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18「〜取れるか?」陰が薄い…?、賑わうギルド

〜無事自室で食事は取れるのか?イツキのペナルティ依頼は?〜

 予定通り食堂を探ると、先ほどの者達はほとんどいない様だった。

 もちろん新しく食事を始めている者もいるが、全員が消えるのを待っていては何も始まらない為、行動を開始した。


 極力、騒ぎになる事は避けたいイツキは、気配を薄くし意識に入りにくくして、食堂に降りた。

 幸いというか、護衛や高ランクの冒険者などの実力者は誰もいなかった為、予想通り誰もイツキに気付かない…というより、気にも掛けない。


 ***

 気配を薄めるというのは、意識に入り難く意識に残りにくいという効果がある。

 例えば、気配を薄くして階段から降り、それを誰かが見たとき、『誰かが降りてきた』事には気づけるが『どうでもいいか』という具合に、気にも掛けない…掛けられない感じになるのだ。

 顔を知っているものだと、顔を見ても誰だかわからない、といった具合ななる。


 意識に残りにくいというのは、どういった特徴があったかを思い出せず、また記憶を覗く術があっても、ぼやけてよく見えないという現象を引き起こすのだ。

 地球に記憶を覗く術はないため、記憶を引き出す類の催眠で確かめた事だが。


 相手が誰だかしっかり認識されると、認識した者だけその効果は解ける。

 ***


(私に気づけるほどの者が、ここに泊まっていない事は確認したが)


 昨夜の魔力探知では、多少腕が立つ者はいても、ルビルスの様な人外レベルの者は感知に引っ掛からなかった。

 イツキの知らない方法で隠れている可能性もあるが、ルビルスがギリギリ気づける程度の、かなり薄い殺気を宿内全体に放っていた。

 動揺なり戦闘態勢に入るなり、何らかの反応が一切なかった為、いないのだろうと判断していた。


 それでも、今朝にその実力者が訪れている可能性もあったので、警戒をしていたのだが、その警戒も殆ど解き、従業員に近づく。


「ここで出される食事は自室で取れるか?」

「原則食堂となっていますが、何故でしょうか?」


 何故か名前を思い出せない事に、不思議に感じていた従業員だったが、その想いも薄れ聞かれた事に答えた。

 理由があればなんとかなりそうだと、正直にその理由をいうイツキ。


「周りの視線と、声を掛けようとしてくる者達が目障りだ」

「?どういう…」(あれ?この方は…誰?)

(ああ、薄めてたな)


 言っている事は理解できたが、何故か分からず顔を見ようとして、誰か名前どころか顔もわからない…認識できない事にやっと気付いた。

 気配を薄くしている為に、従業員がイツキの事を認識できておらず、何故注目を集めているのか理解できていなかった。

 イツキ自身も何故ああまで注目を集めているのか、理解していないが。

 自分の事を認識できていないと話にならないので、従業員のみに気配を戻すという、離れ業(?)をした。

 威圧や気などを個人に絞るならともかく、気配を一人にのみ感じ取れるようにするとは、どのような事なのか?

 説明してもらいたいものである。


「!?…イツキ様、でしたか…?」(あれ?どうなってんの?急に…あれ?)

「おい、どうなんだ」

「…失礼しました。少々お待ちください。上の者に聞いて参ります」

「そうか」


 急に相手のことが認識できるようになり、混乱する従業員。

 さらにその相手が、たった1日…いや、一夜で従業員に広まった、性別詐欺のような顔をしたイツキだったのだ。

 広まった理由としては、性別を間違わないように全員を集め、リサが注意喚起をしたからである。

 あやふやだった目の前の人が、その注意人物だったのだから、かなりの驚きであった。

 しかし、ほとんどその驚きを表に出さず、心の内に止めたのは、なかなか頑張ったといえる。

 部屋で食事を取れるか、という質問はすっかり忘れてしまっていたが。

 イツキに再度問われ、自分では判断できない為、上の者に聞くといい、スタッフルームなどに繋がっているのだろう扉の奥へ消えた。


 *****


 しばらくして先程の従業員が戻ってきた。


「大変お待たせしました」

「それで」

「はい。イツキ様お部屋で食事はとって良いとの事です」

「そうか」


 許可が出たようだ。

 宿側としても騒ぎになる事は嫌っており、ギルドマスターから紹介されるようなイツキからの、苦情ともとれる申し出に拒否はできなかった。


(これで、鬱陶しい視線などはなくなったわけか。朝食を食べたら、ギルドか)


