新領土と新戦力 ③
早く出来上がったので更新します。
大分盛りました。
二本松と鳥居らの会談は、その他の艦の艦長らとともに行われることとなった。しかし、集まった艦長らしい人間は鳥居を含めて3人だけで、他に3人の粗末な服を着た男らが、二本松たちの前にあらわれた。
「そっちの3人は?」
二本松が鳥居に3人の素性について聞くと、彼は困った顔をした。
「ああ。3隻の護衛空母の責任者・・・て言えばいいのかな?」
「どういうことだい?」
「いや、俺もよくわからんのだ」
「はあ?」
どうも要領を得ない。すると、当の男たちの内の一人が口を開いた。
「私は、元空技廠に所属していた坂卓実大尉です。こっちは元中島飛行機の広彦之助技師です。私は護衛空母「インディゴ・ベイ」に。彼は「サスケハナ」に乗艦していました」
「で、君たちがその護衛空母の責任者と言うのはどういうことだ?」
「それが、自分たち以外の人間は消えてしまったんです」
「消えた!?」
坂の言葉に、二本松は素っ頓狂な声を上げた。
「私たちは昭和20年10月に、東京を出港してアメリカのサンディエゴに向かいました。ところが、ミッドウェー諸島付近に差し掛かった際に、突如として嵐に遭遇しました。私は船室にいたので、よくわかりませんが、しばらくすると突然嵐が止んで、艦は停止していました。部屋から出ると、先ほどまでいたはずの乗員が誰一人おらず、そして甲板に出ると、同じく漂流する「サスケハナ」と、近づいてくる鳥居海将補らの戦隊と、安久中佐たちが乗った「レンネル」が見えたんです」
「ちょ、ちょっと待った!さっき鳥居は昭和27年て言ったよな?じゃあなんだ、鳥居と坂大尉、それに・・・安久中佐でいいのかな?とにかく、君たちはそれぞれ別々の時間から同じ場所に現れたわけか?」
「そう言うことだな。俺も最初聞かされた時は信じられなかったが、実際に乗り込んで見たら、信じずにはいられなかったよ」
「ふむ」
二本松はついこの間の樺太と沖縄からの避難民について思い出す。あの時も、違う時間と場所にいた人間が同時に出現している。
この世界に地球からどうやってやって来るかのメカニズムは未だに不明ながら、場所も時間も全く違う所から皆現れている。強いて共通項を挙げるとするなら、戦争或いは軍隊に関係している人々だということだろうか。
「鳥居は一体どこからだ?」
まずは一番話しやすい鳥居に聞いてみる。
「俺たちは昭和27年6月に、アメリカから供与された艦艇を受け取って、サンディエゴから経由地のハワイへ向かっていたんだ。その途中で嵐に遭遇してな。それを抜けたら、目の前に漂流している3隻を見つけたんだ。天測すると位置はアメリカ大陸の上だし、意味の分からん信号を拾うわで、とにかく何かトンデモナイ事態に陥ったのだけはわかった。とりあえず、航行不能の3隻と連絡付けて、曳航を開始しようとしたら、お前からの電文を受け取ったんだ」
「アメリカからの供与か。それはさっき言った海上自衛隊と関係あるのか?」
「そうだ。海上自衛隊は戦後創設された海防組織だ」
戦後と言う単語に、二本松は反応する。
「戦後・・・ということは、あの戦争は負けたか」
「ああ。昭和20年8月15日にポツダム宣言を受託してな。日本は無条件降伏した。負けだよ、負け」
「そうか。やっぱり負けたか」
鳥居の言葉に、二本松は複雑な心境となる。これまでも、トラ船団が消えた後の戦況などは、その後やって来た人々によって伝えられていた。マリアナ諸島が陥落して本土空襲が本格化し、沖縄は占領され、同盟国のドイツは降伏し、終にソ連までもが宣戦布告した。
そんな絶望的な戦況で、負けるなと言う方がおかしい。政府と軍上層部は本土決戦の上での一億玉砕を唱えていたというが、本当にそこまで行くかは二本松としては甚だ疑問であった。
「あんまり驚かないんだな?」
「まあ、勝てるような甘い状況にはないことはわかっていたからな。本土が空襲されて、ドイツも降伏。ソ連までもが宣戦布告するようじゃな」
「お前!どうしてそのことを!?」
今度は鳥居が驚く番だった。戦時中に行方不明になった彼が終戦間際までの戦況を知っているはずがないからだ。
「それについては追々話すさ。で、戦争が終わってから海防組織が再建されたのはわかった。しかし、それがなんで海軍ではなくて、海上自衛隊なんて珍妙な名前になったんだ?」
「我が国はポツダム宣言の受託により、戦後軍の解体と占領軍による占領を受けることになった。で、その占領軍の指導で終戦翌年には憲法が改正されたが、その新憲法の9条で我が国は戦争の放棄と戦力の不保持を宣言したんだ」
