14話 ギルドに行こう
小さな女の子をかばって轢かれて死に、ユグドラシルに転生する前、僕はファンタジー小説を読むのが趣味だった。
数あるファンタジー小説、その中で必ずと言ってもいいほど出てきたのが、「冒険者ギルド」だった。
そして、今。
「やって来ました!冒険者ギルド!」
僕、エリス、ミチェルの三人は、その冒険者ギルドの前にいた。
連れてきたのは、勿論僕である。
まぁ、せっかくファンタジー異世界に来たのなら、ギルドで依頼を受けてみたいという事は転生以前から思っていたことだ。僕は両脇にエリスとミチェルを連れ歩きながら、ギルドへと入った。
瞬間、僕に突き刺さる幾つもの視線。
『誰だ?てめぇ?!』『ここは餓鬼がくる所じゃねぇんだよ!』
そう言わんばかりの視線だが、僕はそれらを無視して受付の方へと向かった。
受付には僕の幼い見た目に驚いているのか、きょとんと僕を見つめているエルフの女性がいた。無論、ファンタジーのお約束の如く、美人である。
「あの・・・すいません」
「・・・っ!はいっ!何でしょう?」
「ギルドに冒険者登録したいのですが」
「あ、はい。構いませんよ」
受付の女性は、少し戸惑いながらも、カウンターに一つの水晶玉のような物と、三枚の金属板を出した。
「ギルドに登録するのは、三名という事でよろしいですか?」
受付嬢はそう言い、僕たちの事を見つめた。「三名」というのは、僕以外にもエリスとミチェルの事を指しているのだろう。
「はい。三人でお願いします」
僕はここに来る途中、二人にもギルドに登録するかと聞いておいた。答えは二人ともYESだったので、三人一緒にギルドに登録させてもらう。
「それでは、一人ずつ金属板を持ってください。これは、「ギルドカード」と言います。魔法道具の一種で、あなた達のギルド内での身分証明書となります」
受付嬢は、ギルドについての説明を始めた。
「まず、ギルドカードを持った状態のまま、この水晶に触れてください」
僕が言うとおりにすると、ギルドカードに変化が生じた。
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ユリウス・バラージ
ギルドランク:G
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「今、あなたのギルドカードにあなたのデーターが登録されました。もし、これを無くした場合は再発行に5000マキかかるので、注意してください」
そう受付嬢が言うと、今度はほかの二人が次々と水晶に手を触れていく。
ちなみに、この世界の貨幣は「銅貨」「大銅貨」「銀貨」「大銀貨」「金貨」「大金貨」「白金貨」「黒金貨」「王金貨」の九つ種類があり、それぞれ
「銅貨 =1マキ」
「大銅貨=10マキ」
「銀貨 =100マキ」
「大銀貨=1000マキ」
「金貨 =10000マキ」
「大金貨=100000マキ」
「白金貨=1000000マキ」
「黒金貨=10000000マキ」
「王金貨=100000000マキ」
という価値になっている。また、感覚的には「1円=1マキ」といった感じだ。
この世界で人一人が普通に生活するには、一年で100000マキ必要だという。なので、ギルドカードの再発行に必要だという5000マキは中々の額で、これはギルドカードを容易に紛失させないようにする、ギルドの工夫なのだろう。
僕がそんな事を考えている間に、エリスとミチェルの二人はギルドへの登録を完了していた。
「三人共、登録は完了しましたね。それでは、これからギルドについて、簡単なルールを説明したいと思います」
「「「お願いします!」」」
受付嬢の言葉に三人同時に答える。
「はい。ギルドは依頼人と冒険者と呼ばれる人たちを繋ぐ、仲介所の役割をはたしています。まず、依頼人がクエスト報酬を用意して、ギルドに依頼を出します。そして、ギルドがその依頼に応じた難易度を設定して、冒険者達が自分のランクに見合った依頼を受けて依頼を達成、報酬を受け取ります。報酬からは予めにギルドの取り分として20%が引かれているので、そこはご了承ください」