 視線もそうだが、何より話しかけてこようとする者達、これらが一番の問題であった為、気にする必要がなくなったのは、かなり助かったといえるのだ。

 懸念事項が一つ減り、これで次へ進めると、次の予定を上げるイツキ。

 そこに従業員が…


「それでですね。朝食をお持ちする時間は何時になさいますか?」


 と、いつ食事を持って行けばいいかを尋ねる。

 流石に電話や呼び出しボタンの類はなく、時間を指定をする必要があるのだ。

 その時間に、起きて部屋にいけなければいけない、という事もある。


「7時でいい」

「7時ですね。承知しました。本日はもうお持ちしてよろしいですか?」

「ああ」

「それでは」


 目覚めたい時に目覚められるイツキにとっては何の問題もなく、早くも遅くもない時間にした。

 今はすでに7時を過ぎている。

 だからという訳でもないが、朝食の準備はできている為、もう部屋へ運んで良いかと聞かれる。

 本当なら30分前に食事をとっている筈だったので、短く運んで良いと返す。

 従業員は軽くお辞儀をし、その旨を伝えにまた扉の奥へ消えた。

 用事が済んだイツキは、未だに気配を薄め自室へ戻った。


 *****


 コンコンコン

「イツキ様、朝食をお持ちしました」


 イツキが部屋に戻り、しばらくしてノックの音と朝食の知らせが来た。

 イツキは無言で扉に近づき、向こうにいるだろう相手に当たらないか、気配を見てから扉を開けた。


 突然扉が開き僅かに驚いた様子の、先程とは別の従業員。

 理由としては、ここに泊まる者の大半が身分が高かったりするので、基本的に中の者がわざわざ開けてくる事はない。

 開ける事があってもそれは従者や護衛だけであった。

 今から食事を届けに行く部屋には、イツキの一人であると知っている為、開いた事予想外で多少驚いてしまったのだ。


「失礼します。朝食をお持ちしました」

「ああ」

「お食事が終わった際はお手数ですが、食器などはこちらの運搬車に載せておく様、お願いします」

「わかった」

「それでは、ごゆっくりと」


 驚きを表に出したわでもないので、何事もなかったかの様に進める従業員。

 料理を部屋の中の机に載せていく。

 そして、食事が終わった際の後片付けの説明すると、そのまま台だけ残し戻っていった。

 それを見届けることなく、扉を閉め食事を開始した。


 *****


 5分程で食べ終わり、言付け通りに運搬車に食器を載せて片付けた。

 量は多くもなく少なくもない、絶妙な量だった。

 冒険者は物足りないと言いそうではあるが、イツキには特に文句もない量だった。


 一階、食堂に降りその場にいた従業員に、食べ終わったとの旨を伝え…


「いってらっしゃいませ」


 見送られながら宿を後にした。


 宿を出るとガードマンらしき男がまだいた。

 イツキに気がつくと何かを言いたげな顔をしてチラ見をするが、男からは特に絡んでくることはなかった。

 此れ幸いと、構って欲し気な男を無視してギルドへ向かった…直ぐ側だが。


 ギルドへ入ると、それなりの人数の冒険者がカウンターに列を作っていた。

 酒場もかなり埋まっており、飲んでいる者もいるが、パーティでの話し合いをしている者達もいるようだ。

 予定通り、ペナルティをこなして鍛治師に会いに行きたいイツキは、さっさと依頼の内容と場所を知りたいのだが…


(これは時間がかかる…いっそギルドマスターの部屋に行くか?…いや)


 この行列は20人近く並んでいる。

 それなりに時間がかかってしまうのは間違いなく、それならばと、マスター部屋へ勝手に行き直接確認してしまおうかと考えた。

 しかし依頼を受ける事に関係ないと気にしていなかった、依頼を受けるためのカウンターではない、依頼を出す手続きをするためのカウンター。

 そのカウンターに、ソフィアがいることに今気づいた。

 そしてルビルスは依頼をソフィアに渡しておくから確認しておけと言った。

 なら、本来のカウンターとは違えど、ソフィアなら受けられるだろうとそのカウンターに向かった。


「…イツキさん!…コホン。お待ちしておりました」

「ああ。ペナルティの依頼だが」

「はい。預かっています」


 このカウンターに向かってくる者に気づき、すぐイツキだと気づいたソフィア。

 思わず弾んだ声を上げてしまったが仕方がないだろう。

 この時間帯、ギルドは冒険者で溢れている為か、あまり依頼を出しにくる者はいない。

 その為カウンターに来る者は変な誘いしかないのだ…稀に相談事なり真面目な者もあるが。

 そんな例外など滅多にないので、またナンパかとうんざりしていたら、それは違い意中の人であるイツキだったのだ。

 むしろ抑えられた方だろう。


 周りの状況を思い出し、誤魔化すかの様に咳払いをし、ここに来た理由を察し待っていたと切り出す。

 そして預かっていると良いつつ出した資料は5枚。

 つまりペナルティの依頼は5つであり、それをこなせばタダ働きではなくなるわけだ。

 減額は続くが…

 そしてソフィアが依頼の詳細を説明する。


「こなす依頼は5つで、期間は1ヶ月です。どうしても1ヶ月で終わらない事情がある場合、その事情を鑑みて延ばすこともあります。無報酬ではありますが、結果が良く依頼人が報酬を追加することがございます。その追加分はそのまま受け取れます」

「なるほど」


 期間が1ヶ月というのは実は長い。

 都市内で完結する依頼であり、種類にもよるが長くて2〜3日で終わるため、5つの依頼だと、大抵は2週間程しか猶予はない。

  この依頼は些か面倒すぎると判断した、ルビルスの気遣いであった。


 次の追加報酬だが、例えば依頼人が『3日以内にこの荷物を全部運んでくれ』と言い、それを1日掛けずに運び切った。

 その動きに『予定以上にいい動きをしたから追加をやろう』、といった具合に依頼主の判断で出す報酬の事である。

 これはギルドを介さず、依頼人と冒険者でのやり取りのため、ギルドは干渉できない。

 その為、追加の報酬はそのまま貰えるのだ。


 イツキは相槌を打ち、ソフィアによる依頼の説明は続く。

気配を消す≠気配を隠すなので説明を加えておきました。

消す方についてはまたいずれ

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