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1話 神様からチートをもらおう

「はぁ、痛かったな」


 僕は高校からの帰り道、もうすでに幾分か暗くなっている中で自分の陰部をさすりながら、そう呟いた。

 ・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・。

 一応言っておくが、別に「お楽しみ」をしていたわけじゃない。


 さっきコンビニに寄った時にそこで起きた強盗事件の犯人が逃げる途中に僕の股を蹴り上げやがったのだ。


 って、それを思い出したらなんか無性に腹が立ってきた。しかも、こんな時に限って交差点の信号に捕まる。僕は、車も多い交差点のために信号無視もできずに、車が通り過ぎる音だけが聞けてくる中、交差点の前で立ち止まった。

 やたらとうるさい車の音は聞き流し、何となくボケーッとしていると、僕の聴覚が幼い少女の声を拾った。

 僕は何となく、その声が聞こえてきた方へと顔を向ける。・・・決して、僕がロリコン趣味があるとか、そういう事ではない。


 僕の視線の先では一人の少女と、少しそれよりも後ろでスマホをいじってる女性がいた。状況からして、スマホをいじっている女性は少女の母親だろうか?あぁ、ながらスマホ、結構危険なんだぞ。僕は内心そう思うも、勿論女性にそんな心の呟きが届くはずも無く、女性は相変わらずスマホをいじり続ける。


 と、その時に丁度、信号が青に変わった。少女はそれを見て横断歩道上に勢いよく飛び出す。


 その時


ブゥゥゥゥゥゥ!!


 信号が赤になっているにもかかわらず、一台のトラックが交差点に突っ込んできた。


 何故?!と俺は思うも、よく見れば、突っ込んできたトラックの車体が右に左に大きく揺れている。何かトラブルがあったか、さもなくば飲酒運転か睡魔に襲われたのだろう。

 僕はそれを一瞬で考えると、すぐさま地を蹴って交差点に飛び出した。


「くそっ!だから言わんこっちゃないっ!」


 そのトラックの進路上に、さっきの少女がいて、自分にむかって突っ込んでくるトラックを見て、恐怖の為か動けなくなっていたからだ。

 僕は何とかトラックにひかれる前に少女の元にたどり着き、少女を横に抱えて投げることによって少女をトラックの進路上から排除することに成功した。

 しかし、次の瞬間には僕の視界いっぱいにトラックのヘッドライトの明かりが映っていた。


 あぁ、やばい。


 僕がそう思った次の瞬間には俺はトラックに跳ね飛ばされ、硬いアスファルトの上に投げ出されていた。


 どうやら頭を打ったようで、かなりズキズキとする。

 さっきスマホをいじっていた女性の叫び声が聞こえてきたり、何やら車からたくさん人がおりてくるような音がした。

 どこかが大けがをしたのだろうか、僕の体から大量の血が抜けていく感覚。体温がどんどん下がり、ついには指先の感覚さえも無くなってしまった。


 僕、こんなところで死ぬのかなぁ。


 なんか嫌だけど、一応女の子を助けられたし、これでいいのかなぁ。





 僕がそう思ったのもつかの間、僕はいつの間にか真っ白い何もない空間にいた。


 しかも、目の前には真っ白い服を着たお爺さんが鎮座している。


「おっほっほ、ようこそ死後の世界へ」

「・・・はぁ?」


 僕は突然の出来事と、そのおじいさんの突拍子もない言葉に思わず声を漏らした。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「―――と、いう事なんじゃ」

「・・・」


 突然目の前に現れたおじいさんから話を聞いた僕は思わず絶句した。


 何でも、このおじいさん、いわゆる「神様」と言う奴らしい。そして、この神様は人の生死を管理しており、僕がさっき助けた女の子が今回死ぬはずだったところ、何かの手違いか僕が身代りに死んでしまったので、僕を生き返らせてくれるそうなのだ。


「いや、本当に今回は申し訳なかった。まさか、自分からトラックに突っ込んでくる自殺願望少年が近くにいるとは思いもしなかったからの」

「いや待ってください!僕、別に自殺したいと思うほど世界に絶望してませんから?!」

「そうかの?」

「そうですよっ!」


 酷い言いがかりだ。


「まぁ、それはどうでもいいことじゃの。とりあえず、いま大事なのは、君がこれから生き返るという事なんじゃが、実は君が元いた所、つまりは地球で生き返ることはできないという事なんじゃ」

「まぁ、そういう事ならしょうがないですね」

「お主、本当にそれでも良いのか?」

「そりゃ、しょうがないでしょう。神様にも事情と言うのがあるでしょうし、生き返らせてもらえるだけでもありがたいです」

「ほぉー・・・」


 僕の反応を見て目を点にする神様。まぁ、僕はどちらかと言うと何でもポジティブに考えるたちなので、住む世界が違うくらいなら気にしないのだ。


「・・・よしっ!わしは決めたぞ!」

「何をですか?」


 突然何かを決心したように立ち上がった神様。そのまま僕に近づき、僕の額に手を添えた。

 しばらくして、僕の額が光り、何かが僕の中に流れ込んでくる感覚。更にしばらくするとそれは収まった。


「・・・神様、今のは?」

「今、君にわしの加護を付与したのじゃ。これで、向こうの世界で君は無双できるくらいには強くなれるはずじゃ」

「・・・それはありがたいですが、そんな物、ホイホイ与えてもいいんですか?もしかしたら、僕は生き返ったらそれを悪用するかもしれないですよ?」

「何、お主がそんな事をするような悪人ではないことぐらい、わしにはわかっとる。一応わしも神じゃからの、人を見る目はあるつもりじゃ。というか、ぶっちゃけそう言う資質が無いと、神様検定に受かることはできないからの」

「神様に検定なんてあるんですかっ?!」


 衝撃の事実だ。


「当たり前じゃ。まぁ、その話は今は関係ないから横に置いておくとしての、君が今から行ってもらう世界についての説明なんじゃが、その世界は君が元いた世界で言う「ファンタジー世界」という所なんじゃ」

「じゃ、じゃあ、魔法が使えたり、魔物がわんさか出てきたり、ギルドでクエストが受けられたりします?!」

「それは勿論。しかも、そこは一夫多妻制じゃからの、いわゆるハーレムとやらを作ることもできるぞ」

「おぉぉぉぉぉぉ!!」


 いいね。まさに男の夢、「美少女ハーレム」!


 僕が内心ウキウキしていると、突然僕の体が透け始めた。それを見て、神様が「おっほっほ」と笑った。


「そろそろ、お迎えが来たようじゃの」

「その言い方止めてください。何だか、僕が今から死ぬみたいに聞こえます」


 それを聞いた神様がまた、「おっほっほ」と笑った。絶対このひと、軽いSだな。


「あぁ、それと言い忘れていたことがあったの。向こうの世界に行けば分かる事なんじゃが、君が今から行く世界には「スキル」という奴があっての、君に与えたスキル「神通」でわしと会話ができるはずじゃから、困ったときはわしに相談しなさい」

「至れり尽くせりでありがとうございます」

「何々、元はと言えば、わしが誤って君を死なせてしまったことが悪いんじゃからの、なんてことは無い。それより、新しい人生じゃ。精一杯楽しみなさい」


 その神様の言葉を最後に、僕の意識は完全に白い光に包まれ、僕は意識を失った。

 




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