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クリスマス企画

時空を越えたプレゼント

相谷あいたに 恭介きょうすけ


百々とどめ 和趙なぎさ


多田ただ 弘太こうた


彼らは同じ小学校、同じ中学校に仲良く通い、今では同じ高校の同じクラス。

しかしこのように今まで一緒にいたけど口喧嘩が一回もないほど仲が良いし、

誰よりも信頼できる関係。

しかし今、その関係に相谷と百々海は恋人という関係が加わった。

なぜなら、百々海が入学式の夜になんの前触れもなく相谷の家の前に告白して、相谷がとっさに「はい」と返事してしまったからである。


 このような複雑な関係の彼らのクリスマスの前後に起きた日を書いた小説である。


町はクリスマスで盛り上がり、カップルはイチャイチャする季節。

僕らは意味もなく街を歩いていた。


「ねぇ。今年のクリスマスどうする?」


「っえ?」


僕はいきなりクリスマスのことを聞かれて戸惑った。

しかし一瞬でもうすぐクリスマスになるのを思い出した。


「そうだな……」


僕はクリスマスの予定を考え始めた。

カップルは普通、クリスマスの日は一緒に過ごすと聞いたことある。

つまり、和趙もそれを望んでいるに違いない。

じゃあ、一緒に過ごすとするか……しかし何処で?

……あ!? そういえば、親は今年のクリスマスは家に帰らないって言っていたはず。

しかも、毎年一緒にいた多田も部活があって忙しいって言っていたはず。

よし! いける!


「多田は部活で忙しい」


「相谷君!」


僕が「今年は二人で過ごさない?」と言う前に、百々海は少し頬を膨らませて僕を睨みつけて言う。

全く、最後まで人の話を聞いてほしいと思ったが、ここは我慢だ。


「ご、ゴメン。今年は」


「べ、別に怒ってなんかない……だって、相谷君は優しいから、多田君のことも考えてあげているのでしょ?……でも、少しぐらい私のことも考えてほしい。だってカップルだから二人でその……いや、そういう意味じゃなくて」


百々海がテレを隠すように顔を俯かせながら何か言っているのを無視して、


「今年は僕の家で12月25日にクリスマスパーティをしよう」


と笑顔で言った。すると、百々海は何かを言うのをやめて、驚いた顔をして僕を見た。

おぉ! これは効果てきめん! とっても分りやすい。


「多田は部活で忙しいし、今年も親は外出する予定だから、今年は僕の家で一緒にクリスマスパーティとかどうかな~て。ほら、それが彼女がいる人のクリスマスの過ごし方だろ?」


俺は高鳴る鼓動を押さえながら、キッパリと言った。それを聞いた百々海は少し顔を明るくして、


「分かった。約束ね!」


と百々海は指さしながら言った。


「それじゃあ、明日用の服でも買ってくるから、先に帰って。じゃあね」


百々海はそう言うと手を振りながら、走ってどっかに行ってしまった。

全く単純なヤツだ。それにしても買い物ぐらい手伝ってやるのに……それにしてもどんな服を着てくるのだろう。


あれ? 


ちょっと待て。

なぜ百々海のことを考えている? 

彼女のことを考えるのは普通だが、僕は好きで付き合っているわけではない。

だから、考える必要はない。

それなのにどうして最近、なぜ百々海のことを考える? 

もしかして、『恋』をしてしまったのか? 

いやいや、そんなハズがない。

僕はいきなりの告白にとっさに「はい」と答えてしまっただけ。


「…………………………あぁ~分からん!!」


僕は現実から逃げるように家に向かって走り出した。




次の日。




僕は自分の部屋で意味もなく外を見ながら、昨日のことを考えていた。

昨日の俺の気持ちについて。

するといきなり、いつの間にか家に来ていた多田が勝手に僕の部屋に入ってきた。そして満面の笑顔で相谷に近づいた。


「どないしたん?なんかあったんか?」


「別に」


僕はてきとうに答えた。

今は親友の質問より自分の気持について考えることの方が優先。

しかしそんな僕の気も知らないで、多田は勝手に笑顔のまま話し始める。


「分かった。彼女のことやろ? お前ら昨日もイチャイチャしてたらしいからな。それにしても、お前にはもったいないほど可愛い子やな」


前者には少しイラッときたけど、後者は嬉しい。

偽りのカップルかもしれないが、彼女が褒められるのは嬉しい。

さすが、長年一緒にいただけあるな。


「そうだ! 明日告ろかな~」


前言撤回。

僕はこの言葉を聞いた瞬間、なぜだが怒りと不安などのモヤモヤで一杯になった。動揺しながら、


「僕の和趙をとるつもりか?」


と冗談であってほしいと願いながら言った。しかし、その願いは届かなかった。


「もちろん、そのつもり。俺は和趙さんが好きや。お前はどないなん? お前は和趙さんが好きなんか? 言っておくが、俺にはそう見えん。告白されたから、付き合っているようにしか見えへん」


