A面マコトとマサキ
トラック。運転席に初老の男性、助手席に青年
「画家の卵に遇うなんて、ドライバー暦十五年でも初めてだ」
「すみません。勝手な事をお願いしてしまって」
「良いんだ、気にするな。若い内は他人に迷惑掛けて何ぼだから。自分も他人の事言えた人間じゃねえ」
「マサキさん、親切心を疑う様で恐縮なのですが、一つ質問しても良いですか?」
「おう。遠慮無く言ってくれ。出来る事なら何でもしてやる」
「どうして、見ず知らずの僕を乗せようと思ったのですか?放って置く事も出来たでしょうに」
男性は顎で無線機を指す
「そこの無線からお調子者にこんな事言われてな……」
青年を乗せる数十分前のトラック。運転席に男性
「道が混んできやがった。事故や検問の巻き添え喰らうのは御免だってのに」
無線機から雑音混じりの声。無線機を取る男性
『チャオ!ご機嫌いかが?』
――人が苛々してる時に何の冗談だ?
「餓鬼の悪戯に構っていられる程、今の自分は機嫌が良くねえんだ。他を当ってくれ」
『カルシウム不足?ムール貝でも食べて落ち着こうよ!』
「そんなものトラックに置いてる訳無いだろ。切るぞ」
『待って。冗談はさて措くよ。伝えたい事があるんだ』
「手短にな。イタめしの話だったら無言で切るからな」
『すぐ手元に地図ある?』
「ああ」
『まず、有料道路に合流するのを、すぐ先じゃなくて一つ先の地点にして』
「何故だ?」
『行けば分かるよ。そこにボストンバックと画材を持った青年が一休みしているだろうから乗せてあげて』
「どうしてそんな事が分かるんだ?お前は何者だ」
無線機から音が消える
「おい。全く。言いたい事言って切りやがったな。んん?ひょっとして向こうの縁石に座ってるのがそいつか?」
社員寮五階角部屋、六畳弱の洋室。男性と青年
「小汚い部屋だけど、妥協出来るか?」
「妥協なんてとんでもない、充分過ぎます。でも、社員でも無いのに寝泊りして問題無いのですか?」
「管理人の耄碌爺さんには遠縁の親戚を暫く預かっていると言って置いた。女連れ込んだら下種な勘繰りもされるだろうが、男同士なら何も言って来ないだろう」
「有難う御座います。何から何まで」
「これ位大した事ねえよ。それより、カーテン開けてみな」
青年、カーテンを開ける
「……綺麗な景色ですね」
「そうだろう。エレベーターもねえのにこの部屋に決めたのは、このオーシャン・ビューの為と言っても過言じゃねえ。どうだ、構想は浮かんだか?」
「それはもう、色々と」
「そいつは良かった」




