2話 転生しよう
目覚めると、僕は知らない部屋の天井を見ていた。
「・・・あ、あうあ、うううああう」
「どこだここは?」と言おうとしたけど、出てくるのはくぐもった声だけだ。
(なるほど、僕は赤ちゃんに転生したわけだ)
僕は瞬時にそれを理解した。
いや、やっぱり事前に神様から説明を受けていたのは大きい。もし、何も分からずに赤ちゃんに転生させられていたら今は軽くパニックを起こしていたかもしれない。
その時、ガチャっと音がして、一人の美女が部屋に入ってきた。
「あら、ユリウス起きていたの?」
美女はそう言うと、僕の体を抱き上げる。神様の加護のおかげか、美女が喋っているのは訳が分からないような言語なのに、その意味を理解することが出来た。すごいな、神様の加護って。
そして、どうやらこの美女が呼んだ、「ユリウス」と言うのが新しい僕の名前らしい。うん、前世では平安時代風の名前だったからな、こういう洋風の名前に憧れてたんだよ。
と、その時僕は、自分を抱き上げている美女の耳長くて尖っている事に気が付いた。
おぉ、これってあれか?世にいう、エルフと言う奴じゃないか?!
すげー、エルフって初めて見たよ。・・・まぁ、日本どころか、地球にはエルフなんていなかったから、当たり前なんだけど。
僕が一人で内心テンションマックスで笑うと、美女も僕を見て朗らかに笑った。
「うふふ・・・今日はご機嫌ね」
えぇ、そうですとも!
僕が美女とうふふな空気を楽しんでいると、再び部屋のドアが開いて今度はいたって平凡な顔の男が入ってきた。・・・っち、邪魔が入ったか。
「どうだ?ティオナ」
「えぇ、昨晩は体調が悪かったけど、今はある程度は回復したわ」
くそっ、僕の目の前で美女とうふふな会話して、このリア充め。
「どうでちゅか、ユリウス?お父さんでちゅよ~」
しかも、このリア充、僕のお父さんらしい。・・・まてよ、ってことは、このエルフの美女は僕のお母さんという事か。で、お父さんの方は耳が尖がってないから、多分普通の人間だろう。という事から導き出されることが一つある。
僕はおそらく、「ハーフエルフ」として転生したのではないかという事だ。
うーん、なんだか嫌な予感しかしないなぁ。
よくある、ファンタジー物の話の中ではハーフエルフとかって、結構嫌われている存在として描かれているしなぁ。まぁ、今は未来の事について考えている暇はないか。
とりあえず、今必要なのは情報だ。情報が圧倒的に足りない。
僕は、しばらくはこの世界についての情報を集めることに決めた。
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そして、あっという間に一年の年月が過ぎた。
僕は一歳となり、この世界についてやそのほかの事が色々と分かってきた。
まず、この世界は「ユグドラシル」と呼ばれているらしい。で、僕が今いるところは「オリオン大陸」の大国、「リゲル王国」と言う所で、この大国の隣には「ペテルギウス帝国」小国「イプシロン共和国」が存在している。
暦は地球の物と全く一緒なので助かった。面倒な事を覚えなくていいからね。
で、僕が一番気にしていたことだけど、やはり僕は「ハーフエルフ」として転生していた。
母親がエルフで元宮廷魔法士である「ティオナ」。父親がヒューマンで元宮廷騎士である「トール」。僕はそんな二人の間に生まれた。
そして、この世界ではハーフエルフだからと言って忌避されるような慣習は存在しないようで、これには僕も内心安堵のため息をついた。せっかく、転生できたというのに周りから敵対視されるというのはつらい物がある。
でも、どうやら異種族間での仲の悪さと言うのは存在しているようだ。例えば、ヒューマンはエルフとは仲がいいものの、獣族とは仲が悪いらしい。
うーん、将来制作予定の美少女ハーレムには、ちゃっかり獣っ娘も一員としているんだけどな。まぁ、この問題は追々考えることにしよう。
で、他にも魔法の事について調べた。
でも、魔法の事についてはあまり情報が得られなかった。
なんでも、魔法と言うのを使うには才能が必要で、一般人が魔法と接点を持つ機会は中々ないんだとか。ちなみに、僕の新しい母親であるティオナはエルフらしく、一応は魔法が使えるとのこと。
魔法には「火」「水」「地」「風」「光」「闇」の六つの属性があり、それぞれの属性は、その属性についての才能が無いと使えないらしい。ティオナは水、風、光の三属性を使える。トールは元騎士で脳筋だからか、一属性も使えないようだ。
そして今日、一歳の誕生日を迎える僕は自分にどの魔法の才能があるのかを検査することになっている。
この検査は一歳になった子供は必ず受けることになっている検査で、これで魔法の才能がある者は五年後、王都にあるレゾナンス魔法学校へ入学することが出来る。
「ユリウスー!ちょっと来て」
僕がそんな風に一人考えていると我が母、ティオナに呼ばれた。
どうやら、魔法の才能の検査をするための魔法士が来たようだな。僕は最近できるようになったヨチヨチ歩きでティオナの元に向かった。
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