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新領土と新戦力 ①

御批判もあるかと思いますが、よろしくお願いします。

「それでは、民政長官に副司令。留守の間よろしくお願いする」


 マシャナ艦隊による奇襲から1カ月後、瑞穂島の港から沖合に停泊する巡洋艦「蔵王」に向かうランチが桟橋につけられ、日本国の最高司令官である寺田がそのランチに乗り込もうとしていた。


 そして桟橋には、彼を見送るため加藤民政長官に長谷川副司令、大石参謀長など日本国の主だった幹部が集合していた。


「寺田閣下、どうかよろしくお願いします。今回の交渉で、日本国の運命が大きく変わりますので」


「わかってるよ、加藤さん」


 寺田の手を握りながら、加藤は深々と頭を下げる。


 この4週間前、ついにエルトラントのマシャナ軍は全面降伏し、エルトラント奪回作戦は日本国、メカルク、フリーランド、エルトラント連合軍による勝利で幕を閉じた。


 避難していたエルトラントの王室並びに政府は、首都のマバタに帰還し、国家の再建に向けて動き始めていた。


 今回寺田は日本国のトップとして、同国の国王をはじめとする首脳陣を訪問することになっていた。表向きは同国の奪回がなったことへのお祝いと、改めて同盟関係であることを確認するとなっていたが、それとともに事前に結ばれた密約の再確認の意味もあった。


 エルトラント奪回作戦が始まる前から、日本国はエルトラント王国政府と秘密裏に接触していた。そこで決定されていたのは、何をもってしてもエルトラント全土の奪還であり、エルトラントによる日本国の承認であった。そして、奪還成功後には日本国との間に軍事援助条約を締結するとともに、同国の北東部の諸島の一部を日本国に割譲することとなっていた。


 軍事援助は、言うまでもなく国土を回復したとはいえ、軍事力が壊滅してしまっているエルトラントの防衛を日本がフリーランドなどともに肩代わりするのである。これは現状、日本国が軍事力以外にエルトラントに提供できる材料がないためだ。この代償として、日本はフリーランドやメカルクと同じようにエルトラントと交易を行う予定になっている。


 一方領土の一部割譲は、エルトラント奪回作戦に協力したことへの見返りと言う形で、日本側からの求めで行われる案件だ。


 これは現在日本国の領土が瑞穂島と紺碧島しかなく、避難民の受け入れなどで大幅に増えている国民の居住地を確保するのが狙いであった。そうでなくとも、瑞穂島には元からの住民がおり、今後の開発などに大きな制限があったのも理由である。


 この領土割譲は、エルトラントだけでなくフリーランドやメカルクとも幾度となく交渉を行うとともに、日本国がエルトラント奪回作戦に積極的に関わった末に得られたものである。つまりは、日本国人が直に流した血と汗と涙、世界において発揮された圧倒的な軍事力、そしてそれらによって得た信義にもとづくものなのだ。


 そしてその詳細を詰めるために、最高司令官である寺田自身がエルトラントに赴いて会談を行うのである。当然ながら、その事情をわかっている最高幹部の面々は、寺田たちに大きな期待を抱いていた。


「じゃあ行ってくる!」


 と見送りの人に片手をあげて気さくに言う寺田の声は、すぐに聞こえてきたバイクの音によって遮られた。


「総司令官!緊急事態であります!」


 走ってきたのは伝令のサイドカーだった。


「何事か!?」


「総司令はこれから重要な交渉のために出発されるのだぞ!」


「それは小官も承知しておりますが、内容が内容なだけに!」


 降りてきた伝令の下士官の必死の形相に、寺田の顔色も変わる。


「何が起きたのかね?また敵襲かね?」


「いえ、敵襲ではないのですが、通信所がフリーランドの大使館より総司令部宛に発信された緊急電を拾いまして」


「フリーランドから?」


 フリーランドと日本国は現在外交関係を樹立しており、大使館も設置されていた。その大使館から総司令部宛に緊急電ということは、ただごとではないことを意味していた。


「こちらが電文です」


「フム・・・」


 寺田は電文を読み通すと、顔をしかめた。


「こんな時にか」


「総司令、一体なにごとです?」


 長谷川副司令に、寺田は電文を渡す。


「フリーランドの領海内に空母が出現した。しかも複数で。詳細は不明だが、どうやら地球のふねらしい」


「何ですって!?」


 どうやらまたも、この世界に何者かが飛ばされてきたらしい。


「既に二本松大使が動いているようだが、長谷川副司令、大石参謀長らと協議して至急対応にあたってくれ。私は予定通り出発する。交渉を先延ばしにするわけにはいかんからね。結論が出たら、電文で送ってくれ。もし緊急に決定が必要であれば、私に構わず指示を出してくれ」


