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06




午後からは多くが団体競技である。よって私の出番が多いわけなのだけど。私の出番なんてどうだっていいのだ。


午後の目玉はなんと言っても仮装競争だろう。

あくまで私にとっては。

なぜって、あのジャンヌダルク・栗栖花が出るのだ。

仮装競争は競技のおわりのほうにあるからか、どのクラスも主戦力を出すことが多い。そして、主戦力となる人って割と人気のある人が多かったりするから、すごく盛り上がるんだそうだ。


花ちゃんの仮装はこの目に焼き付けてやる。デジカメも装備している。目だけじゃなくフィルムにも焼き付けるつもり。


花ちゃんどんな格好しても絶対可愛いわ……。またそれでトゥーピュアピュアボーイ夏希が全身汗疹になるようなかゆすぎる言葉を吐かないかというのが注意をしなきゃいけないところ。いくら花ちゃんが鈍感だってね。だめだよそういうの。おじさん許さない。



玉入れを終え、綱引きを終え。

椎名脩と結城真白がでなかった我がクラス通称モブクラ(命名:私)は両者とも真ん中という安定の順位を獲得した。

その後大玉送りだとか、トルネードだかハリケーンだかとにかくそんなのだとか、男子団体竹取合戦(これまた四天王が目立った)とか。


ちなみに女子団体ムカデリレーはモブのモブによるモブのためのモブリレーと言い換えることができるため、私は全力でムカデになりきってやった。


1位だった。


モブではぬかりない私だった。

喜んだ棚咲さんに絞め殺されそうになって怖かった。

護身術、私も習おう。合気道部とかあるかなこの学校。このままじゃ1年も体がもたない。



そして待ちに待った、仮装競争が始まる。

競技はあと仮装競争、選抜リレーで終わりなのでだんだん全体もヒートアップしてくるというもの。


私はクラスの先陣を切ってデジカメを構えていた。

レンズの先には雅ちゃんと楽しそうに話しながら整列する、花ちゃんのお姿。…可愛い。

またいつの間にか隣で同じようにしてデジカメを構えるのは棚咲さんだった。椎名脩なのか結城真白なのかわからないが、よだれ垂れてるよ。汚いよ拭いて。



と、急に腕が引っ張られて、振り返ると委員長だった。

どうやら急いでるみたいでーー



「佐々倉さん、悪いんだけど仮装競争でてくれる!?」

「えっ?」

「出る予定だった子が捻挫しちゃって…。足の速い子はみんなもう出てるか、次のリレーに備えてていないの」



モブが。普通が。仇になる日がくるとは。

それに必死にお願いされて断ることができるほど私は鬼畜ではないのだ。

落胆した顔をすれば委員長にすごく謝られてしまって、棚咲さんは「大丈夫!私がちゃんと思い出に残しとくよ!」と無駄に白い歯を見せてデジカメを掲げたんだけど。

お前がフィルムに残すのは椎名脩か結城真白だろおおおがあああ!私が撮りたいのは花ちゃんだから!栗栖花ちゃんだから!!


そうして私は涙目になりながら、グラウンドへ向かった。

仕方ない、花ちゃんは心のフィルムに深く刻もう。目に焼き付けるだけになってしまうが、近くで見れるのだ。いいことじゃないか。


……いいことじゃないか!!!委員長!!!ありがとう!!!


急に嬉しそうに走り出した私を委員長が不審そうに見ていたことは知らない。




グラウンドに着けば、すぐそばに花ちゃんと雅ちゃん。ふふふふふ、ニヤニヤが止まらないぜ…。

そしてそのそばには当たり前のように姫神はじめが。まあ、そうよね。出るよね。羽瀬川夏希は次のリレーに備え組らしい。

うちのクラスも結城真白は備え組だ。

椎名脩より結城真白のほうが少しだけ足が速いのだそう。

そういえばそうだ。公式でも椎名脩の趣味は読書とかいう、は?その性格で?って感じなのだけど、結城真白はバスケだ。バスケ大好き少年。可愛い。


というわけで、すぐ近くには椎名脩がいた。

回りの女子はきゃあきゃあと、その見た目と雰囲気に騒いでいるんだけど、内面を知っている私にとってはただの恐怖でしかない。少しでもぶつかったりしたら心がなくなる。精神的に死ぬ。


こ、怖え。関わらないようにしよっと。


見てる分には全然いいんだけどな。脩ルート割と好きだったもん。何回も言うけど。散々花ちゃんが椎名脩に攻められてたけど、見てる分にはきゅんきゅんだ。かっこいいし。


でもそれは好きな人限定だし、普通の人には心の中で何を思っているのかわかったものじゃない。よもや平凡モブ少女佐々倉にはどんな罵声を浴びせてくるのか恐ろしくてたまらない。

