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49「対策も生まれる」覚悟を決めて、気づいた理由と読めない理由

〜ミエリアへ手助けをする事が決まったイツキ。それだけで話は終わり〜

 頭を下げたサリーへ、イツキは声をかけた。


「此処を出る日はまだ未定だ。すぐに出て行くこともない」

「…はい」


 相手のお礼に、大したアクションもないのはいつもの事。

 孤児たちに教え終わったらすぐ出て行くと勘違いしない様、未定であると前置き、まだ時間はあると伝える。

 イツキの言い様からミエリアが出ていくまで、考えていたより時間があるとわかり安堵したのか、サリーの返事に間が空く。


「もういいな、私は戻る」

「はい、私もすぐに向かいま……」

「う、ぅん…?」


 イツキが部屋へ呼ばれた理由は、ミエリアの力の制御の助けになってもらう為であり、その件は引き受けた。

 つまり、もう用事は済んだので部屋を出ようと、一応声を掛ける。

 実際、サリーは特に用はないので引き止めることもなく、このまま解散…する前に、横から声が上がった為途切れる。

 声の主とは、ずっと寝ていたためにすっかり空気になっていたシンヤであり、今ようよく目覚めた様だ。

 横になっていた体を起こし、辺りを見回す。

 まだ寝ぼけているのか、状況の整理がつかないようで、首を傾げ不思議そうに一点を見つめている。

 しばらく経ち、様子を見ている必要もないので、もういいかと部屋を出ようと動き出したイツキ。

 それを切っ掛けに、シンヤの頭がしっかり回り出す。


「っ!?……?……?」

「ちょっと、シンヤ。落ち着きなさい」


 回り出したことにより、人見知りが復活。

 サリーはともかく、たいして広くない部屋に今日会ったばかりのイツキがいるのだ。

 孤児院を飛び出していった騒動により、多少耐性ができていたとしても、パニックになる程度の衝撃はあったようだ。

 シンヤからすれば、ふと気がつくと何故かフードの人がいて、何故何時の間に此処に…と混乱の嵐。

 はたから見ても、『なんで?なんで?』と混乱していることがよくわかるシンヤの様子に、見兼ねたサリーが落ち着くよう声を掛ける。


「ぁ…ぃん..ょう」

「ええ、おはよう。話の途中で寝てしまったのは、覚えているかしら?」

「………うん」

「そう。まあ詳しいことはメアに聞いたからいいわ。…それで、だいぶ疲れていたようだけれど、もう大丈夫?」


 どうも視界に入っていなかったようで、今気づいた反応をする…相変わらず小さな声で。

 そんなシンヤに苦笑いを浮かべつつ、ミエリアが部屋へ来る前の事を覚えているか、話の途中で寝たのだと状況整理のために話を振る。

 かなり長い間があったが思い出せたらしく、少し顔をしかめて頷く。


 飛び出していった事に叱り、その後のことを聞いている最中に寝てしまったので、サリーは何があったのか分からなかった。

 しかし、その後に来たミエリアに聞いたので、何があったのか聞く必要はもうない。

 あとは今一番の懸念事項である、シンヤの体調の調子を確かめる。


 ミエリアに話を聞くまで、実はシンヤのことをかなり心配していたサリー。

 話を聞いている途中で急に黙り出した為、どうしたのかと思えば寝ていた。

 それほどまでに疲れていた理由が何なのか、全く思い当たらなかった。

 今ならもう分かるのでさほど心配はしていないが、まだ幼いので念の為に聞いておいたのだろう。


「うん、平気」

「なら良かったわ。さ、戻りましょう?」

「…あ」


 特に不調に思う所もなく、疲れもほとんど感じないので大丈夫だと笑顔で伝えるシンヤ。

