表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/88

48「面倒は私が見よう」力の制御は、導かれたのは…

〜ミエリアに、力の制御が出来るよう助けてあげて欲しいと、頼まれたイツキ。どうせ引き受けるのだろうが〜

 サリーのお願いに対し、『いいのか?』と質問を返したイツキ。

 追加報酬を出していいのか?という風にも取れるが、その本意とは…


「……」

「今は抑えているだけだが、あの力を多少でも使えるようになれば、そこらの人間など相手ではなくなる」

「そう、でしょうね」

「それで、いいのだな?」


 ということである。

 珍しく長文で話しているが、これでも所々端折っており、いまいち意味がわかりにくい…なので解説していく。


 まず始めに、イツキの言う内容は全てミエリアのことである。

 そのことを踏まえ、『今は抑えているだけ』というのは、手当たり次第に壊さないよう異常な力をセーブしている、ということ。

 結局物を壊してしまっているが、もしセーブを一切していなければ孤児院は今頃崩れていただろう…というのがイツキの考えである。


 そして次に、『あの力を〜相手ではなくなる』とは、力を抑えることに意識を割いている今ですら、ドアを吹き飛ばせる。

 それなら、多少でも力をコントロールでき、余裕が生まれれば、その分さらにコントロールに意識を割くことができる。

 そうなれば相手が多少腕が立っても、文字通り力でねじ伏せることが出来てしまうだろう…と、いうことである。


 そしてイツキの『いいのか?』という問いかけの意味だが…ミエリアにそのような力を与えて『いいのか』と聞いていた。

 この場合の力とは、筋力などの力ではなく、持てる術のことである。

 そして何故、イツキがそのことを気にするのかは置いといて。

 仮にミエリアがイツキの言う力を得てどうなるのか…もちろんのこと、別に傲慢になあるわけではない。

 なら何かといえば…


「孤児院を助けるために、冒険者にでもなるだろう。力を活かす、最も簡単な方法を」

「…」

「冒険者として活動する危険さは、理解できるだろう?」


 資金の足りぬ孤児院を少しでも助けるために、稼ぎの良い冒険者にでもなるだろう、と。

 ちょっと腕が立つ者…冒険者で言えばEランク程度だが、簡単にねじ伏せてしまう力を活かすなら、一番簡単なことは冒険者になることであろう。

 しかし冒険者とは、一般市民より遥かに命の危機出会いやすい。

 力を持ったと言っても、所詮はDランクからCランク下位程度だろうし、力だけで生き延びる事が出来る程甘くない。

 何より、ランクが上がればそれだけ、依頼の厄介さは上がっていく。

 つまり…


「死ぬぞ」

「っ…」


 そう、たった一言、非常に短い言葉であるが、何よりも最悪な結果。

 生の終わりを、サリーの知らぬ場所で迎えるかもしれないのだ、と。

 長くなってしまったが、その覚悟があるのか、と聞いていた。

 改めて突きつけられた言葉に、顔を歪めるサリー。

 もちろん、イツキの言う予測は絶対ではないし、可能性の一つでしかない…のだが、ミエリアの性格を考えるとかなり高い。

 サリーもその予想に行き着いていた。

 しかし力を持て余している現状はどうにかしてやりたい、そんな葛藤が繰り広げられていた。


「そう、よね…。多分、私との約束も、力は扱えていると耳に入れないでしょう。あの子達を引き合いに出しても…」

「それでも、やるか?」

「……」


 サリーの言う約束とは、2人の間のみで交わされた、ミエリアが誤って人を傷つけないためのものである。

 しかしその約束も、力をコントロール出来るからもう必要ないと、聞く耳を持たないだろうと。

 誰かの為に、と決めたことはなかなか曲げず、無茶も平気でする子だだから、余程の事でもない限り止まらないだろうと。

 しかし、ミエリアにはもっと楽に生活してほしい。

 ぐるぐると思考がループする中、イツキが急かすように尋ねる。

 どうしようかと迷いに迷い、イツキに催促されたことにより焦燥感が募り、老体には堪えたのか思考がぼやけていくサリー。

 まともな判断などできそうにない状態のなか…


「それなら…」


 悪魔の如きイツキの囁きが…


「本人が望む通り…」


 サリーの頭を侵食していく。


「…どうだ?」


 そして、イツキの提案を聞くと何かに誘導されたかの様に、他の選択肢を考えることもなく、肯定的な意思を見せた。


「その方が、いいのかもしれないわね…」


 もしこの光景を、多少でも良心を持った、心理に詳しい学者なりが見ていたのなら、即座に間に割り込み会話を止めていただろう。

 何故か…そう難しい事ではない。

 スレスレではない、完全に犯罪といえる行為が行われていたから。

 先に…イツキがサリーに提案した事、それは──


「お前と同じ道を歩ませてやれ。子が同じ道を行くことは珍しい事ではあるまい?面倒は私が見よう。力もほぼ完璧に扱わせてやる」


 サリーが歩ませたくないと思っていた道。

 少しとはいえ自分が辿った、血にまみれた許されざる道。

 本来なら選ぶ筈のない選択。


 ──暗殺者へと誘う、死神の囁き…


 ここで、選ぶ筈のない選択を選んだ理由、その理由が先ほどの会話の間に入る〜犯罪行為云々につながる。

 それはイツキが、サリーの無意識の領域を揺さぶり、操り、発見と自覚の困難なとある精神状態に持っていったから。

 それは…


(この程度でいいな)