僕は慌てて言い返そうとしたが、多田が正論を述べていたので何も言葉が出てこなかった。

その結果


「ぁ、ぁ。ぁ……」


と言葉にならない声だけがでた。


「どうやら図星みたいやな。これで俺は告白することができる。明日、つまりクリスマスの日の朝の0時にお前が告白された場所であるこの家の前で告白する! お前も来いよ。じゃあな」


多田は見下すような格好して、ズバズバと言って部屋を出ていった。

そして部屋には沈黙が続いた。

僕は漠然と多田が出ていった部屋の入口を見ていた。




親は日が沈む前に出掛けて行った。

僕は親が出かけてから玄関の前で立ったまま待った。

現状の打開策を考えながら。



そして12月25日クリスマスまで残り数十分になった。



和趙ちゃんは不思議そうな顔をしながら、僕の家の前に来た。

いきなり、こんな時間に呼び出されたら誰でも不思議に思う。

しかし僕の顔を見て何かを察したのか、黙って多田が来るのを一緒に待った。

多田は残り数分前に来た。

そして始めた。


「和趙さん、いきなりこんな時間に呼び出してすいません。相谷もゴメンな」


僕だけついでのような言い方をするな! と言いたいが多田にとっては、僕は立会人程度にしか思ってないのであろう。


「単刀直入に言います。俺は相谷から和趙さんを奪う為に呼び出しました。俺は昔から和趙さんのことが好きでした。しかし、言いだすきっかけはあったけど、勇気がありませんでした。しかし、今なら言えます」


多田は熱く語り終わると、いきなり和趙の両肩を持った。

僕は多田の行動に一瞬で頭に血が上って動こうとした。

その時「お前はどないなん? お前は和趙さんが好きなんか? 言っておくが、俺にはそう見えん。告白されたから、付き合っているようにしか見えへん」という多田の言葉がよぎった。

もし、また同じことを言われたらどうしよう。言われる前に殴り倒すか? 無理だ。親友を理不尽に殴ることは出来ない。

色々と考えた結果、やっぱり無理だ。何もできない。答えることができない自分が怖い。


「付き合って下さい!!」


多田は和趙の顔をジーと見ながら言った。それはまるで答えを何分、何時間、何日でも待つような勢いだった。

和趙は僕に助けを求めるようにこちらを見ていた。

僕は完全に怯んで口を馬鹿みたいにポカンと開けてただ立っていた。

心の中では怒りと不安などのモヤモヤで一杯だったが、頭の中では色々とネガティブなことしか考えていなかった。

和趙にとっては多田の彼女になった方が良いのでは? 

自分は無力。

僕にとって和趙は高嶺の花。

多田が大軍を率いる武将なら、僕は足軽またはそれ以下である。

そんな足軽に出来ることはただ、流れに身を任せること。

自分が望まない結果であっても、これが現実。諦めるしかない。



僕はこの場から逃げたくなり、後ずさりして家に戻ろうとした。



その時、小さな滴が落ちたような気がした。

確認する為に振り向くと、目は湖のように潤んでいて、右頬はせせらぎのように涙が流れていた。

僕には涙の意味は分らない。しかしこれだけは分る。


……ここで家に帰るヤツは男ではない!! 

