3話 ステータスを覗いてみよう
僕の魔法の才能を測るために王宮から派遣されてきたという魔法士は、若いエルフの女性だった。
あぁ、やっぱりエルフって美形が多いのか、この人もうちの母親とまでは行かないが、かなりきれいな顔だ。
僕がティオナのそばに来た時には、ティオナとその女性が何やら立ち話をして盛り上がっていた。話の内容を聞くからに、どうやら二人は元同僚らしい。
これは今、彼女達の話から知ったことだが、ティオナは少し前までは宮廷魔法士の幹部に居座るほどの実力者だったそうだ。で、その息子である僕は国から魔法士としての才能を大きく期待されているんだとか。しかも、父親であるトールも武芸の腕は凄腕で、そんな二人の間に生まれた僕は将来を大きく期待されているそうな。一部の貴族達の間では、もうすでに自分の娘を僕の嫁にしようと画策している者もいるんだとか。
って、一歳にしてすでにこんなことになるとか、どんだけチートなんだよ僕。
と、その時ティオナと話していた女性が僕に気が付いたようで、朗らかに笑いかけてきた。
「あら、あなたがユリウス君ね?」
うぐっ、良い笑みじゃないか・・・でも、こちとら心だけは十七年は生きたんだ。それなりの我慢ってものはできるはず―――
「ねぇ、ティオナ、ユリウス君、抱いてもいい?」
「えぇいいわよ」
結局、僕は嬉々としてエルフの女性に抱っこされました。
いや、だってね?これは男としてしょうがないと思うんだ。どんだけ年が離れていようが、綺麗な人と触れ合える時は触れ合いたいと思うのが普通だと思うんだよ。・・・えっ?僕の年齢ではそれは普通じゃない?そんなの知るか。
「本当にいい子ね」
「それよりミラ、そろそろ魔法の才能の検査をして王宮に報告しなくちゃいけないんじゃないの?」
「えぇ、そうだったわね」
エルフの女性―――ミラさんはそう言って僕を地面に降ろした。・・・胸はうちのティオナといい勝負だったな。
僕が一人、ボーッとしている間にミラさんは持ってきていた鞄から一つの水晶玉を取り出した。
「さぁ、ユリウス君。この水晶玉に手をかざしてみて?」
僕は言われるままに水晶玉に手をかざした。水晶玉はまるで僕に反応するかのように、その中に複数の色を映し出した。その色は「赤、青、黄、緑、白、紫」の六色。
「「―――っ!?」」
そして、それを目の当たりにしたティオナとミラさんは絶句。
・・・あれ?どうしたの?
「ティオナ・・・!」
「・・・うん。六属性・・・すごいわ!ユリウス!」
ガフッ!
僕は突如としてティオナに抱き付かれた。
うぐっ!苦しい!豊満な胸のせいで息が、息がぁああああ!?
「ちょ、ティオナ!落ち着いて!ユリウス君、死にかけてるわ!」
「・・・!ごめんなさい。気が付かなくって。でも、本当にすごいわユリウス!あなた、六属性すべての魔法の才能があるのよ!」
・・・へ?
「本当にすごい!こんなの、確か百年ぶりだわ!」
え、えぇ?!
まさか、神様が言ってた「無双できるぐらいには強くなれる」って、こういう事?!
いや、いくらなんでもやり過ぎでしょ!百年ぶりとか、どんだけチートなんだよ!?
僕が一人心の中でツッコミを入れていると『おっほっほ』突然、聞いた事のある笑い声が頭の中に響いた。
『久しぶりじゃの』
『まさか、神様ですか?!』
『そうじゃ』
間違いない。この、無駄に朗らかな声は神様の物だ。僕は、心の中で神様と会話を続ける。
『いきなりどうしたんです?』
『いや何、一年ほど君から連絡が来なくてな、心配してこっちから連絡したんじゃよ』
『いや、連絡が来ないも何も、僕、どうやってスキルを発動できるとか、まだ教えてもらってなかったので連絡の取りようが無かったんですよ』
『おぉ、そうじゃったの。うっかりしておったわ。テヘペロ』
『神様みたいなおじいさんがテヘペロをしても気持ち悪いだけです』
『おっと、手厳しいの。・・・まぁ、そんな事はよい。それじゃあ、わし自らスキルの発動方法を教えるとするかの』
『・・・え?いいんですか?神様って、よくある話では、地上に干渉できないとかあったと思うんですけど?』
『何を今更。お主をその世界に転生させた時点である程度は地上に干渉してしまっておる。あと、一つ二つの例外、どうにでもなるわ』
いいのか?!そんなにアバウトでもいいのか!?
僕は一瞬そう叫びそうになるも、止めた。本人が言っているのだし、大丈夫なんだろう・・・多分。
『ではまず、心の中で『ステータスオープン』と念じるのじゃ』
僕は素直に神様に従い、「ステータスオープン」と念じる。
すると、僕の視界の端に何かが表示された。近くで興奮気味に会話している二人が気が付かない事から、僕の視界に直接映っているのだろう。
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ユリウス・バラージ
種族:ハーフエルフ
レベル1
HP:20/20
MP:1010/1010
STR:10
DEF:10
INT:210
DEX:210
AGI:10
LUC:10
スキル:「神通」「看破」「ステータス吸収」「スキルコピー」「アイテムボックス」「ステータス隠蔽」
魔法才適性「火」「水」「地」「風」「光」「闇」
称号:「魔導の申し子」「神性者」
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『どうじゃ?ステータスは見れたかの?』
『いえ、はい。見れたのは見れたのですが』
『どうした?何か問題でもあったのか?』
『これ、すでにチート化してません?』
『何を今更驚いとるんじゃ。お主を送り出す時に加護を付与したじゃろう。わし自ら付与した加護じゃからな。お主に付与したものは比較的効果が低いものとはいえ、それぐらいになるのは当たり前じゃ』
すげー!神様、やっぱりスゲー!これで比較的効果が低い物とか、どんだけチートなんだよ?!