 マインドコントロール…つまり、洗脳したからである。

 この世界でも洗脳は犯罪であるので、イツキの行為が分かる者なら、ということである。

 それも、操り人形の様にあからさまに怪しいものでなく、小さな小さな…しかし強力な洗脳。

 表層部や根っこ全体、あるいはまるまる全ての思考を変えたのではなく、極一部を捻じ曲げた。

 ミエリアへの想い、そのとある部分を変えたのだ。

 それも自分の職業に誇りを持つ親なら、我が子へ持ってもおかしくない、夢ともいえる考え方に。


 それは、自分を目指して同じ道を歩んでほしいという、親心…同じ道を強要させる様な親心は知らないが。

 まあ、それはともかく。

 余程自分のことをダメ人間だとでも思わない限り、目指して欲しいと…もしくは目指すと言われれば嬉しいと、そう思うだろう。

 そんな考えを、サリーに持たせた。


 危険な冒険者の可能性か、力の制御を諦めるかの選べぬ選択を迫られ、思考があやふやな状態で3つ目の選択肢が現れる。

 しかし歩んで欲しくない道だからと却下する筈が、その3つ目の選択肢は前の2つを両方とも叶えるものであり、かつそのタイミングで『親の道を子が〜』と、刷り込む。

 そうすることにより忌避していた筈の暗殺者の道…ミエリアが殺人者になるということが、意識から逸らされたのだ。

 大雑把に例えれば〜冒険者になる事もなく力を制御できて、更にミエリアが私と同じ道を歩む→とても嬉しい→殺人をして欲しくないという思いが目から逸れる〜…といった感じである。


 もともとサリーは、ミエリアに殺人をして欲しくないから、自分と同じ道を歩んで欲しくないと考えていた。

 それなのに、自分と同じ道を歩んでくれる嬉しさだけで、その考えが逸れた事にはもちろん、理由がある。

 ミエリアに殺人をして欲しくない理由をすり替えて、問題ないと思わせた。

 血に染まった、不幸しか待たない道を行かれるのが嫌だったから、冒険者同様に命の危機が身近になるのが嫌だ、という風に。

 そしてイツキがミエリアを預かるから、その心配は無用であると。

 少し無理のある話だが、殺人をして欲しくないという思いを逸らせる為なので、バレない程度には雑になっている。


 …長い説明はこれで終了である…が、少し余談。

 イツキは、操り人形レベルの洗脳を施して、違和感を持たれない様に日常生活を送らせる事は、不可能ではない。

 しかし今回はそこまでする必要がなく、かつ時間が足りないため施さなかった。

 それでも、綻びが出ない様に他にも捻じ曲げたりしているので、本人も含め誰も気づく事はないだろう。


 *****


 さて、ミエリアに暗殺者への道を承諾させたイツキ。

 何故暗殺者を目指させるのか、洗脳をしてまでする必要があるあるのか、など疑問がたくさん生まれた。

 しかし説明できる事は少ない…なので追い追い。


 サリーの望まぬ、ミエリアの暗殺者への道が決まったので、話は進む。


「では、力を制御する術は教えてやる」

「ありがとう、ございます。それで、報酬ですが…」

「不要だ」

「…え?」


 イツキが部屋へ呼ばれた本題、ミエリアに力の制御をする助けをして欲しい、という頼みを了承したり

 既に、先ほどの様子がなくなり、落ち着いているサリーはそのまま頭を下げる。

 そして、それなりに重要な報酬の話は移る…筈が、報酬は要らないとイツキは拒否した。

 予想外の言葉に少し呆然とするサリー。

 冒険者や裏の仕事につく者は大半が金目的であり、たとえ貰える物が道具であっても、要らないと突っぱねる者はまずいない。

 その為に呆然とする程意外だったのだが…思考に靄がかかっているようだ。

 若干洗脳の影響が残っているのかもしれない。


「いいのですか?大した物ではありませんが…」

「不要だ。ただ、何時からかは未定だが、長期間此処を出る事になる」

「っ!…長期間ですか。どれ程?」

「さあな。1年前後か。本人の希望にもよる」


 確認の為、再度尋ねられたが、同じ言葉で拒否する。

 報酬が要らない理由のように語った話は、ミエリアを鍛える為に短いとは言えない時間、別のところへ行くという。

 可能性としては考えていたのか、当たって欲しくない予想があったかのように、息を飲むサリー。

 人によって長期間を指す時間は異なる為、どの程度なのか把握しようとする。

 分からないと前置きのように答えながら、1年前後とそれなりに詳しい期間を提示した。

 詳しい期間は、ミエリアが帰りたい、まだ続けたいと意見を聞いて決める予定なので、分からないといったのだ。

 ほぼほぼ検討はついているが。


「そう…あの子なら、妥協はしないでしょう。遅くなってしまうかもしれないのね」

「…」

「仕方がないわね。それでは、本当に報酬はよろしいのですね……はい、分かりました。メアのこと、よろしくお願い致します」


 中途半端に終わらせる事はないと、やりきってから帰ってくるだろうと予想し、時間掛かってしまうと思ったサリー。

 当分は会えないのだと、寂しさが募るがまだ暫くは此処にいるのだと、気持ちを切り替える。

 最後に報酬は要らないのか確認して、ミエリアをよろしくと頭を下げた。

洗脳云々、分かり難いですよね…すみません。あれでも3時間かけて悩みに悩んで纏めたのです。許してくださいorz

もっと読者様方に伝わる表現を学んでいきますので、今はどうか、拙い文章ですが読んでいていただけると、嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