僕は口を噛みしめ、拳を握り締め、足のベクトルを変換させて、勢い良く飛び出した。

そして、その拳は多田の頬をクリーンヒットした。

多田は体を宙に浮かせて後ろに飛んだ。

そして着地地点は運良くゴミ袋の山であった。

その瞬間、今までの怒りと不安などのモヤモヤが奇麗に多田と一緒に吹っ飛んだような気がした。そして思ったことを口に任せて言った。


「百々海 和趙は僕の彼女。手を出すな!!!」


多分、近所に住んでいる人は確実に聞こえたであろう大声で言った。

それを聞いた多田はフンッと鼻で笑うと、


「お前の勝ちだ……」


と言った。すると、雪がチラチラ降りだした。

三人は意味もなく空を見上げた。

すると多田が、


「今まで雪が降ったクリスマスは無かったのにな、ハハハ」


と、苦笑いしながら言った。僕は苦笑いの意味が分らなかったので、


「なんで笑う?」


と聞いた。しかし、


「特に理由はない」


と適当に多田が答えた。すると、さっきまで黙っていた百々海が、


「それにしても久しぶりの3人きりだね」


と笑顔で言う。


「そうだな」


多田は少し笑顔で答える。


「このままもう少し3人で話そうか?」


僕が言うと、多田がお前はふざけているのか? と聞いてくるような顔をして、


「はぁ~? 何アホなこと言いよん? 早く和趙さんを家に入れてやれ」


と怒鳴った。僕は怯むことなく聞く。


「多田君、僕の家に来る?」


「いや。少し疲れた。だから、少し休んでから家に帰ることにする」


多田はまだ空を見上げたまま答える。


「分かった……和趙ちゃん、家に入ろう」


僕はそう言うと、和趙ちゃんの手を掴んで家向かって歩き出した。




そして家に入った。



「ゴメン」


頭を下げた。どんな罰があってもおかしくないないっと覚悟をした。


「え、えぇ~頭上げて。何で相谷君が謝るん? 私がきちんとしていれば、こんな事にならなかった。だから、謝るなら私の方。ごめんなさい」


和趙も同じように頭を下げた。その時、お互いの頭がぶつかった。

狭い玄関で二人が同時に頭を下げると当然ながら当たる。


「ご、ゴメン」


「私の方こそゴメン」


「いやいや、僕が悪い。ゴメン」


「いやいや、私が悪い。ゴメン」


お互いに謝り終わり顔を上げると何か面白く笑いだした。

そしてお互いに笑い終わると、


「和趙。言いたいことがある……面と向かって」


僕は真剣な顔をして和趙の顔を見た。和趙も真剣な顔をして真っすぐ見た。


「相谷 恭介は百々海 和趙のことが好きです。世界中の誰よりも好きです」


「私も……そういえば今日はもうクリスマスだね…………メリークリスマス!」


「え!?……あ、メリークリスマス!」


お互いに目を閉じて唇をつけた。

今、この時がとても幸せで楽しい。

好きな人の近くにいてとても幸せ。

そして今とても感謝している。親。親戚。友達などの僕を支えてくれている方々に。

彼らのおかげで、今とても幸せなのだから。

いや、もしかしたら今日はクリスマス。これがプレゼントと仮定すれば感謝する人はあの人。


「サンタサン、素敵なプレゼントありがとう」



相谷は呟いた。




一方その頃家の外では。




相谷と百々海が家に入るのを確認した多田は


「あの少年。本気で殴りやがって。あぁ~痛ぇ~」


と呟いていた。

すると、突然多田の前に青白い光が天を貫くように現れた。そしてその中から謎の少女が現れた。


『お疲れ様です。御祖父様に届けてくれましたか?』


奇麗な声で謎の少女が多田に質問した。多田は立ち上がりながら、


「もちろん、届けたよ。世界中の良い子に素敵なプレゼントを贈るのが役目だからね。しかし、本当にこのようなプレゼントで良かったの? 御祖父様の幸せな顔をみることがプレゼントで」


『えぇ~もちろん。御祖父様は、え~と、く、苦労人? だから。それより、御祖父様と御祖母様を仲良くしてしか言ってないのに、何? このシチュエーションは?』


「え~と雪のことか? ホラ、この場合雪が降っているほうが盛り上がるだろ?」


『あっそ。うまいことこのような展開に持ち込むほど賢い人かな?と思っていたら、馬鹿みたいなことをしだすし……』


「え? 褒めてくれているのかな? 子供達の為に働いているから嬉しいな」


『褒めてない。まぁ、しかしこれで御祖父様、喜んでくださるでしょうか?』


「さぁ~な、110歳過ぎた人が約1世紀前のことを思い出すかな~?」


『うるさい。御祖父様は御祖母様を最後まで愛して、御祖母様の為に働いて、世界有数の相谷財閥を作ったのに御祖母様は私が小さい時に先に逝かれたのよ。可哀想じゃない? ねぇ、そう思うでしょ? だから、私は昔の間に良い思い出を作ってあげようと思っただけ』


「良いと思うよ。過去の過去の改ざんはあまり良くないけど、これぐらいは大丈夫だろう」


『はいはい。そうですね。あなたと話していたら頭にくるから、帰る。じゃあね。メリークリスマス』


「メリークリスマス」


謎の少女はまた光の中に入っていった。すると、光は跡形もなく消えた。

多田は謎の少女を見送った後、


「さすが相谷財閥のお嬢様。きちんと挨拶をする。他の子は、サンタさんの存在を疑ったり、メリークリスマスをメリクリとか短縮するのに」


そう呟くと、軽く服を叩き、まるで忍者のような仕草でボール球の何かを地面に投げた。

すると、白色の煙が出てきた。しかし、その煙は十秒も経たないうちに消えた。

そして、その煙からは白い大きな袋を持った、白い髭が特徴の主に赤色の服を着た、太った男性が現れた。

その男性は天に向かってピーという高い音の唇を吹いた。

すると、空からはソリを引いたトナカイが現れた。

そのトナカイは男性の前を少し通りすぎて、ピッタリとソリを男性の前でとめた。

そしてその男性は、そのソリに乗ると「そりゃあ」と掛け声とともに手綱を叩いて空を滑りだした。


まるでサンタクロースのように。


どうですか?

この作品は、2013年に制作。

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