9話 聖剣を装備しよう
ここで、サリアの町の近辺がどのような地形になっているか説明しておこう。
まず、サリアの町の規模は住民は駐留している騎士、兵士を合わせても500人ほどと、かなり小さい。しかも、一番近くの他の町までは徒歩で3日もかかるなど、交通の便も悪い。
西は標高1500メートルを誇るサリア山、東北南はサリアの森という広大な森に囲まれており、東に森を突き抜けていくと、サリア平原という広い平原に出る。
今、僕たち、魔物討伐隊はそのサリア平原とサリアの森の境界あたりに留まり、魔物の襲撃に備えていた。
前方にはトールが率いる、投擲術を除いた武芸系統スキル持ちの42人。
そして、後方にはティオナや僕がいる、後方支援部隊が80人前後。後方支援部隊の中には、武芸系統スキルを持たない騎士、兵士以外にも魔法士が20人。
これが基本の布陣となり、僕たちは見通しの良い平原で5000もの魔物たちを迎え撃つことになった。
こうした方が、森の中で戦うよりも魔法士による支援を受けやすいからだ。
「ここが、今から戦場になるんだ・・・」
平原は至って静かで、今、ここへと5000もの魔物の大群が迫っているなど思えなかった。でも、事実、魔物たちはここに近づいてきているという。斥候部隊や、魔法士が魔物の進行速度を計測した所、あと一時間で戦闘が始まるだろうという。
それでも、実際には目の前では至って平和な光景が流れており、僕はまだ、気を引き締めることができなかった。
と、そんな時、隣にトールがやってきた。
「おい、ユリウス」
「あ、父さん」
「そんな風にボケッとしてると、戦場ではすぐに殺られるぞ」
「うん・・・」
「どうした?心配か?」
「うん、いくつか策は持ってきたけど、これで本当に僕は生き残ることが出来るのか、エリスを置いていかなくても済むのかが心配で」
「何、大丈夫だ。俺の息子がやることにハズレがあるわけないだろう。だから、胸を張れ」
トールはそう言うと、ニッと笑う。
命がけの決戦を前にして、すがすがしいほどの笑みだ。そして、このトールの笑う顔を見ていると、本当に大丈夫な気がしてくるから不思議だ。
それでも僕の不安な表情は消えきっていなかったのだろうか、トールは腰からさっきも手渡そうとした、一般の剣を鞘ごと抜くと僕に差し出した。
「・・・これは?」
「これは、バラージ家に代々伝わる2本の宝剣の一本、レーヴァテイン。これをそうびした者は、かなりステータスが底上げされる特徴があるはずだ・・・まぁ、俺には使いこなせなかったがな。だが、お前なら大丈夫だと思う」
トールはそう言うと、僕にレーヴァテインを押し付けた。
「ありがとう、父さん」
僕は素直にレーヴァテインを受け取る。
そして、少しトールが言った「特徴」が気になったので、こっそりと看破を使い、レーヴァテインのステータスを表示させてみた。
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聖剣レーヴァテイン(材質:オリハルコン)
レア度:UR
要求STR値: ―――
効果
1、所有者のSTR、DEF、AGIに+1000
2、所有者の最大MPを―500(満たせない場合は効果1と2は無効化される。また、減った最大MPは、この所有者から外れると復活する)
所有者:ユリウス・バラージ
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(レア度、UR?!)
僕はそこに記されていた、レーヴァテインのステータスを見て心の中で驚きの声を上げた。
武器をはじめとした装備品には、レア度という物が設定されている。
もっとも、その装備品が、どれだけのレア度を持っているかは「看破」が無いと分からないし、神様に聞いたところ「看破」を持っているのは、人口の1万分の1ぐらいの人数らしいので自分で見分けられる人はそう多くは無いだろう。
装備品のレア度は、低い方から「N」<「HN」<「C」<「R」<「HR」<「SR」<「UR」<「LR」となっていて、URやLRの装備品ともなれば、それは世界に1個しか無い、「ユニーク装備」となる。
つまりは、これは世界に1個しか無い剣であって「聖剣」という大層な名前でもおかしくないぐらいの強さを誇っているのだ。
そして、驚異的なのはその効果。
ハッキリ言おう。これは「底上げ」などではなく、「肉体改造」だ。僕がこれを装備しただけで、ステータス上ではトールに余裕で勝ててしまう。
莫大なMPが必要なのはネックだが、僕にとっては500ぐらいなら総MPの半分なので、問題ない。
僕は試しに、銀色に輝くレーヴァテインを装備したまま、自身のステータスを開いてみた。
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ユリウス・バラージ
種族:ハーフエルフ
レベル1
HP:80/80
MP:510/510(1010ー500)
STR:1048
DEF:1043
INT:210
DEX:210
AGI:1073
LUC:310
スキル:「神通」「看破」「ステータス吸収」「スキルコピー+」「アイテムボックス」「ステータス隠蔽」「幸運」「剣術+3」「無詠唱」「加熱」「冷却」「槍術+」「弓術+」「身体能力強化+3」「精神力強化+2」「遠見+3」「棒術+」「装備強化+3」「付与+」「徒手格闘術+2」「投擲術」
魔法適性「火」「水」「地」「風」「光」「闇」
称号:「魔導の申し子」「神性者」「模範者」
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「・・・」
はい、またまた飛躍的に強くなりました。
って、僕まだレベル1なのに、何でトールよりも全体的にステータスが高いの?!
・・・もういいや。どうせ、僕は人外の存在ですよ。えぇ、神様にも半分人間じゃないとかって言われたし。
「・・・おい、ユリウス?どうした?」
「ううん。父さん、何もない」
「・・・そうか。まぁ、何もないのならいいんだが。・・・それじゃあ、そろそろ俺は前線の奴らの所に戻る。お前も早めに持ち場に戻れよ」
そう言うとトールは前線の方へと歩いて行った。
「・・・はぁ、僕も戻るか」
僕もトールに言われた通り、自分の持ち場に戻ろうとしたその時、前線の配置されている所からさらに遠くの平原から、その怒号は聞こえてきた。
『ギャアアアアアアアァァァアァァァアアアア!!!』
そのあまりの迫力に地面が揺れた。
僕は咄嗟に声が聞こえてきた方向に「遠見+++」を使う。
そして、僕が見たのは、数えきれないほどの異形の存在達。
5000の魔物の群れだった。
はい。結局、戦闘はしませんでした。申し訳ありませんm(__)m
ですが、次回こそはっ!絶対に戦闘させますので!(笑)
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