 先ほどと違い、眠そうにも怠そうにもしていない様子から、本当に平気なのだと分かり、安心したサリー。

 もともと、シンヤが起きるのを待ってから部屋を出るつもりだったサリーは、もう部屋にいる意味はない。

 なのでイツキも含め部屋を出るよう促した…のだが、何か忘れ物でもあったかのように、突然声を上げるシンヤに気をとられる。


 どうしたのかとシンヤをみると、その視線をフードを被っているが為に顔を見ることが出来ない、イツキへ向けていた。

 つまりイツキに用事があるのだろうが…いい加減さっさと前準備を進めたいイツキは、シンヤの視線に気付きながらも無視。

 既にドアの窪みに指を引っ掛け、ドアを開けようとしていた。

 すると、意外なことが起きる。


「待って!」

「っ!…シンヤ?」


 なんと、イツキに向かって制止の言葉を、しかも大声で発したのだ。

 驚きの行動に、たまらず息を飲むサリー。

 シンヤが大声を出すなど、泣くとき以外ではほとんど聞いたことがなかった為に、特に驚いてしまっていた。


 そのシンヤだが、サリーに名前を呼ばれた事にも気付かずに、イツキをただじっとみる。

 実は、シンヤが制止の声を掛ける為に大きく息を吸い込んだ、その時点で動きは止めていたイツキ。

 後ろに立つシンヤから覚悟を決めた気配を感じ、何かと足を…というかドアを引こうとする手を止めたのだ。

 取り敢えずと、止まったイツキ。


「なんだ」

「あ、あの…お願いが、あって」


 そんなイツキに、シンヤは少々意外さを感じながら用を話す。

 自分から待ってと言ったが、制止の声自体は咄嗟に出たもので、本当に待ってくれるとは思っていなかったのだ。

 シンヤが覚悟を決めたのはお願いしてみる事であり、制止の声を掛ける事ではなかった、ということであり、咄嗟だったから大声になったのだろう。

 とまあ、それはともかく。

 止まりシンヤの方へ振り向いたイツキへ、お願いを言う。


「その…顔を、見せてほしくて…」

「…何故?」

「えっと……」

「まあ、いいだろう」


 シンヤのお願いとは、イツキの顔を見せて欲しいと言うものだった。

 ミリアーナと完全に被っているが、当たり前な事に知る由もなく、返事を待つ。

 ただ、相変わらずというか、返す言葉は肯定でも否定でもなく質問。

 この返され方は人見知りにはかなり厳しく、つい吃ってしまうものであり、シンヤも漏れず言葉に詰まる。

 顔を見たい理由を問われて、すぐに答えることができる者は、人見知りなど関係なくそう多くはないと思うが。

 シンヤが答えに瀕していると、イツキから許可を出した。

 許可を出すなら最初からそうして欲しいものだ。


「え?…あ、ありが…とう?」

「ほら」

「っ…。え……?」

「あら、まあ」


 どう答えればいいのかと悩んでいると、答える前に許可してきた。

 シンヤにとっては急な展開だった為、頭が追いつかず一応言ったお礼も疑問形となってしまった。

 そんなことどうでもいいとばかりに、シンヤの混乱などお構いなしにフードを降ろした。

 そして、望み通りイツキの顔を見たシンヤは、驚きと共に息を呑み、次に呆然となると、とある事に疑問を抱いた。

 何に驚き息を飲んだのか…初めて見る綺麗な顔に見惚れて。

 呆然としたのは、てっきり男だと思っていたから…つまり女だと勘違いしているわけだが、最早何時もの事。

 そして、疑問とは…


 ちなみに脇で様子を見ていたサリーは、イツキの顔に多少の驚きは抱くも、特に大げさな反応はなかった。


「それで?」

「な、なんで…」(何も、見えない…っ)

