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29歳のプロポーズ  作者: 白石 玲
2/2

エンゲージリングと婚約に乾杯!

 おまけの後日譚。


「結衣ちゃん、手出して」

「え?」

 二人が休みになった土曜日の夕食時。今日は昼から二人で買い出しに行って、特売だったからってステーキ肉を買って俺が焼いて、結衣ちゃんは『たまには贅沢しちゃおう』とかいってちょっといいワインを開けて、食後のデザートにケーキ買おうか、なんていって、宝石みたいにきれいなケーキを買って、せっかくだからキャンドルディナーでもしてみよっか、なんていってたくさんのキャンドルに火をつけて、いざ、食事をしようというところ。

「こっちじゃなくて」

 不思議そうに首を傾げながら、結衣ちゃんが今度は左手を差し出す。

「目を閉じてね」

「うん・・・?」

 本当は浜辺でプロポーズした時に渡そうと思っていた婚約指輪。持ち歩いてはいたのに、俺は結衣ちゃんが俺と結婚してくれるという嬉しさのあまり、渡すのをすっかり忘れて今日に至っていた。

「はい」

「・・・・・・!」

 結衣ちゃんの左の薬指にぴったりな婚約指輪。キラキラのダイヤモンドが輝いてるけど、俺には結衣ちゃん自身のほうが綺麗に見える。

「ごめん、持って歩いてはいたんだけど、プロポーズのとき、嬉しさのあまり渡すの忘れちゃって」

「え?」

「ほんとにちゃんと持ってたんだよ?出来上がった日にち、見る?」

「いつ?」

「えっと・・・2007年12月24日」

「へ?」

 結衣ちゃんは大きな瞳を更に大きく見開いて俺を見つめる。

「それって・・・」

 そう、俺が3時間待たせて結衣ちゃんに振られてしまったクリスマスデートの前日だ。

「あのクリスマスデートに、プロポーズするつもりでいたんだ」

 ギリギリまでデザインに悩んだ俺は出来上がりもぎりぎりで、しかもその日は職場研修があり、店に取りに行ったのも閉店間際。その結果が翌日の寝坊に繋がっていたという情けない落ち。

「だって、まだ学生だったのに・・・っていうか、彰、バイトだって全然・・・」

「してなかったね」

「どうやって?」

 大学時代、部活がそれなりに忙しかった俺はバイトをする時間は碌に取れず、そうこうしている間に就活が入り、それこそ毎月結衣ちゃんとデートに行くのもぎりぎりな感じだった。

「情けないけど、親に借りた」

「え?」

「その指輪のダイヤも、母さんのをもらったんだ」

 結衣ちゃんにはめた婚約指輪のダイヤは俺の父親がその昔、俺の母親に送った婚約指輪についていたものだ。日常を割と適当に生きてきた俺の、初めての真剣な頼みに両親は指輪のダイヤを譲ってくれた。指輪を作るためのお金は両親から借りて、俺は就職してからしばらくの間それを返済していた。

「嘘、でしょ?」

「本当」

 結衣ちゃんが俺を見つめ、その瞳は見る間に潤んで涙が零れて泣き出してしまった。

「え、ちょ、結衣ちゃん!」

 俺は焦って目の前の結衣ちゃんのそばにかけ寄り、傍に跪いて彼女を抱きしめた。

「彰・・・」

「うん?なに?」

「ごめんなさい・・・」

「え?」

 なに?いまの『ごめんなさい』は?やっぱり結婚できないとか?

「それと、ありがとう・・・すごく、幸せすぎて・・・私・・・もう・・・」

「よかった・・・結衣ちゃんが幸せなら、俺はそれが、1番幸せ」

 ひとしきり結衣ちゃんを抱きしめて、ステーキがすっかり冷めたころに泣き止んだ結衣ちゃんとふたり、もう一度ステーキを温めなおすことにした。

「でも、彰次男なのによくお母さんダイヤをくれたわね?」

「関係ないよ。俺のほうが先に相手を見つけたんだし」

「いいお嫁さんになれるように頑張るわ」

「このままで充分」

 実を言えば、プロポーズ・・・クリスマスデートに失敗して、婚約指輪と借金を背負った俺は実家で・・・というか、兄貴から可哀想な目で見られていた。

「さて、俺たちの婚約に乾杯」


 でも、ほらね?兄貴より先に生涯の良き伴侶を見つけてたでしょ?




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