11話 勝利の日の夜
サリアの町は、夜にもかかわらず、明るい人の声に溢れていた。
・・・いや、少し訂正しよう。僕の家の裏庭は明るい人々の声に溢れていた。
5000もの魔物に襲撃されたにもかかわらず、死人が0という奇跡的な勝利を飾ったのが、およそ8時間前。今は僕の家の裏庭に町の人々が集まって、祝祭が行われていた。
そんな中、たった一人で魔物たちを壊滅させた僕は町の英雄と崇められ、さっきまでは町のみんなから、色んな料理を進められたり、それとなしに自分の家の娘を結婚相手になどと言ってきたり、その娘がかなり可愛かったので内心飛び上がって喜んだり、そんな僕の様子を見たエリスが、元々悪かった機嫌をさらに悪くしたり等々、色んなことがあった。
そして今、僕は大人たちが酒を飲みながらどんちゃん騒ぎをし始めたので、少し離れた所で一人である物を見ていた。
「はぁー」
僕の口からため息が出る。僕は自分のステータスを見ていた。
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ユリウス・バラージ
種族:ハーフエルフ
レベル32
HP:1208/1208
MP:2331/2331(2831ー500)
STR:2418
DEF:2160
INT:1609
DEX:1725
AGI:2592
LUC:400
スキル:「神通」「看破」「ステータス吸収」「スキルコピー+」「アイテムボックス」「ステータス隠蔽」「幸運」「剣術+3」「無詠唱」「加熱」「冷却」「槍術+」「弓術+」「身体能力強化+3」「精神力強化+2」「遠見+3」「棒術+」「装備強化+3」「付与+」「徒手格闘術+2」「投擲術」
魔法適性「火」「水」「地」「風」「光」「闇」
称号:「魔導の申し子」「神性者」「模範者」「大量殺戮兵器」
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「何だよ、これっ!?」
5000匹もの魔物を粉塵爆発で葬り去った結果、僕のステータスは一気に上昇していた。
レベル上ではトールの半分だが、ステータスの数値上ではトールよりも圧倒的に強い。実際、さっきトールと手合わせをしたが、トールの動きがスローモーションに見えていた。まぁ、結果としては僕がわざと負けた。いきなりトールに勝ってしまっては、僕の異常なほどのステータス上昇がばれてしまうだろう。どんな時代でも「異常」というのは忌避されてきた。これからも、このことは隠しておいた方が身のためだろう。
それにしても、これも神様から貰った加護のおかげなのだろうか。
気になった僕は、「神通」を使って、神様に連絡を取ってみる。
『う・・・ん?誰じゃ?』
『神様、お久しぶりです』
『おぉ、ユリウスか。確か、2年ぶりじゃったか?』
『えぇ、そうなりますね。・・・それにしても、神様、何だか眠そうですね?どうしたんですか?』
『いやなに、ここ三日、ぶっ通しでエロゲ―をしているからの、重度の睡眠不足なんじゃ。あともう少しで完全に全フラグを回収できるんじゃが』
『今すぐ止めなさい』
『なっ?!この、年寄りの数少ない趣味を取りあげるつもりかっ!?』
『年寄りの趣味なら、囲碁とか将棋をしていてください』
『キャバクラとか、カジノもダメかの?』
『だめですよっ!』
てか、神様行ってたのかよ、キャバクラ。
それに、三日ぶっ通しでエロゲーって・・・よくこんなので神様検定とやらに受かったな。おい。
とりあえず、僕は神様にエロゲーをしまうように指示。
そして、三分後、ようやく本題に入れるようになったところでさっき疑問に思った事を質問してみた。
『あぁ、その事かの?結論から言えば、そうじゃ。お主のステータスの成長速度が速いのはわしが与えた加護のおかげじゃな』
『やっぱりそうでしたか』
『で、それだけかの?』
『えぇ、そうですが』
『それなら、暇な年寄りの話し相手をしてくれんかの?そうじゃな・・・お題は「最近のビッチJK」とかどうじゃ?』
『丁重にお断りします』
僕は、神様との通話を即座に切った。切れる直前に「ちょ、待っておくれ」とか言ってたような気がするが、全力で無視だ。・・・というか、あんなのが神様とか・・・うん、何だか僕の心の中で、神様と言う存在が大きな音を立てて崩れたような気がする。
僕は自分のステータスを消し、芝の上に寝転んだ。
夜空には日本とは違う配置で星々が煌めいていた。そういえば、この世界には星座ってあるのかな?
僕が何とはなしに星空を見上げていると、誰かが近づいてくる足音がした。
「ユリウス、こんな所にいたの」
「エリスか。どうしたの?」
「何となく、ユリウスと一緒にいたかったから、ユリウスの事、探してた」
エリスはそう言うと、僕の横に腰を下ろした。どうやら、機嫌は直っているようだ。
改めてエリスの顔を見てみる。エリスは戦闘から帰ってきた僕を見るなり、大泣きしていたのだが今はすっかりと落ち着き、赤くはれていた目も元の白さを取り戻していた。
それにしても、本当にきれいな顔だ。「まるで天使のようだ」と女性を褒めたりするが、それはエリスのためにあるんじゃないかと思うほど。
「みんな言ってるわよ」
「何を?」
「ユリウスの事、『大量殺戮少年』だって」
「・・・」
そういえば、前線に詰めていた騎士たちが僕の戦い方を見て、そんな事を言っていた気がする・・・やめてくれと言ったのだが、もう手遅れだったか・・・
「ねぇ、ユリウス」
「何?」
「・・・守ってくれて、ありがとう」
「何?よく聞こえなかった」
「・・・もういいわ。何もない」
「そう。ならいいんだけど」
そのまま時間は過ぎる。
僕たち二人は町の人々の陽気な笑い声を聞きながら、唯々星空を眺め続けた。
夜空を見上げているエリスの横顔を少しだけ覗き見する。
その顔は、涙は引いているはずだけど、少しだけ赤かったような気がした。
今回で幼少期は終わりです。
そして、次回からは「魔法学校・ギルド編」になります!こうご期待!
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