「また、どうしたの?」


 疑問を抱いたのは、シンヤの持つ『能力』である、考えを読み取る力が発動しているにも関わらす、イツキの考えがわからなかったこと。

 今まで分からなかったことなどなかった。

 もちろん、寝ている者など何も考えていない者の顔を見ても、何も浮かばない。

 しかしイツキは違った。

 考えが何もないから読めないのではなく、まるで壁でもあり、遮られている為に読めない、そう感じたのだ。

 初めての経験であり、何で見えないのかと混乱していた。

 そのせいで、イツキにかけられた声も、またしても混乱し出したシンヤに、一体どうしたのかと声をかけたサリーにも気付かない。

 混乱し続けるシンヤにイツキは、正気に戻させるほどの衝撃を与える一言を、口にする。


「考えが読めない、か?」

「な!?…なんで、…知って」

「イツキさんっ…何故」


 それはミエリアにも言っていない、サリーのみが知る、シンヤの抱える最大の秘密。

 その秘密を言い当てられ、かなり強く動揺するシンヤ。

 かなり声も震えており、拾われる前に気味悪がられた事を思い出しているのかもしれない。

 この事態には流石にサリーも冷静ではいられず(なんだかんだで冷静な場面は少ないが)何故知っているのかと、落ち着きをなくしていた。

 孤児院を飛び出した時に何かあったのかと思ったが、話を聞いた限り気付かれるようなことはなかった。

 一体何故、それも能力の内容まで知られているのかと。


「…落ち着け、別に何をするつもりはない」

「で、でも…なんで」

「ふぅ…見苦しいものを、ごめんなさいねぇ。しかし、何故分かったのですか?」

「視線、感情、性格からの推測だ」


 2人のあまりの慌てように、宥めるイツキ。

 未だにバレた事、それから読み取れない事から混乱が解けないシンヤ。

 しかし流石年長者か、サリーはイツキに悪意がないと見ると直ぐに落ち着き、まず謝罪した。

 それでも気付かれた理由は見逃せないらしく、再度尋ねる。

 隠す理由もなく、またミエリアの件から暫く付き合う事になりそうな孤児院で、面倒が起きるのも面倒なので、気付いた理由を3つ上げた。


 イツキの上げた理由だけで能力持ちで、且つ顔から考えを読み取ると推測できる者が、一体どれだけいると言うのか。

 甚だ疑問ではあるが、注意喚起の為に詳しく説明する。


「まず、そいつの視線の動かし方が……………………と言う事だ。そこらの者には分からないだろう。しかし、見抜ける者は直ぐに見抜く。気をつける事だな」

「そう、ですか。…難しいと思うけど、少しでも気をつけていくしかないわね。折角の忠告だから」

「うん…。それで…何で、分からないの?」

「それもそうね。何か方法でもあるのですか?」


 割と長い説明を、サリーとシンヤにも分かるように詳しく行った。

 あんまりな理由に、言葉が見つからなかった2人。

 イツキの説明は、普通どころか鋭い者ですら、予想の一つに含めるには弱いと判断すら様なものばかりだった。

 実際バレているのだから本当の事なのだろうと、無理やり納得するが、やはり納得がいかない2人。

 心の整理をつけるため、別のことを考えようとイツキに提示された対策を思い出す。


 日常生活の中で気をつけるには難しい事ばかりだが、少しでも気をつけていこうと、シンヤだけでなく自分にも言い聞かせるサリー。

 子供たちをトラブルに巻き込まない為に、と。


 これで気付かれた理由は分かったが、考えが読めない理由はまだ分からない。

 シンヤは、今まで読み取りたくない事まで読み取ってきた事から、能力を抑える事にも使えるのではと期待してもいた。

 サリーはそこまで考えていなく、ただの好奇心で重ねて尋ねる。

 イツキは…


「心を…考えを読んでくる者などいくらでもいる。なら対策も生まれる。考えを、空にする…心を閉ざす。いくらでもある」


 イツキ自身が行なった事は詳しく説明せず、ただ手段などを教えた。

 実は地球にも相手の考えを予想するのではなく、読む…所謂、超能力者がいたので、割とそう言ったすべは広まっていた。

 もしくは自白剤など、強制的に喋らされる場合の対処法など。

 それを聞いた2人は…


「…うーん?」

「…そう、なんですか」


 思った以上にパッとしない答えに、微妙な顔をしていた。

閉心術と聞いて、何を思い浮かべますか?私の中ではとある小説なのですが、ググるとハリポタが意外と多かったです。…まあ、どうでもいいですかね。

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