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64「理由、分かるのか」〜ミエリアの災難〜、認識を改め…る?

〜嬉し泣き中のミエリアに、思いもよらぬ災難が?〜

 *ミエリア*


 イツキさんの言葉に涙が止まらなくて、でも嬉しくて。

 そんな状態が続いていました。

 でもすぐに、喜びに浸っていることもできなくなり、涙も消えて無くなりました。


「……ふぅ」

「ひぅっ」


 イツキさんが怖すぎて。

 何が起きたのか…それは、私が泣いて落ち着いてすぐの事でした。


 *****


 イツキさんが私に、『導く』と言ってくださった、その時実は、一緒にフードを降ろしてたんです。

 だけど、私は目に溜まった涙で目の前が全部ぼやけて、全然見えなかったから…顔も全然見えなくて…


「ぅえっ!?」

「?なんだ……」


 だから、涙を拭いた後は本当に驚きました。

 肩まで短めに切られた綺麗な銀髪…はフードの隙間から見えていましたが、改めて全体を見るととっても綺麗で。

 ちょっと暗いですけど赤い目とか、光を反射したら綺麗そうで…

 なにより、そのものすごく整った綺麗な顔があって、まさか同じ女性だとは思わなかったんです。

 それで、驚いた私に不審げな目を向けてきましたけど、それもなんか絵になって、美人だなーと思ってつい言っちゃったんです…


「女性の方だったんですね!驚きました!」

「ほぅ…?」


 そしたらイツキさんの顔つきが、こう…変わっていないはずなのに恐ろしく見えて、それが院長が怒った時よりも怖くて…

 うっ、と私が身を竦めたところで、イツキさんが衝撃の言葉を言いました。


「私は、男だが?」

「………へっ?」

「そうか、そうか…。私が、女に見えると」


 いくら何でもそれは…と思いつつも、イツキさんから出ているらしいピリピリした空気が、嘘ではないと言っている気がして。

 でも、頭が全く追いつかなくて、何とか口に出せたのは一文字だけでした。

 それが更にイツキさんを煽ったのでしょうか…ゆっくり一言一言区切って話すイツキさんに、どんどん私の顔は引き攣っていって。

 そんな私の反応も逆撫でしたのか、どんどんピリピリが強くなって、マズイと思った時です。

 いつの間にか、手にしていたカードを私に投げつけてきました。


 結構な速度で飛んできたカードを何とかキャッチすると、それはギルドカードでした。

 どういう意味か分からなかったけど、表示されているのを見て分かりました…性別の欄が男だったから。


「で?」

「すいませんでしたーっ!」


 私が性別を確認したタイミングで、たった一文字で『どうだった?』と不機嫌な様子で尋ねられ、私はただ謝るしかできませんでした。


 何で丁度性別を確認したタイミングで声を掛けれたのかは、私の目線で、性別の欄を見た事が分かったからだと後で説明されました。


 *****


 そして今に至ります。


「……ふぅ」

「ひぅっ」


 頭を下げたままなので、イツキさんがどんな表情をしているのか分からなくて、たった数秒の沈黙が何倍にも感じられました。

 …あ、倍数というものをさっき教えてもらったので、今なら分かるんです…が、この状況では胸を張ることもできないですね…。


 そして、数分にも数十分にも感じられた数秒の沈黙は、イツキさんの、大きく息を吐いた事でした終わりました。

 ただ、あまりにも唐突のため息だったので、つい怯えてしまいましたけど…

 しょうがないんです、それだけイツキさんが怖かったのです。


「もういい」

「うぅ、ありがとうございますぅ〜…」


 それでも、お許しをいただけました。

 いつの間にかピリピリも無くなっていて、全然怖さを感じなかったので本当に許してもらえたと分かり、お礼を言っておきます。

 こういう時、許しをもらった後にもう一度謝る人もいますが、私は許してもらえた事に感謝をする方がいいと思います。

 院長は、『謝り続けなくてはいけない時もあるのよ』、と言っていましたけど、私には分からないです。

 と、ちょーっと考え事をしていたら、イツキさんが驚く事を口にしました。


「最近、何故かよく間違えられるからな」

「………」

「…何だ?」


 最近という事には引っかかりましたが、それよりも間違えられる理由が分かっていない、という事に絶句?しました。

 誰がどう見ても…というのは失礼かもしれないですが、分かっている今でもやっぱ女性に見えます。

 他にも、体つきが細い事と男性にしては声が高い事とか、髪がサラサラでとても綺麗で、知らない人が見たらまず間違えると思います。

 自分の姿を見れば分かりそうなものですが、鏡は高級ですし、あまり自身を見ることがないんでしょうか。

 とにかく、二の句を継げないという言葉を再体験し、絶句していた私でしたが、そんな私の姿に気がついたイツキさんが、問いかけてきました。


「あっえっはい!何でしょうね!」

「…ミエリア」

「はいっ!!」


 私は誤魔化そうとしたんですけど…慌てて変にテンションの高い答え方をしてしまいました。

 すると、一瞬だけ不審げな目で見られたと思ったら、何か確信を得たような雰囲気で名前を呼ばれ…背筋がピンと張り、つい大げさに反応してしまいました。

 そして、イツキさんは一瞬間を空けて、恐れていた事を聞いてきました。


「理由、分かるのか」

「ぴっ…」


 ものすごい聞かれたくない事でしたが、何となく聞かれる気がしてたので逆に動揺してしまい、変な声を出してしまい…

 そしたら、私の反応で確信を得たらしく、イツキさんの目が問い詰めるように細くなっていきます。

 もう、答えるしかありません。

 しかし、本当のことを言うのは怖いし、嘘を言ってもすぐバレる気がして…これが八方塞がりというやつですか。


「で?」

「ぅ…」


 本日2度目の一文字尋問です。


(私は、生きてこの部屋を出られるのでしょうか…?)