『まぁ、そんなことは今はどうでもよい。ステータスがオープンしたなら、そこにいくつかスキルとか、称号とかあるじゃろう?それを一つずつ確認してみるのじゃ。ちなみに、確認するときは、さっきのステータスを確認した時みたいに、ステータスを表示させた状態で確認したいスキルや称号に視線を合わせ続けるのじゃ』
そう言われた僕は実際にやってみる。
そして、自分が習得していたスキルと、称号を一つずつ確認していった。
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「神通」:神様との会話が可能になる
「看破」:すべての存在のステータス閲覧が可能になる
「ステータス吸収」:体が触れている生物からステータスの一割を吸収できる。これは、一つの生物につき、一回しか執行できない。
「スキルコピー」:体が触れている対象からスキルを一個だけコピーできる。これは、一つの対象につき一回しか使用できない。また、対象がどんなスキルを持っているかを知っていないと使えない。
「アイテムボックス」:MPに容量を依存する空間を所持し、持ち物を保管できる。
「ステータス隠蔽」:自身のステータスを公開するさい、名前、レベル、種族以外の欄を偽装できる。
「魔導の申し子」:取得条件・・・六属性魔法の適性を全て所持。
効果・・・MPに1000、INT、DEXに200の補正。
「神性者」:取得条件・・・不明。
効果・・・神通、看破、ステータス吸収、スキルコピー、アイテムボックス、ステータス隠蔽、六属性魔法の適性全てを付与。
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『どうじゃ?確認したかの?』
『一応、全部確認しましたよ』
『で?どう思った?』
『やり過ぎだと思いました』
『そうかの?』
『そうですよっ!もう軽く、人間やめられるレベルじゃないですかっ!?』
『まぁ、もうすでに一回死んでおるからの、それにわしと会ってる時点で、半分人間やめた状態じゃしの』
『何、嬉々として衝撃の一言をサラッと言ってるんですか?!』
なにこれ。何だか、自分が何なのか、分からなくなってきたよもう。
『それじゃあ、次はいよいよスキルを発動してみるのじゃ。そうじゃの・・・とりあえず、お主の母親に看破を使ってみるのじゃ。スキルを使う時は、使用条件を満たしたうえで、スキル名を強く頭の中で念じてみるのじゃ』
はいはい。もういいですよ・・・もう、僕は人間じゃないってことで・・・ってあれ?よく考えたら、今僕はハーフエルフだから、そもそも人間じゃないのか・・・?
えぇい。そんなめんどくさい事はどうでもいい!
僕は神様の助言に従い、ティオナの方を向きながら、「看破」と念じた。
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ティオナ・バラージ
種族:エルフ
レベル49
HP:267/267
MP:261/261
STR:203
DEF:198
INT:429
DEX:378
AGI:221
LUC:350
スキル:「リジェネレイト+3」「幸運」
魔法適正:「水」「風」「光」
称号:「魔導の探究者」
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おぉ、自分のお母さんのステータスって、こうなってたのか。
『どうやら、自分の母親のステータスを覗くことができたようじゃな』
『はい』
『では、試しにその中から一つ、スキルをコピーしてみるのじゃ』
はいはい、了解です。
僕は、ティオナに寂しい風を装って抱き付いた。
ティオナも僕を受け入れるように抱き返してくる。豊満な胸に顔がうずまる感覚。
あぁ、至福のひと時だ・・・
『・・・おっほん』
あー、もう分かりましたよ。ちゃんとまじめにやります。
僕はティオナに抱き付いたまま、頭の中で「スキルコピー」と念じた。すると、頭の中に少し無機質な声で「この対象のどのスキルをコピーしますか?」と響いたので、今までの感覚で「幸運」と念じた。
すると、「スキルを対象からコピーしました」と頭の中で再び声が響く。
僕は急いで自分のステータスを開いた。
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ユリウス・バラージ
種族:ハーフエルフ
レベル1
HP:20/20
MP:1010/1010
STR:10
DEF:10
INT:210
DEX:210
AGI:10
LUC:310
スキル:「神通」「看破」「ステータス吸収」「スキルコピー」「アイテムボックス」「ステータス隠蔽」「幸運」
魔法才適性「火」「水」「地」「風」「光」「闇」
称号:「魔導の申し子」「神性者」「模範者」
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おぉ、なんかスキルが増えてる。・・・同時に称号も増えているが、今のところは無視でもいいだろう。
『おっほっほ。どうやら、スキルをコピーすることが出来たようじゃの』
『はい、何とか成功しました』
『うむうむ、良きかな。これで、スキルの使い方も分かったじゃかろうかて。わしはここらへんで失礼することにするかの』
『はい、今回はありがとうございました』
『それじゃあの、ユリウス君』
神様がそう言うと、神様との会話が切れた。
いや、それにしても驚いた。・・・まさか、自分がこんなに規格外な存在だなんて思いもしなかったな。
これからは、何が起こるかもしれないから、人前で自分の力を見せるのは控よう・・・いや、だって、また死にたくは無いからね。
すぐ横で、何やらエルフ二人―――ティオナ、ミラといつの間に混ざっていたのか、トールが頭を突き合わせて相談している中、僕は一人心の中でそう誓ったのであった。
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