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30「後でだがな」前提の違い、悪いアレンジ

〜以前にも、誰かに指南をしていたのかと聞かれたイツキ。実際地球では行っていたが、何と答える?〜

 過去に教えをしていたのか。

 その答えは…


「ああ」

「そうなのですか。運が良かったですね。因みにどれ程?」

「私が直接鍛えた者はそう多くない。年単位ではあったが」


 躊躇うそぶりも無く肯定。

 それは地球で、何でも屋(裏)を行っていた時の、仲間達のことである。

 イツキは仲間と言い張っているが、立ち位置的には部下となる…まあ、仲間といっても間違いではないが、地位の問題である。

 そんな自分の命より大事にしていた、その者達をなるべく死なせない為に、持てる全ての力を駆使し鍛え上げた。

 そのことを言っているのだ。


 イツキ自ら育て上げたのはその仲間のみであり、他の者にはメニューを考える事はあっても、直接というのはない。

 依頼で戦闘技術を教えるというのもやはりあったのだが、全て他の者にやらせていた。

 他人に教える事は自分を見直す事にもなるので、その意図もあったが、他人なのでどうでもよく仲間でも十二分に教えられる為、任せていた。

 まあ、それはともかく。


「年単位ですか。…小さい頃から指導する立場にあったのですか?」

「さてな」

「失礼しました。さて経験がおありなら任せて問題ないですね。では息子に会いに行きましょうか」

「ああ」


 年単位で教える、ということはそれだけ教える事…つまり技術を持っており、また難度の高い技術あるのだろう。

 それを教え切っているのなら、指南役としては何の問題もなく、むしろいい人材と言える。

 その為リレイは、特に見張る様な必要もなく、任せ切っても問題ないかと判断していた。


 ただ気になることはあり、まだ若いイツキが数年もの間教え続けるということは、小さい頃から行っていることになる。

 そのことが気になってしまったリレイは、遠慮なく聞く。

 しかしはぐらかされ、答える気がないとわかるとあっさりと諦め、すぐに引き下がった。

 そして、明日以降の指南の為に、息子の所へ誘うのだった。


 *****


 部屋を出るとイツキの方へ振り向き…


「私の息子は今、庭にいると思いますので。そこまで歩きますよ」


 と、わざわざ知らせてくる。

 庭まで出るといっても、イツキが玄関からここまで来た道と何も変わらず、何分も歩くわけでもない。

 何をいちいち、と思うが行先も分からず先を行かれると、不安に思う者もいる。

 そういった者たちを相手にしていたこともあるリレイは、誰彼構わず明かすことにしている。

 庭に行くだけで大げさだが、目的を知ると知らぬでは大きく変わる。

 日常的な事でも気をつけている、という事なのだろう。


「ここまで来た道と逆なだけだろう」

「まあ、そうですね」


 そういった裏事情があると推測はしているイツキだが、別にその気遣いは不要な為、以降はしなくていいとの意味も込め、素っ気ない返しをした。

 だいたい性格が読めてきたリレイは、その返しに簡単な反応だけをして、ついでに含まれた意味を受け取り、歩き出した。


 イツキが来た道を戻る中、ふとリレイは口を開いた。


「少々、お聞きしても構いませんか?」

「ものによる」

「ありがとうございます」


 唐突な会話の始まりは、質問をしていいか。

 質問と言われても、それこそ星の数ほど思いつくし、どうでも良いものから、絶対に応える事のないものもある。

 その為、質問による、と一部許可した。


 リレイは礼を言うと、早速情報収集(・・・・)を始めた。


「何故ここへ来たのですか?」


 イツキについて知りたい事はたくさんあるし、それだけの謎がある人物である。

 そんなイツキに一番に聞いた事は、何故この都市に来たのか。

 本当なら、今までどう言った事をしていたのか?何故それほどの実力がありながら無名なのか?

 そういった事が聞きたかったのだが、はぐらかされたり警戒されても困るので、当たり障りのなく、しかし重要でかつ個人的に気になっていた事から始めていた。


 リレイはそんな意図があって聞いたのだが…


「何故?」

「長い間鍛える程の方々がいらしたのでしょう?わざわざ此方に…しかも冒険者登録までして。それが不思議でして」


 イツキは、何の理由もなく来てはいけないのか?という意を言外に込め、若干検を混ぜて返す。

 そもそもこの都市に来たのは、気づいたらいた森から一番近かったからであり、正直にリレイに話しても納得などしないだろう。

 むしろ、余計変に疑われるだけだ。

 その為の誤魔化しが混じる返し方だった。


 しかしリレイは、誤魔化しが混じっていたことに気づかず、しかし検の混じった言外の意は汲み取った。

 そして何故と聞いた理由を付け足して、イツキの言外の意を否定した。

 イツキの状況を全く知らない…知る筈もないリレイからすれば、この都市に来た理由が何か疑問に思う事は当然であった。

 身体能力のみでSランク同等以上の実力者が、何年も鍛えた者たちの元から離れ、わざわざこの都市に来た。

 それも、冒険者登録をしてはおらず、わざわざここのギルドで登録をした。


 冒険者登録をしていない実力者は、大抵はその前に憲兵や国の騎士、高名な者に師事をしていた者だ。

 しかしイツキのような容姿と実力なら、憲兵をしていたのならあっという間に有名になるだろう。

 騎士ならばルールを厳しく守る職柄、辞めた後も堅さが残る。

 しかしその様子もなく、堅さの残らない者はそもそも試験の場で弾かれる。

 師事もその線は薄い。

 なにせ何年もの間、逆の教える立場にあったのだから…イツキの言葉が嘘でない限りは、だが。


 なら今まで何をしていたのか?…その答えにつながる質問がここに来た理由である。

 今までしてこなかった冒険者登録をこの都市で行い、冒険者としての活動を始めたのが、ただの偶然とは思えなかった。

 ならこの都市に来た理由こそ、冒険者を始めた理由や今まで何をしていたかに繋がるヒントになるのではと考えたのだ。


 つまり、先ほど述べたリレイの聞きたかった事を、遠回しに聞いた、という事である。


(…なるほど)


