B面カスミとスミレ
アパートの二階、四畳半ほどの和室。初老の女性と少女
「あんたの気持ちは分からなくも無いね。あたしもあんた位の時は後先の事なんか考えられなかったものさ」
「助けて頂いた上に勝手なお願いをしてしまったようで」
「良いのさ。あたしもここ十五年ほど一人だったから話相手が欲しいと思っていた所さ」
「スミレさん、ちょっと聞いてもいいですか」
「許可は要らないよ。思った事をすぐ口にしてくれた方が助かる」
「どうして私をここに置いても大丈夫だと思ったのですか?何の保証も無いのに」
「店に変わった電話があったのさ」
アパートの一階、スナック。女性
「そろそろ店の支度するかね」
黒電話が鳴る。受話器を取る女性
『チャオ!お姉さんはピッツァにタバスコかけるタイプ?』
――おやおや。間違い電話かしら?
「もうお姉さんなんて歳じゃないわよ。タバスコはかけるタイプだけど」
『一緒だね。気が合いそう!』
「ナンパなら他を当って頂戴。これから店の支度しなきゃならないの」
『それは残念。折角円熟した魅力を持ってるのに勿体無い』
――お客かねえ?でも家の店に来る草臥れた中年親父がこんな電話する筈無い
「用が無いなら切るよ」
『そう焦らせないでよ。お願いが有るんだ』
「一緒にピザでも食べに行こうって言うのならお断りよ」
『本音は行きたい所だけど違うよ。お店の前の通りで頭にカチューシャをしてトランクを持った少女がチンピラに絡まれてるだろうから、止めて話を聞いてあげて』
「何でそんな事分かるのさ。それにそこまで分かってるならあんたが止めな」
『それが出来たら頼まないよ。それにお姉さんの方が適任だから』
「適任ってどういう事だい?ちょっと」
電話が切れる。
「言うだけ言って切るなんて」
店の立看板を出す女性。通りの向こうから甲高い悲鳴
三畳ほどの洋間と先程の和室。硝子障子を挟んで女性と少女
「あたしは店に出るけど、あんたは今日はもう休みな」
「有難う御座います」
「もし何かあったら遠慮無しにそこの壁にある内線電話を使って頂戴」
「はい」
「お休み」
「お休みなさい」




