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52「話…だったな」予定外、予測に予測を

〜煩すぎる声に怒られたミエリア。そんな中イツキは〜

 大きな声を出してごめんなさいと謝ったところで、また謝罪の声が煩いためにほぼ全員に怒られたミエリア。

 若干しょんぼりしているが、自業自得だと放置されていた。

 さて、ほぼ全員に含まれない、目の前にいたイツキだが…


(予定より部屋を出る時間が遅れてしまったから、痺れを切らした、か。焦れるように調整したことが裏目に出たな。予測が足りない…いや、地球との違いをもっと考慮するべきか)


 特にダメージもなく、ミエリアの大声を聞く羽目になった原因について反省していた。

 当たり前のことながら、イツキは大声を出す様に狙っていたわけではないし、むしろ聴きたくなどないだろう。

 何せ異常に耳がいいのだから。

 しかし、その大声を浴びる事になった。

 それは予定外の事であったということであり、つまりイツキが幾千と予測した道筋に無かった、外したということ。

 そして道筋になかった原因とは、予測の中に地球との差異をしっかり入れ切れていなかった為に、その差が予測を乱したからである。


 もちろん、地球との差異を『しっかり入れ切れていなかった』という通り、でき得る限りは考慮していた。

 魔力がある事による現象の起き方や反応などの違いから、人の行動や思想の違いまで、1日とはいえ見聞きし体感した事を入れ込んだ。

 それでも外れてしまったのは、いくらイツキでも1日では足りなかった、ということ。

 なので、もっと地球との差を考慮すべきと考えている訳だが…イツキは既に、今できる限りの事は考慮している。

 では一体何を入れようと言うのか。


 それは、さらなる『予測』である。


 ***

 どう言うことか…それを説明する前に、今のイツキの予測の立て方を先に説明する。


 イツキは、現在確実にわかっている事を予測に組み込む。

 実際に見て聞いて感じて、自分で得た情報を元にしているので、正確な情報から何通りも予測を作る事で確実性を高め、予知に近い道筋を立てる事ができている。

 なのでこの情報の中に他人による情報や、自他問わず予測予想を混ぜたりなどは滅多にしない。


 それが普段であり、今回はその滅多にしない事をする。


 自身による予測を組み込むという、タダでさえ予測という不確実なものに、さらに予測を使うという確実性の薄れる方法をとる。

 何が問題かといえば、確実性が薄れる事、だけではない…それはさらに幾つもの予測を立てれば片付く問題だから。

 ではなにか、その処理がイツキでも顔をしかめる…かもしれないほど、情報量がかなりの数に上るからである。


 例を挙げよう。

 蟻が筒の中を歩いているとしよう。

 まっすぐ歩いて行って途中で左右2つに分岐したら、どちらに向かうだろうか?

 右に行くかもしれないし、左かもしれない…反転して後ろに行くかもしれないし、もしかしたら立ち止まるかもしれない。

 それこそ無限に考えられる。

 これが何一つ情報のない際の予測である。


 しかし、蟻は行列で筒の中を移動していて、前の蟻たちは右に進んでいる光景を見ていたら、その蟻もほぼ確実に右に曲がると予想するだろう。

 これが確実な情報がある際の予測である。


 ただし、左には餌になるものがあるから、左に行くかもしれない。

 または、周りを見ると筒の側には歩いている人がいて、筒は地面に固定されていないから、筒を蹴り飛ばされ滅茶苦茶になるかもしれない。

 これが普段のイツキの予測の仕方である。

 自分で幾つも情報を集め、それを元に幾つもの条件を整えて予測を立て、その様々な予測の数を揃えて確実性を高める。


 しかし、確実な情報を予測に変えると…

 もしかしたら蟻の寿命が尽きるかもしれないから、行列が止まるかもしれない。

 地震が起きるかもしれないから筒が…、水が流れ込んでくるかもしれないから…と最初と同じ様に無限に考えられる。


 まあ、その予測も確実な情報から出した予測なので、荒唐無稽な予測はなく、実際無限にもなりはしない。

 フラフラ歩く年寄りの蟻だから、寿命が尽きるかもしれない。

 遠くで地震が起きたから、こちらも揺れるかもしれない。

 近くに水源があるから、水が流れ込んでくるかもしれない、などこちらの予想も確実な情報から立てているから。


 それでも、予測する材料に予測を付け加えれば、どれだけの数の予測を立てれば確実性が良くなるかなど、分かったものではない。

 それこそ、億すら軽く超えるのではないか。

 いくらイツキでも無理な話である。


 ただ、イツキは前提が違うので、予測も億も立てられるという程酷い事にはならない。

 イツキの場合、ただ見聞きしてだけでも得られる情報が多い為、元々情報が多く条件を絞りやすい。

 他人の会話を聞いて、その時の心拍や声音、瞳孔などの動きからある程度性格を読める。

 人に限らず、物でも現象でも何でもかんでも、その五感を駆使して詳細に情報を得る事ができる。

 だから判断材料が多く、条件が絞れるので予測が少なくて済む。

 それでも予測を加えれば平気で万を超えることもあるが、億と比べれば天と地以上に違うだろう…無限など言うまでもない。

 その為、万程度の数は揃える事ができるが、頭…脳への負担が強く、あまり取りたくない選択肢なのだ。


 簡単に、適当に纏めると…


『○(確実な情報)だから』、『○(予測)になるかもしれない』、から…

『○(予測)になるかもしれないから』、『○(予測)になるかもしれない』、と変わるのだ。

 明らかに、確実性を高めるには必要な予測が増えそうではないだろうか?