 *****


 *イツキ視点


 イツキに性別を間違われる理由を聞かれ、何と返そうかと悩んでいるミエリア。

 本当の理由を言うのという案は、その後のイツキの反応が怖く躊躇われ、かといって嘘を言ってもすぐバレるだろうから、この案も使えない。

 サリーが封鎖しているため他に援軍も期待できず、ミエリアにとってはまさしく、八方塞がり…という状況の中。


(読んだ方が早いか)


 基本短気なイツキは、焦れてきて行動に出ようとする。

 それも、読心という、普通なら誤魔化しの一切効かない反則な方法で。

 とうとう、自分が女顔だと気づく時が来るのか…そう思われた時、ミエリアが咄嗟の行動に出る。


「か、体つきが細いからではないでしょうか!?声も高めですしっ、他に白く綺麗な肌とかサラサラの銀髪とか!顔も整っていますし男性女性どちらとも取れそうな顔立ちなので他の見た目から女性と勘違いする人が多いとか!私はそう思いますよ!?」

「ふむ?………」


(嘘ではないようだが)


 一気に捲し立てたミエリアの咄嗟の回答は、意外と上手いもので、嘘は含まずに…しかし一番女と間違われる理由である女顔はぼかして答えた。

 しかも、読心する前に言い始めたので内心を悟られてはおらず、強く疑うこともない。


 何より、実際細い体や髪、肌や声なども性別を間違われる理由の一つで間違いなく、納得するには十分な理由だと思われるのだ。

 しかしイツキは、嘘はついていないと見抜くも納得はいかないようで、少し考え込む。


(確かに、私を客観的に見て、女に見えなくもない要素はあるかもしれないが、女と信じ込むほどのものか?)


 一応、イツキは観察眼も優れ、地球の色々な国・民族での思想の違い、または何億のデータから割り出した平均から、自分を客観的に見ることはできるし、割と正確でもある。

 だからこそ、ミエリアの言うローブ越しに見た体つきの細さや、声音に肌色や髪質など、理解できることはある。

 それでも、認めたくないという思いがあるのか、若干否定的な言い方だったが。


 しかし、である…悲しいかな、極一部に関してのみ正確とは言い難い見方をしている。

 顔つきの認識のズレがその良い例えである。


(異世界の違いか?1日程度とはいえ、見た風だとあまり違わないと考えたのだが…少し反応を見るか?)


「確かに、ローブ越しだと細く見えるだろうし、肌も周りに比べ白目かもしれない。顔も、今まで生きてきた中で、低めに見積もっても醜いと言われるような顔つきではない、とは理解している」

「あ、そうですね…」(この認識で何で理解していないんでしょうね…?)


 納得いかないことから、もしくは異世界による美的感覚の違いなど、価値観の相違があるのではないかと考えたイツキ。

 1日しかいないとはいえ、都市を見た感じでは地球とあまり違いは無い様に見えた。

 強いていえば、死が身近な分たくましい体つきの者が多く、細めの男性はあまり見かけることがなく、肌が白いものなどほとんど見なかった。

 女性ですら、たくましく日に焼けた肌の者が多いので、イツキの様な細く白目の肌は女性に見られがちなのでは無いか、そう思い、意見のすり合わせをする事にした。


 そこでイツキの口から飛び出した言葉は、何も知らぬ者が聞いたら、どこの自信過剰家だと勘違いしそうな物言いであった。

 ただし全て事実であり、そこまで理解しているにも関わらず、顔つきの認識だけおかしい分、余計タチ悪い。

 ミエリアも、十分容姿は理解できているではないかと、不思議に思い、その事実に何故分からないのかと首をかしげる。

 それも、次のイツキの言で理解する事になるが。


「だが、多少…顔つきが中性的だとして、女と信じて疑わない程、私は女の様か?」

「あ、あーっと……そうです、ね…」(ちゅ、中性…的?ど、どこが?い、いえしかし、そんなこと怖くて言えませんし…どこで間違いが生まれたんでしょう……あ、もしかして)


 滅多にない、どれだけ考えても真実が見つからない問いに、少し辟易しており、若干必死さすら見える…気がするイツキ。

 しっかり容姿が分かっている、その筈なのに性別を間違われる理由がわからない…そのあまりの理由にミエリアは言葉に詰まっていた。

 まさか、顔つきの認識が大きく違っているとは思っていなく、昔の仲間たちの様な反応をしていた。

 ただ、性別を間違われる1番の理由が顔なら、どこに本人の認識の違いがあるかすぐに分かりそうだが、流石にそこまで頭は回らなかったか。


 一体、どこでそこまで大きな違いが出てきてしまったのか、とにかく不思議だったミエリアは、少し前の会話から思い当たりを見つけ出した。

 それは…


「あ、あの。最近間違えられる様になったんですよね?……なら、前に居た所と少し違うんじゃないですか…?こう、見た目の考え方とか…」


 最近間違われ出したという、正しくも…かなり間違った情報であった。

相変わらずの、イツキの誤認識については、主人公補正の様なものだと考えてください…

勇者が持つ鈍さ、みたいなやつです。

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