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メビウスの輪 マコトとフミヤとカスミとユリエそれからマサキとスミレ

昼過ぎ。アパートの二階、和室。青年と少女と男性と女性

男性、青年を指す

「これが例の画家の卵」

「マコトです。宜しくお願いします」

女性、少女を指す

「この子が今度劇団に入った新人さん」

「カスミです。こちらこそ宜しくお願いします」

男性立上る

「じゃあ後は二人で。夕方になったらまた来るから。行こう、ユリエ」

女性立上る

「後は任せるわ。じゃあ行きましょうか、兄さん」

青年、スツールを窓際に置く

「それでは似顔絵を描きたいと思います。そこのスツールに座って下さい」

少女、ぎこちなく座る

「こんな感じでしょうか?」

青年、画用紙とクロッキーを手にする

「もっと楽に。肩に力が入ってますよ」

少女、座り直す

「こうかしら?」

「良いですね。では、暫くそのままで」


夕方。アパートの一階、スナックの前の通り。青年と少女と男性と女性

「カスミさん、今日は有難う御座いました」

「こちらこそこんな素敵な似顔絵を描いて頂けて本当に嬉しいです、マコトさん」

「良かったねカスミ。カスミの魅力が余す所無く表現されてるよ」

「私はこんなに美人じゃありませんよ、ユリエさん」

「そうかい?そっくり描けてると思うけどな」

「もう、フミヤさんまで」

「じゃあ帰ろうか」

「それでは今日はこの辺で失礼します」

「またねカスミ」

店の立看板を出す女性

「お帰りかい?」

「スミレさん。今日は有難う御座いました。ご迷惑だったのではありませんか?」

「気にしないよ」

「可愛く描けてますから、スミレさんも見てあげて下さいね」

「そうかい。後で必ず見ておくよ」

「御機嫌よう」

お辞儀をして立去る女性。無言で顔を見合わせる青年と男性


寮の駐車場。青年と男性

「マコトもそう思うか?」

「と言う事はフミヤさんも?」

「間違いない。あのスミレって人はマサキ兄さんの昔の恋人だ」

「どうします?気付いた以上このまま黙っているのは良くないと思います」

「良い考えがある。夕飯の後、日頃世話になっている御礼をしたいと言ってあの店に飲みに誘う。写真を見ただけの俺達でも気付いたんだ。生身で付き合っていた人間が見ればすぐ分かるだろう。二人の会話が弾んで来たら俺はそれとなく席を外すって寸法だ」

「成程」

「あくまでも素知らぬ振りをしていないとアルバムを見た事がバレるからな」

「そうですね」

「だからマコトは普通に夕飯済ませてくれれば良い」

「分かりました。後はフミヤさんにお任せします」

「任せとけ」


宵の内。アパートの一階、スナックの前の通り。男性二人

「お前が自分を奢るなんて言い出す日が来るとはな。明日は雨かもしれない」

「そんな事言わないで下さいよ」

「悪いな。歳を取ると普段と違う事が起きた時に何か悪い事の予兆ではないかと疑って現状を変えようとしなくなるものだ」

「そういうものですか?歳を取るって」

「ああ」

ポケットを探り不意に焦り出す男性

「しまった、財布忘れた。マサキ兄さん、すぐ取って来るので先に店に入って待っていて下さい。あの紫の看板が出てる店です」


宵の内。アパートの一階、スナック。カウンターを挟んで男性と女性

「フミヤも相変わらずそそっかしい奴だ。飲みに誘っておいて財布忘れるとは」

「慣れない事しようとすると張り切ってとんだヘマをやらかすものさ」

「これも若い者の特権だろうか」

「歳を重ねても、感情に突き動かされるのは良いと思うよ」

「他人を巻き込まなければな。昼間はマコトが厄介になった」

「いいえ。あたしは何とも思ってないさ」

「そうか」

店内を見回す男性

「それにしてもシックで落ち着く店だ。けばけばしい派手さも無く、野暮な無骨さも無い」

「それはどうも。クフフ……」

「何か可笑しな事でも言ったか?」

「髪が薄くなっても腹が迫出しても、中身は口下手で晩生で不器用なままねえ」

「……アヤノなのか?」

「そう。十七歳で親の七光り嫌って家出してバンド活動していたあんたを、ずっと追っかけてたあたしが気づいて無いとでも思ったのかい?」

「その後、自分と違って出来の良かった弟が運送屋を継ぐ事になったが、その矢先に大学の卒業旅行中にスキーバスの事故で弟は帰らぬ人となり、自分が継がざるを得なくなり、別れざるを得なくなるのだがな」

「過去の事はもう止そうじゃないか」

「……アヤノ、非常に言いにくい事なのだが」

「また付き合ってくれって言うのだろ?」

「駄目か?」

「いいえ。あんたみたいな御人好し滅多に居ないからねえ。こちらこそ、こんな酒焼け声のおばさんで良ければ喜んで」

「本当か?」

「ええ」


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