけでなくイツキまでどうなるか分からない。

 そこから多少の話し合いの末、このままでの方が一番良い、という結論になり、否定される機会は失われた。


 つまり、イツキの中性的という認識を仲間達が認めてしまったのも、認めるという選択肢がなくなった原因の一つなのだ。

 さて、話は戻して…


 とりあえず、この都市内では女に見えるのかもしれないという可能性をだしたイツキ。

 女に見えると言っても、顔つきではなく体つきや声など全体を見て、のはなしだったのだが…


「ミエリア」

「あ、はい。何ですか?」


 ふと、目の前にいる者に意識が向く。

 そこには、実際にイツキ自身を女と間違えた、意見を聞くにはこれ以上ない被験体が。

 そして思い返すと、女だったのかと声に出して間違えたのは顔を見てからであり、今までのほとんどがフードを降ろしてからであった。

 もしや、全体的な事もあるが、一番の理由は顔なのか…と思い至った。


「そろそろ、この部屋に来た目的を果たそうかとな」

「…そういえば、そうでしたね…。何故、こうなったんですっけ?」


 しかし、その事には触れなかった。

 それは、ミエリアはイツキを中性的だと言ったばかりであり、女と間違える決め手になった可能性はあっても1番とは限らないと考え、仲間達の過去の肯定を信じることにしたから。

 世界は違えどあいつらなら大丈夫だろうという、イツキのズレた思考である。

 という流れから、とりあえずさっさと用事を終わらせる事にした。


 ミエリアは、この部屋に入ってから大して経っていない時間に比べ、濃すぎる起きた出来事を思い出すと、何故こうなったのかと遠くを見つめ出した。


「おい、どこを見ている」

「あいっ!…ぇ、ぇえ!?…え……ええぇ!?な、なんですかこれ!?」


 口にした通り、作業を再開していたイツキは、ミエリアの目線が自分の方へ向いていない事にすぐ気づき、注意するイツキ。

 ミエリアもすぐに気を取り直し、刀で表面を均らしていくという妙技を見ようとしたのだが、視界に入った光景に呆然とし、そして軽い現実逃避。

 気を取り直すには、手遅れだったのだ。

 なにせ…


「なんでもう終わってるんですか!?」


 目を離していたのは1秒程度だったにも関わらず、部屋にあったほとんどの木の板の表面が綺麗になっていたから。

 作業を始める前に、記入物として使えそうな板を集めておいたので、その場でも作業を終わらせることは不可能ではない。

 しかし、だからと言って1秒程度で終わるような量でもなければ、簡単な作業でもない。

 いや、そもそも木の板を1ミリ未満の薄さで、しかも割る事もヒビを入れる事もなく斬り落とすことができる、なんて事ができる者がどれだけいるだろうか。

 世界は広い…上には上がある…なんて言うが、上など皆目見当もつかない。

 そんな異常な事を、大小合わせて20枚近くある板の裏表両面を、1秒ほどで斬り終えたのだ。

 それはもう、目を疑うだろう。


 想像してほしい。

 目下に並ぶ、壁に立てかけられた無数の木の板。

 もちろん4〜5枚重ねて立てかけられている、表面のガタガタな木の板。

 その板から数瞬目をはなしてもう一度見ると全て綺麗に揃っているのだ。


 広さも大したことはない。

 端材を置いてあるだけあり、それなりの広さはあるものの、3人が両手を広げてくるくる回れば確実にぶつかる程度である。

 その狭さで、ミエリアとイツキの間は大して離れていない、刀を振れば刃先は間違いなく当たる距離で。

 束ねて立てかけてある木の板の表裏を1秒ほどで斬り落とした。

 その所業だけでも目を疑う事だというのに、もっとあり得ない状況で行われたのだ…現実逃避でも軽いくらいである。

 そもそも、複数枚重ねて立てかけてあるのに、どうすれば全て斬り落とせるのだろうか。


「い、いいい意味がわからない、です…。いやだってそもそも、重ねて立てかけてありますし、裏まで斬れ…てますね…木屑は横に落ちてる?な、なんで?…ああもう、わけがわからないですぅ…」


 そんな、疑問と現実離れした光景を見たミエリアは、混乱の極地にいた。

 もはやミエリア自身でも、何を言っているか理解していないであろう程、混乱していた。


(やはり見ていなかったのか)

「もう一度見せるから落ち着け」

「ふぁあい…」


 完全に見ていなかった事がよく分かる反応に、もう一度行うことへの面倒さを少し感じつつ、ちょうどいい板を集めながら諭す。

 ミエリアはとうとう涙目。

 もう、気の抜けた返事の一つや二つは仕方のないことであろう。


 そして3枚と先程より数は少ないが、板を壁に立てかけたところでミエリアに向き直る。


「いいか?」

「…はい、お願いします」

「ああ」


 そして、刀を出した…


「あ!そうですよ!」


 その時、ミエリアは忘れていたことすら忘れていた、とあるシーンを思い出した。

 聞こうと思っていろんな出来事に塗りつぶされた疑問で、今目の前で見たからこそ思い出せたこと。

 それは、もちろん…


「その剣です!どうやって出しているんですか!」

「今言うことか?」


 イツキの、ちょいちょい出現する、不気味な色合いをした刀のことである。

 この部屋で刀を取り出した際に目撃し、いつの間にか手にしていたかと思えば、パッと消えている。

 まるで、所謂亜空間にしまっている様で、魔法が使えないはずのイツキが行なっている謎の一つである。

 そして、イツキの慣れた様子は、この世界に来る前…地球にいる頃から扱ってきたかの様であった。

 しかし、地球には特殊な技能はあっても魔法の様な力も、エネルギーもない。

 とにかく不思議なものだったが。


 ミエリアも、イツキが魔法を使わないことを知らないし、あまり魔法を見たこともない。

 なので魔法とは思っていないらしく、かなり気になっている様子で、それもまるで一部を知っているかの様に、疑問系のない問いを繰り出す。

 折角これから始めようとした時に水を差され、ちょっとばかり不機嫌になるが、聞くことは大切だということで、答えることにした。


「見たままだが?」

「いや、そうではなくてですね!それは分かっているんです!どうやって──


 側から見ていたなら、答えになっていないと呆れてしまう様な、答えになっていない答え方で。

 普通なら『分かるかっ』と叫びたくなるが、ミエリアは違った…どうも、分かるらしい。

 それはそうだろう、出す瞬間が見えたからこそ気になっているのだから。

 やはり、何もないところから出ているのか…それとも、空間の割れ目の様なところから瞬時に取り出したりしているのか…

 しかし、どれもが全く違った。


──指から出しているんですか!?」


 …指から出しているらしい。

 ファンタジーっぽい様な気もするが、魔力で作った〜とか何の兆候もなくシュンッと現れるわけでも、生えてきたというわけでもない。

 どう出しているのかといえば…


「なんか、指先からちょろっと出てきたかと思ったら、急に片刃?の剣の形になって。どうやってるんですか!?」

「…」


 言葉通り、イツキの指先からちょろっと何かが流れ出て、それが瞬間には刀の形に模られたのだ。

 …意味が分からない。

 それにしても、ミエリアは刀が出てくる瞬間をはっきりと見ていたらしい。

 2度目だから余計に詳しく見れたのかもしれないが、そんなワクワクを目に貼り付けたミエリアに、イツキは沈黙を守っていた。


孤児院、長いですよね。まとめが下手ですみません…

行き当たりばったりは悲劇を生みますね!今になってやっと少し後悔していますorz

今の部屋さえ出てしまえは直ぐ…の予定なので、もう少しです!

どうか、お付き合い下さい!

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