 これで伝わってもらえると…

 ここでいう予定とは、イツキが立てた謎の計画のことである。

 ***


 ちなみに、イツキもミエリアの大声を煩いと言っていたが、実の所それ程耳に響いたりはしてはいなかった。

 ミエリアが叫ぶと察知した瞬間に対策を取っていたのだ。

 耳に入ってくる音を脳に届く前に小さくするという、原理の分かっていない方法で。


 その方法で防ぐ事はできたが、咄嗟に…という事に不満を覚えたらしい。

 予定になかったのだから咄嗟になっても仕方ないと思うが、その程度の事は想定できていなくては我慢できないらしく。

 その為万を超える道筋を立てる事になり、頭痛を抱える事になったのだが…

 大声を聞きたくないと言う話から、予測を加えるという話が始まった事になるが…ずいぶん大袈裟な事になったものである。


 ということで、予測を加える事により更に数が増えた道筋。

 それでもオーバーヒートはしないのがイツキの脳である…人を辞めているだけあるが、度が過ぎるだろう。

 しかし流石に頭に痛みを覚えているらしく、久しぶりの痛覚に苛立ちを覚えていた。

 苛立ちを覚える理由が少し阿呆らしいが、切り落とされては叶わないので話を進めよう。


 しょんぼりしているミエリアの前で、想定外なんて事がないように予測を増やしたイツキ。

 そして痛みで苛つき、自覚せずにサリーとは違う威圧が漏れ出していた。

 サリーは所謂、怒気といったものがプレッシャー…重圧となって漏れていたのだが、イツキは苛つきにより存在感が増し、重圧となって漏れ出していた。

 幸いというか、近くの者にしか届かなかった為騒ぎにはならなかったが、シンヤ、ミエリア、そしてサリーは感じてしまった。

 その重圧は、地球で…そして偶然な事にこの世界でも、こう呼ばれていた。


「…覇気っ!?」

(ああ、漏れ出たか)


 そう、サリーが口にした通り、『覇気』である。

 サリーの小さな悲鳴にやっと気づくイツキ。

 サリーは裏にいたからだろうか、知識と…多少なりとも耐性があった為に、この程度で済んでいる。

 しかしシンヤはそうはいかず、立ったまま意識が飛んでいた。

 そしてミエリアだが、目を見開いているものの恐怖も何もなく、心なしか目を潤ませている。

 恐怖でなく、目を潤ませるなら何か…答えが出る前にサリーが小さく呟く。


「しかし、人族の筈。何故っ…?」

(人族に覇気は出せないのか…。それとも他種族の存在感が強いからなのか。まだ判断がつかないな)


 サリーの言い様から、人族…地球で言うただの人間には覇気は出せないと思われ、その理由を推測するイツキ。

 この世界には、鬼人や吸血鬼などの人族を遥かに超える種族もいる。

 覇気とは、その者の存在感が重圧としてのし掛かるプレッシャーを指す言葉であり、上位種族は間違いなく存在感も強いだろう。

 その為に人族にはないと考えているのか、弱すぎて無いも同然という考えがあるのか。

 SSSランク辺りなら平気で放ちそうなものだと考え、まだ結論は出さず先送りにした。


 覇気などの、詳しい説明は後ほど…恐らく、ルビルスがしてくれると思う。

 …さて、話を戻すとして。

 若干トリップしているサリーと完全に伸びているシンヤは放っておき、イツキはミエリアに話しかけた。


「話…だったな」

「はっ…ぃ」

「そのつもりだ。…ついてこい」


 待望の例の話について振られ、またしても大声が出そうになるが今度は耐えることができたようで、何とか声を小さくした。

 これ以上焦れて変な行動をされても困ると、落ち着かせる為に今から話をすると少し遠回しに伝える。

 ミエリアの目が輝いたところで、子供たちがいない壁際に歩いていく。

 獣人がどの様な者かは分からないが、ミエリアに尻尾があれば、それはもうぶんぶん振られるであろう程、嬉しそうについていく。

 その様子を疑わしげに、不機嫌に、不思議そうに見るいくつもの視線の中、イツキとミエリアの2人は誰の耳にも届かない位置へ移動すると、話を始めた。


「何から話すか…」

「 あ、あの。でしたら先に、お願いを聞いて欲しいです」

(ここは予定通りか)


 話始める…はずが順序を決めていなかったのか、逡巡するイツキ。

 するとミエリアから、お願いを聞いて欲しいと話を振る。

 そのミエリアの反応に、今度は予定通りに進んだと微調整をしつつ、軽く頷く。

 実は今の逡巡はフリであり、ミエリアからそのお願いを引き出すための演技であったのである。

 誘導されたなど知る由もないミエリアは、イツキが頷いたことから許可が出たと思い、お願いを口にする。


「私、なんか力が強いみたいで…ちゃんと加減ができないからすぐ物とか壊しちゃうんです。だから…」

「ああ、いいぞ」

「へっ?」

「だから、引き受けてやる。力の制御をしたいのだろう?」


 お願いを言う前に、了承するイツキであった。


説明文が半分近くを占めるという、変な風になって申し訳ないです。

あの説明も、何時もながら分かり難いかも知れないので、改善点なりを教えてもらえると、助かります。

…どうすれば、うまく説明できるのでしょうか。

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