うん、ここまではよくある構図だね。僕たち三人は受付嬢の言葉にうなずく。
「そして、次はギルドランクについてです。ギルドに登録している冒険者は皆、ランクという物を持っています。ランクは低い方から「G」「F」「E」「D」「C」「B」「A」「S」の七段階です。今現在、Aランクは8人、Sランクは1人しかいません。また、自分のランクよりも三つ以上、上の依頼を受けることはできません。ここまでで質問はありますか?」
「ギルドランクを上げるにはどうすればいいんですか?」
とりあえず、気になったことを質問してみる。
「それは、自分のギルドランク以上の依頼を20件成功させる必要があります。また、もし、依頼に失敗した場合、報酬と同じ額の罰金を払ってもらわなくてはいけません。何度も依頼を失敗すると、ランク降格もありえますので、十分に注意してください」
「なるほど、大体わかりました・・・二人は、何か質問することは無いかい?」
「うーん、僕は無いかな」
「私も同じく」
僕の問いかけにエリスとミチェルは、特に問題が無いといった感じで答えた。
「じゃあ、試しに依頼を一つ、受けてみる?」
僕がそう言うと、二人とも二つ返事で賛成してくれた。
僕たちは、入り口近くにある、依頼がたくさん貼ってある掲示板の前に移動する。
僕が掲示板の前で何を受けるか、迷ってると、背中に何やら柔らかい感触。
咄嗟に振り返ると、エリスが少々不満気味な顔で僕に抱き付いていた。
「ねぇ、ユリウス」
「うん?何?エリス?」
「どんな依頼を受けるの?・・・私、後で町を見て回りたいから、あまり時間がかかる奴は嫌なんだけど・・・」
「あぁ、それなら・・・」
僕はそう言いながら、風魔法を操り、一つの依頼書を手に取った。
それは、街中で完遂するお遣い系の依頼。これなら、街中を巡りながら、依頼を達成できるだろう。
「うん。それなら大丈夫」
「僕も、それなら初めてだし、良いと思うな」
エリスとミチェル、二人の了解が取れたという事で、僕はその依頼書を持って、さっきの受付嬢がいる、受付まで持って行った。
受付嬢は、早くも依頼を受けようとする僕たちに驚いた様子を見せるも、すぐに営業スマイルを見せて僕たち三人にギルドカードを提示するように要求した。僕たちはそれに従い、受付嬢にギルドカードを手渡す。
ギルドカードを受け取った彼女は、依頼書に僕たちのギルドカードを押し付けただけで、ギルドカードを返却してきた。よく見ると、依頼書には僕たち三人の名が記されていた。
へぇ、ギルドカードには、こんな使い方もあったのか。
「これで、依頼の受理は完了です。この依頼の期限は明日までなので、お遣いを済ませて、明日中に完了報告に来てください。・・・あぁ、あなた達が依頼をちゃんと達成したかはギルドカードに記録されていますから、安心してくださいね」
「分かりました」
「それと、私の名前はエリッサです。これからも何かあったら、私を頼ってください」
「何から何までありがとうございます」
「ありがとうございます!」
「礼を言うわ」
僕たちは三者三様の言い方でエリッサさんに礼を言うと、依頼と観光をするべく、ギルドを出ようとしたのだが・・・
「おい、坊主」
「可愛い彼女を二人もつれて、見せびらかせか?気に食わねぇなぁ?」
「二人は、俺たちで可愛がってやるからよぉ?さっさとどっか行けよ」
ギルドを出る直前に、柄の悪そうな男、三人に囲まれていた。
・・・あっ、定番フラグだ。
よく考えたら、ユリウスがエリス、ミチェルと三人でいるっていうのは、ユリウスが両手に花状態ですよね・・・実際にはミチェルは男の子なのでエリスが両手に花なのですが・・・
さてさて、ユリウスは絡んできた男達からエリスとミチェルを守ることが出来るのか・・・?!
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