 そこまでリレイの考えを推測し当て切ったイツキは、遠回しの質問や若干復活した警戒心に納得した。

 つまり、リレイの、イツキの今の状況への前提が違いすぎるのだ。


 まさかこの世界の人では無いとは思わないし、その仲間たちにはもう会えず、降り立ったばかり故に名が広まっているわけもない。

 その前提がなく、ただ小さい頃から指南ができる人物で、実力者にも関わらず今まで冒険者になっていなかった。

 そんな常識から大きくはみ出た…どころか完全に別の場にいるイツキを、腫れ物を扱う様な態度になっても仕方ない、という事だ。


 突然見知らぬ土地に立っており、とりあえず近くの都市に来た…だけでも知っていればかなり態度は変わってくるだろう。

 もちろんそれを正直に話す事はしない。

 ただとりあえず、その中途半端に間違った前提を訂正する事にした。


「答えてやる」

「ありがとうございます」

「後でだがな」

「…何故です?」


 …いや、後回しにした。

 もちろん、答えてもらえると分かったリレイは、後回しにされた理由を問うが。


「もうつくだろう」

「……。そうでしたねぇ…」


 もう庭につくためだった。

 気になりすぎたが為に、すっかり頭から飛んで行っていたリレイであった。

 それでもしっかり廊下を歩き玄関まで来れたのは、そこまでの道のりが体に染み付いているからか…


 *****


 リレイの間抜けたワンシーンのせいで、真面目な空気が散り散りなった後。

 そのまま庭へ出た2人は庭の真ん中で、何やらトレーニングらしきものをしている少年を目に写す。

 トレーニングといっても筋トレではない。

 様子を見るに足運びの練習のだと思われる。

 何故はっきりしないかといえば、イツキから見て極めて非効率なやり方であり、足にしか意識がいっていないため、手や腰が動き踊っている様にしか見えないのだ。


「…おい、アレは何だ」

「剣を振る際の足運びの練習ですが…おかしいですか?」


 あまりに滑稽な光景に、呆れてしまったイツキはこの事について、リレイへ尋ねる。

 その問いに、足運びの練習だと答えるが、イツキの様子に若干呆れが見え、しかし悪い点が見つからない為おかしいのかと聞く。


「おかしいも何も…非効率過ぎる。見様見真似で教えたのか」

「そうなのですか。…よく分かりますねぇ。えぇ、その通りですよ」


 そんなリレイの様子に更に呆れを加速させ、効率が悪過ぎるという。

 何故そうなったのかを当て、お前のせいだろ?と聞けば、リレイはよく分かるなと感心しつつ、認める。

 若干楽観視しているのか、未だ口調は軽いがそれもすぐ消える。


「アレは即刻やめさせろ」

「…それ程ですか?」


 イツキの次の言葉により。

 非効率な足運びの練習を止めさせろと、割と真剣に言われた事により、マズかったのかと聞く。

 イツキは珍しく溜息を吐きたくなりながらも耐え、ダメな理由を上げた。


「あの練習法は、悪癖が付くより余程質が悪い」

「何故でしょう?これでもギルド教官の指導から取り入れたのですが」


 いまリレイの息子が練習している足運びは、ただ悪い癖がつくよりも悪いらしい。

 何せ、絶対につけてはいけない癖を付けた仲間を、しっかり矯正できたイツキが、マズイと感じる程良くないのだ。

 もちろん、バカな癖を覚えたその仲間へも、マズイと思い、直すついでに制裁を加えることは忘れなかった。


 リレイは冒険者ギルドで、新人に指導する教官の教え方を取り入れたと言い張り、ダメな理由がわからないという。

 基礎のない新人へ教える為の方法なのだから、真似て問題があるとは思わないだろう。

 そう考えている様だが…


「それが悪いというのだ。自分の考えでアレンジしただろう?」

「それはまあ。その教官は一人一人違っていましたから。根は同じだったのでその根はそのままで、それ以外を私がマリス用に」


 その教官の方法を取り入れたのが良くなかったらしい。

 取り入れたと言っても、その教官に息子専用に作ってもらったものではなく、自分で息子用にアレンジしたものだった。

 リレイの言い分では、教官は指導の際、一人一人違った教え方をしていたが、元になったものは同じらしく、共通点はあった。

 その共通点の部分を取り入れ、それ以外を息子…マリス用に変えて教えたらしい。

 自分で一から作ったら、チグハグな、基礎とするにはよろしくないものになると思い、教官の方法を真似たらしい。

 見様見真似で取り入れる事ができるのは、流石Aランクといえるが。


 …さらりと出してきたが、息子の名前はマリスというらしい。


「そのアレンジをする人間が悪いと言っている」

「…なるほど、そうでしたか。確かに私が変えてはいけなかったですねぇ…」


 どうやら納得できた様子のリレイであった。

 どういう事なのか…

今回も説明会が長くなってしまい申し訳ないです。

正直自分で書いていても、アレ?意味わかんなくなってきた?と思った時もあったので、分からなかった点、こうした方が良いなど、意見お待ちしております!

もちろん、自分で読む分には理解できる程度には直しているのですが…

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