「何?戦争の放棄はいいとしても、戦力の不保持?それじゃあ国防の戦力も持てないってことになるんじゃないのか?」
すると、鳥居は苦笑しながら答える。
「厳密に解釈すればそうなるんだろうけど、一応自衛権は放棄してないってことで、海上自衛隊、ちょっと前までは海上警備隊ていう名前で再建されたんだ。軍隊ではなくて、あくまで国を侵略から守るためだけの警察力の延長ってことだ」
「また面倒くさいことだな・・・しかし、軍隊を解体しながら、意外と早く再建されたんだな?占領軍はもう撤退したってことか?」
「いや、撤退したのはついこの間さ。去年サンフランシスコで講和条約が締結されてな。それまではずっと、GHQ、連合軍総司令部が日本にいたよ。再軍備はその占領期間中に始まったんだ。それもこれも、赤どものせいだな」
「ソ連か?」
「ソ連だけじゃなくて、中国と朝鮮もだけどな」
「何!?」
鳥居の話によると、終戦間際に日本へと侵攻したソ連は、樺太と千島全島を占領、さらには北海道まで進軍する勢いだったらしい。結局北海道侵攻は米軍によって阻止されたが、代わりに彼らが雪崩れ込んだのが、朝鮮半島であった。
ソ連は日本がポツダム宣言を受け入れた後も、正式な条約が結ばれていないこと、さらには朝鮮系共産勢力の要請による朝鮮半島の秩序維持を盾に、米軍が提案した北緯38度線を越えて南下した。そして米軍が上陸したために北緯36度線でようやく停止したが、米の再三再四の抗議に関わらず、撤退しようとしなかった。
その後朝鮮半島は北緯36度線で分断され、北にソ連支援の朝鮮民主主義人民共和国、南にアメリカ支援の大韓共和国が成立した。
さらに中国では日本の降伏後内戦が再開。満州に侵攻したソ連軍から膨大な装備(ソ連からすると旧式化していた装備)を譲られた共産党軍は、対照的にアメリカからの援助を減らされていた国民党軍をたちまち駆逐し、国民党軍は辛うじて日本から奪い返した台湾を維持するだけとなり、大陸には中華人民共和国が成立した。
これが昭和23年初めごろまでの情勢であった。
こうした事態に慌てたGHQは、占領政策を一気に転換して、日本国内における反共政策を打ち出しつつ、非軍事化を中止して、日本に再軍備を命令した。昭和23年の冬に始まった朝鮮戦争もそれを後押しした。
特に朝鮮戦争は、あっと言う間に韓国軍が釜山まで追い詰められ、なんとか日本本土から派遣した米軍部隊で食い止めているという状況であるらしい。このため、日本の再軍備が改めて急がれた。
「だから一度海軍軍人をお役御免になった俺にも引き抜きの話が来てな。すぐに志願したよ。階級も海将補、海軍風に言えば少将になったしな」
「そりゃあエライ出世だな。失礼いたしました、閣下」
「よしてくれよ」
二人は軽く冗談を交わして笑い、緊張感が漂っていた場を和ませる。
「でも格好や装備はアメリカ式だな」
「仕方がないのさ。旧軍の装備は終戦後に破棄されたり、損傷が激しかったりしたからな。一部は加えられたけど、本当に一部で、足りない分はアメリカから供与されたもんだよ。ま、それも戦闘艦艇は軽巡まで。空母も護衛空母で、戦艦や正規空母はないけどな」
鳥居がどこか寂しそうに言う。つい数年前まで、戦艦や空母などを有し、世界第三位の海軍に所属していた人間としては、最大艦艇が軽巡で、空母も商船タイプの護衛空母では、致し方ないことだろう。
ただ二本松としては、その気持ちに同情できたが、同時にアメリカの意向も充分に察せられた。
「まあ、ついこの間までの敵に早々強力な兵器渡せんわな。俺だってそう思う・・・けどそうなると、供与艦艇はこの軽巡と小型空母に、あの平たい・・・」
「LST、戦車揚陸艦だな。一応俺たちはそれぞれ大型警備艦。航空機搭載警備艦、輸送艦と呼んでる。艦名は平仮名表記で「ちくご」、「つるぎ」、「ちた」だ」
鳥居がわざわざ艦名は平仮名表記と言った。その点に、二本松は突っ込まなかった。海軍を名乗れず海上自衛隊と名乗っている辺りで、大体予想できることであった。
「そうなると、残る3隻の小型空母は海上自衛隊の艦じゃないってわけか?」
「そうだ。後は彼らから聞いてくれ」
海自艦艇に関しての説明を終えた鳥居は、話を残る坂大尉たちに振った。
御意見・御感想よろしくお願いします。
共産主義の波が史実よりも激しく、そんなバカなと思われるかもしれませんが、フィクションなので許してください。
繰り返しますが、この世界の戦後情勢は完全なフィクションです。




