突撃! 役に立たない超能力 ①透視能力
インタビューは適当に切り上げて、近くの喫茶店でパフェでも食べよう。
ぼくの名前は藤沢勇。27歳。
1年前「びあんこ出版」の社長に拾われ、そこで出している雑誌「ピアニッシモ」のライターとして働いている。
ライターというと聞こえはいいけれど、雑誌の内容は<超常現象や心霊現象>――までならいい――のでっちあげ話だ。適当すぎる嘘を考えて、適当に並べたてるのがぼくの仕事。
おまけに、社長がつけたこの雑誌の名前、ピアニッシモもどうかと思うな。センス悪すぎない? なんでオカルト雑誌のタイトルに音楽用語を使うんだよ。これで月刊なんだぜ。価格は1800円。高い。
勇という名前は勇ましい男になれ、という意味を込めてイサムとつけた。
昔両親がそう言っていた。
よし、来世はがんばろう。
いつもぼくは、狭い事務所で想像力を適当に働かせながら、適当に嘘記事を作成しているんだけど、社長は今回からちょっと方針を変えたようだ。
新たに「突撃! 巷で噂の超能力者!」というコーナーを設けること。
嘘ではなく、本当の本当にインタビューをして、それを元に記事を書くこと。との指示が出た。
もしかしたら、ぼくの妄想バリエーションが似たり寄ったりになってきたのかもしれない。これからは気をつけよう。
まぁ、ぼくにとっちゃ初めての試みだし、めんどくさいけどそれなりには楽しみだ。
どんな超能力者がいるのかは、純粋に興味がある。
もしつまらない話やペテン師だったら、適当に修正は入れなくちゃいけないだろうけど。
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さて、今日お会いするのは……
透視能力がハンパないと巷で噂のE.O.さんでーす!
オカルト初心者のみなさんに説明すると、透視能力とは、遮った向こう側のものが見える能力のことです。
それでは~……突撃!
――こんにちは! わたくし、びあんこ出版の藤沢勇と申します。
――は? いきなりなに? ていうかどこそれ?
――雑誌ピアニッシモに掲載する記事の取材にまいりました。
――なんなのよ……音楽雑誌?
――透視能力がすごすぎる! やばい! とのお話を所々で聞いたのですが。ぜひお話をお聞かせください!
――こんな能力いらなかったわよ!!
――へえ。というと?
――あなたが今日ポケットに入れているハンカチは濃いブルー、何日も使っていないのかしら皺になってるわ。ポケットティッシュはフィットネスクラブ「エンジョイマッスル!」が宣伝で配っているもの。
――ムダ毛の処理はしていない。親知らずはまだ生えていない。肺の色は健康的、たばこは吸わないのね。
――あら? 乳首の色は、
――ストーーーップ! これ全年齢向けなんで。アダルト禁止です。
――全部大当たりですよ、さすが巷で噂になってるだけはありますね! さすがです。
――私にはさえぎるものがないの。
――瞼さえも。
――目を閉じても、瞼の向こうの景色が頭に飛び込んでくるのよ!
――棚の中、壁の向こう、天井の向こう!
――服の中! 皮膚の中!
――山の向こう! 大地の向こう! 地球の中心、マグマを通り抜けて、地球の裏側の人々の生活まで!
――なにもかも見える! 見えすぎる!
――気の休まるときがない!
――へえ、なるほど。
――貴重なお話、ありがとうございました!
オート透視とでも名付けようかな?
過ぎたるは及ばざるがごとし。
勉強になりました!
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ギャグを目指して書いたのですが、会話のテンポって難しいですね。
どうももたついてしまう。
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