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09


予定のなかった新キャラ出てきます。




「えっと…なんです?」


場所は廊下の端。目の前には七三わけ金髪のハーフっぽい男の子。クラスで見たことあるから、クラスメイトだ。名前は、確か。


「し、篠森くん、でしたっけ?」

「そうだ、僕は篠森皐太(しのもりこうた)だ。クラスメイトの名前も曖昧なのか?失礼なやつめ」


な、なにこのキャラ腹立つう〜。

てかそれさ、椎名脩にぜひ言って欲しいんだけど。

でもそうそう。皐って漢字使うの珍しいなって思って覚えてたのよ。ハーフだし。特別かっこいいわけじゃないけど。


「すみません、5月生まれなんだなとしか覚えていなくて」


皐って、皐月の皐でしょう?そう思って言えば「な、何故それを知っている!?」とすごい驚いた顔をして言われた。…バカだ。マル◯ォイみたいな見た目と性格しておいて、バカだ。


「で、急になんなんです。私漏れそうなんですけどトイレ行く途中なんですけど」

「僕が呼び止めたんだ、我慢しろ」

「膀胱炎ってかなーり痛いんですよ、知ってます?」

「そうなのか!?」


……。


「では単的に聞く」

「そうしてください」

「お前、以前廊下でオクラ納豆を食べていたか?有明産の海苔をかけて」

「誰と間違ってるんです?どこの星の人ですか?」



学校の廊下でオクラ納豆ってどういうことだ。しかも有明産の海苔って細かい。意味がわからない。

ろくに話したことのなかった篠森くん。今までは誰かと仲良くしてるってあまり印象はないけど、どこか貴族みたいな近寄りがたいオーラがあったからだと思う。けど話して見たらどうだ。人を先入観で判断するのは良くないというけれど、中身ギャップありすぎだろう。



「やっぱり違うか…。さすがにモブすぎる」

「殴りますよ。誰かお探しなんです?」

「ああ、ちょっとな」



人目をはばからず廊下でオクラ納豆を食べる人をなんのために探しているのか謎すぎる。顔も覚えていないのに。

でもこれ以上関わる義理もないので私はそのままトイレへと向かった。



教室に戻ると。

「あ、麦ちゃんおかえりー」


棚咲さんが前の席でオクラ納豆を食べていた。……オイオイ。


「…棚咲さんひとつ聞いてもいいですか?」

「なんだねなんだね」

「以前、廊下でオクラ納豆を食べたことありますか?有明産の海苔をかけて」

「あ、食べたよ。有明産の海苔かどうかは覚えていないけど。教室じゃ匂い篭っちゃって迷惑かと思って、廊下で食べたんだけど、注目集めちゃってさぁ。でも教室でも案外匂い溜まらないことに気づいたので」


ダンッ、と机を叩けば、「おう、アグレッシブ〜」という棚咲さん。


………またお前かーい!

薄々ね。薄々だよ。気づいていたよ。そうなんじゃないかってさ。だって普通じゃないんだもん。廊下でオクラ納豆って。もしかしてそんな変なことするの、棚咲さんじゃないかなって。でも少し変だからって棚咲さんと決めつけるのも違うんじゃないかなって。

そう思ったからそんな考え捨てたのに。


さすがは棚咲さんだった。


そこで篠森くんが教室に入ってくるのが見えて、「あ、篠森くん、この人…」といいかけたら、篠森くんは棚咲さん(とオクラ納豆)を視界にとらえると、口を押さえ顔を真っ赤にし、後ずさりをしてドアにぶつかり、そのまま転がるようにして出て行ってしまった。



……え?篠森くん?



「変な人だね麦ちゃん。知り合い?」


いやいや、私が言うのもなんだけど、クラスメイトだから。それから棚咲さんにだけは誰でも変な人って言われたくないと思う。

確かに篠森くんはちょっと変だけど。


でもあの反応は…?もしかする?この棚咲さんに?マジで?



「一応聞くけど接点とかはあります?」

「ないよ?知らないよ」


知らない人だった。

じゃあなに?オクラ納豆食ってる姿に一目惚れとか?まさか。


そんな私の憶測は戻ってきた篠森くんに無理やり連れて行かれた廊下の隅で、ズバリ当たることになるんだけど。



棚咲さん……お前ってやつは…。

抜け駆けかよおお!私もオクラ納豆廊下で食べるわ!!



「棚咲さんが好きだって?」

コクン。

「本気で言ってます?」

コクンコクン。

「彼女ただの怪力女ですよ、知ってました?」

ブンブン(怯えた顔で)。

「じゃあ今すぐ標的変えた方が身のためですよ」

ブンブンブンブン。

「怖いですよ彼女は」

ブンブンブンブン。

「てかそろそろ声だしてもらえません?」

「わか…た…」


篠森くん声かすれ過ぎなんだけど。

緊張してびっくりしすぎてしまって、と。どんだけですか。こっちがびっくりだわ。

ていうか同じクラスにいてなぜ今まで気づかなかった。棚咲さんそれ、一ヶ月くらい前の話だって言ってたぞ。



「佐々倉、あの子と仲良いんだろう」

「全然」

「嘘をつくな。俺から見ればマブダチの類だ」


マジで。やめたい。


「何、協力とか私嫌ですよ」

「な、何故だ!?」


がーん、と効果音がつきそうなほどショックを受けた表情をする篠森くん。


「そのくらい自分の力でなんとかしてくださいよ。人の色恋に首突っ込むなんてまっぴらです」


花ちゃんの色恋に首奥まで突っ込んでいるけど。

篠森くんは「そうか…」と残念そうに、本当に残念そうに言う。な、何これ。初めの、私に食ってかかってきたときの勢いどうしたの。なんでそんな死神を呼び寄せそうなほど落ち込むの。ずーん、と。闇の精霊でも呼び出して緑のスライムにつつまれるつもりか。


「す、好きな食べ物くらいなら聞いてきましょうか?」

「ほんとか!」


私に彼を放置するにはスペックが足りな過ぎた。そして。



「オクラ納豆だそうです」

「へえ…」


聞いた時に棚咲さんは、「何!?何!?麦ちゃん私に興味があるの!?いいわよおお!なんでも教えるわよおお!カップ数!?カップ数がいい!?」とすごい剣幕で押し寄せてきてめっちゃ怖かった。知りたくもない。


本当に篠森くんは彼女がいいのか。こわい。



○○○


「篠森くんっていつぞやの貴族っぽいですよね」

「そうか?でも俺の家は貴族とは程遠いんだがな」

「そうなんですか?そんな偉そうなのに?」

「将来の夢は3LDKで、可愛い娘と息子に囲まれて生涯を終えたい」

「ごめんなさい」


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