 寺田としては、やってきた何者かが日本人であれば、日本国に編入したい。しかし自分が今から行こうとしているエルトラントとの会談も、日本国の今後の運命を決めるだけに中止にはできない。


 そのため、彼は信頼できる長谷川や大石に事態を委ねることにした。


「わかりました」


「善処いたします」


 長谷川と大石は、敬礼した。彼らは寺田の見送りを切り上げて、すぐに動き始める。


 長谷川にしても大石にしても、この世界で新たな日本人の出現は慣れっことは言わないまでも、未知の事態ではない。すぐに頭を切り替え、その対策に動き始めることができた。


 



 フリーランドは、地球で言えばアメリカ合衆国(とカナダとメキシコの一部)が位置する場所に存在する連邦共和国だ。ただし、アメリカとは違って一つの大陸にあるのではなく、複数の島嶼からなる国々で、面積だけで言えばアメリカ合衆国よりはずっと狭い。連邦を構成する各共和国は直接国境を接している部分は少ないものの、航路や空路、海峡で接近している所では鉄道橋や道路橋でつながっている。


 連邦首都は連邦のほぼ中心部に位置するアルカデア島にあるニューボリスである。そしてその連邦首都に、日本国大使館が設置されていた。


 もっとも、大使館と言っても常駐している日本人は3人だけである。それも外交官は皆無で、大使である二本松英輔は日本国海軍大佐であった。なお、日本国海軍では人手不足から昇進を乱発しているので、彼も大日本帝国海軍時代の階級は中佐である。


 そんな彼が大使館の大使にされたのは、戦前の一時期大使館付武官にあったからだ。残る二人の大使館員にしても、海外への渡航経験がある船員などから選抜されていた。


「そういうわけで、可部中佐。出張中の間留守をお願いする」


「わかりました。大使」


 二本松大使は、本国(瑞穂島)からの命令を待つことなく、大使館の業務を船員出身の部下である可部中佐に任せると、さっそく出現した艦艇の確認のためにニューボリスを出発した。


「にしても、何でまたこんな所に!」


 フリーランド軍からの通報では、出現した艦艇のうち何隻かは航行不能であるとの情報も入っていた。位置はフリーランドの南部内海であるとのことだったので、早急な対応が求められた。


「頼むから早まったマネはしないでくれよ」


 フリーランド側が用意してくれた旅客機の中で、二本松がまず心配したのはその点であった。


 この世界にやってくる日本の艦船は、それぞれバラバラの時期や場所から飛ばされてきているが、全体的に大東亜戦争中から来ている場合が多い。そうなると、彼らは当然自分たちは戦時下の戦闘海域にいると思い込んでいる。


 そのため、目に入ったフリーランドの艦船や陸地を敵と判断して攻撃しないとも限らない。現在までのところそうした事故は幸いにして発生していないが、今回は場所がフリーランドの内海だけに起こりえる事態であった。


 なおフリーランドの内海とは、同連邦の領域内に広がる海である。逆に領域外の外洋を彼らは外海と呼んでいた。


 フリーランド国内において、二本松たち日本人は自力での移動手段を持たない。フリーランド国内の公共交通機関や、同国が提供する交通手段に頼るしかない。


 当然その間は情報を受け取ることも発信することも自由にはいかない。受け取ることも発することも、フリーランドを間に挟んでやるしかない。


 だから情報が入ってこないため、二本松は大いに気を揉んだ。


 ニューボリスから丸半日かけて、鉄道や飛行機を乗り継いでやってきた海軍基地で、ようやく二本松はフリーランドの軍人から、不明艦艇の情報を断片的に得ることができた。


 それによると、不明艦艇は5~6隻で、この中に空母が含まれている。そして、洋上に停止している。今の所接近した航空機や艦船との戦闘は起きていない。


 フリーランド海軍は現地へ艦艇を派遣して、翌日朝頃に接触を試みる予定という。


 衝突が今の所起きていないのは幸いであったが、早急に正体を掴まないと危ない可能性がある。瑞穂島の総司令部もそれを危惧したのか、大使館経由の電文では、可能であるならば早急に接触するべしという命令を送り付けてきた。


 こうなると、二本松としても次なる行動を起こすしかなかった。彼はフリーランド海軍に掛け合い、電信にて不明艦艇との連絡を取り合うことにした。


「念のため持ってきたが。役に立つかね?」


 二本松は電信機の座席に座ると、カバンから冊子を取り出した。

 御意見・御感想よろしくお願いします。


 転移の続発は読者の方々にも賛否両論あるかと思いますが、この部分は以前書いていた二次創作から引き継いでいる部分なので、作者としてやりたいように行きたいと思います。生暖かい目で見ていただければ幸いです。

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