ふらり ふらり
初夏ともよべる季節になって、夜、散歩をするにはちょうどいい季節になってきた。
昼には温かく夜には肌寒かった時期も終わりを告げ、羽織るものも無しに、私は夜、静まり返った住宅街を歩く。
ほんの少し、ぺっとりとまとわりつくような空気に、梅雨がもうすぐそこまで来ていることを感じ取る。
それがすぎれば、夜と言えど蒸し暑い。
涼しく、のんびりといつまでも歩けるような気候は今を逃せば秋まで待たなければならない。
あてもなく、住宅街をさまよい、河原にでる。
堤防の上をのんびりと、今日はどっちに向かって歩こうかしら。
誰と話すわけでもない、何かをするでもない。ただ、ぼんやりと、心に浮かぶことをそのままに、消すでもなく深く考えるでもなく、ただただ思い浮かぶことを思い浮かべてひたすら歩いていく。
一人きりで、ほんの少し寂しいような。
それでいて、何にも患わされずに、ただ純粋に肌をなでる空気の流れが心地よいような。
いつまでもいつまでも、てくてくてくてくと歩いていたい。
そういう気持ちがふわふわと心の中で漂っている。
何も考えない時間。
歩き歩いて、私は、夜のつめたくもあたたかくもない空気の中に、そのままとけ込んでいく。