今のところ存在も認知されてないから、モブに生まれて良かったと思う。



そうして目の前で始まった、仮装競争。


数メートル先にあるテントの中は暗くなっていて、衣装が並べてある。

大きさやボリュームなどで判断して一つ選び、その奥の明かりのついた男女別着替えブースで着替えて、そのままゴールに直行という簡素なものだ。


つまりは足の速さよりも着替の速さを問われるわけだ。


だから私はこれ…、足の遅い人とか運動苦手な人が出るべきだと思うんだけど、この強者率。

まあこの学校の伝統か何かになってしまっているんだろうな。



テントから続々と出てくる、サムライとかメイドさんとか、看護婦とか王道なものからでかい着ぐるみとか…何あれ、登山家?とか謎の衣装まで。

黄色い歓声がほぼ占めるなか、花ちゃんと椎名脩がスタートラインに並ぶ。


そ、その組み合わせで勝負なんですか、神よ…。

ピストルの音と共に走り出してすでにトップ2でテントに入っていく花ちゃんと椎名脩。


そしてテントから出てきたのはーーー工事現場花ちゃんと、少し遅れて王子様服の椎名脩。


は、花ちゃん……!!おじさん的にはそれも新しくてOKですすごい可愛い。なんかちょっとしたイケナイ雑誌を買った気分になる。

そんで椎名脩。お前絶対中見て選んだろ。似合いすぎだから。後ろで「あれ?あいてる?」って声が聞こえてるよ。


でもそんなこと知ったこっちゃないもはや観客席では、鼓膜が破れそうな歓声が。

ちらりと棚咲さんを見れば、デジカメをぶらさげて真顔で見つめていた。怖すぎる。見なかったことにした。


そして1着はもちろん花ちゃん。ズルをした椎名脩は2着だ。当たり前だ、この野郎、けっ。花ちゃんと同じ土俵に立っていながらズルをするなんて1億と二千年早いわボケェ。


到着した花ちゃんは先にレースを終え、ゴールで待機していた先生スタイルの雅ちゃんと共に喜んでいた。


雅ちゃん…先生スタイル…美しいわ…。回りの男ども釘付けだものね…。


「花、何それー変なの」

「へへ、工事現場のおじさんだよ!いけてるでしょ?」



超いけてます……!!!私は涙を体操服の袖で吹きながら心の中で叫んだ。


花ちゃんの写真集とか…でないかなぁ。

花ちゃんグッズって全然出なかったんだよね。まあ「主人公は貴方!」だから当たり前っちゃあ当たり前だけど、花ちゃん押しの私としては辛かったところ。

代わりに水垣さんグッズ集めてたけど。花ちゃんグッズが出た時の、千花ちゃんに備えて。


羽瀬川夏希が花ちゃんに声をかけ、それを番犬が追い払うのを見ながらスタートラインにつく。

雅ちゃんありがとう。こんどビーフジャッキーあげるね。いつか仲良くなれたら。



そして並んでから気づいた。

隣に、姫神はじめがいることに。

というか、でかい。背がでかい。太ってるわけじゃないのに、でかい。


ゴールのほうから三人がこちらを見て何やら言っている。は、花ちゃんの視線が私に……。正確には隣の姫神はじめにだけど…。死ねる。


今まで騎馬下とか、菩薩の微笑みとか地味すぎて全然よくわかんなかったけど、ついでに言えばゲームでもそこまで好きなキャラではなかったし。


こうして間近で見ると、姫神はじめも攻略キャラの一人だけあって綺麗な顔してるんだなぁ。犬みたいなタレ目がまたいい。近くにきて初めて気づいたけど、姫神はじめはほかの3人とは違ってあまり騒がれていないように思えた。

が、実はそうではなく、みんな静かに鑑賞しているのだ。それは幼なじみの雅ちゃんの影響が大きいように思える。

顔だけとれば、私の好みは置いといて、四天王はみんな引けをとらない。

それなのになんとなく、うちのクラスの2人がより目立っているのは周りに特定の女子がいないというのが理由だろう。


恐るべし、雅ちゃん。

花ちゃんの番犬だけでなく、羽瀬川夏希と特に姫神はじめの番犬もこなしているとは。

私にとっては花ちゃんも十分べっぴんさんだけどね。むしろ花ちゃんだけどね。



私があまりにもじぃーーっと観察してたからだろうか、姫神はじめがこちらを向いて、首を傾げた。

普通ならきゅん♡としてもいいところだが、冷や汗が、だらだらと。


以前話した、花ちゃんが敵役に絡まれたとき。力業で解決しようとしたのは5人の中で唯一彼のみ。壁をなぐって亀裂を入れてビビらせたのだ。

ば、番長怖えええ。


だから自分がモブだと確信している私にはついつい、彼の後ろに般若が見えるのだ。椎名脩ではないし、彼が心で怖いことを考えてるなんてことは絶対ない。むしろ逆だ。

でもいざ本人を前にすれば、何見てんの?と今にもカツアゲされそうな気分になってしまう。


冷や汗でダラダラの顔を静かに前に向けた。

このレース、気が抜けない。


ピストルの音と共に走り出す。


もちろん姫神はじめはトップを行き、ほかモブたちもあとに続く。私はわざとその最後尾についていった。

姫神はじめ改め元ヤンと少しでも距離をとるためである。



「麦ちゃん遅いぞー!」

うるさいぞ怪力娘!


とっくに姫神はじめがテントに入ったのを確認してから、私もテントに入る。

中は思った以上に真っ暗だった。

これ、袋掴むのも割と辛いよ?

椎名脩、よく探せたな…あの速さで…。


とりあえず手元にあった袋を抱えて着替えブースへ。


しかし。


カーテンを開けた先には、2、3人の男子+姫神はじめの上半身が。

Wow☆腹筋ワレテル!



「間違えました」



ザッ、と何事もなかったように閉めた。

姫神はじめ、きょとん顔だった。ワンコ顔だった。何私フラグ立ててんの意味わかんねえ誰得。

彼の脇腹のいかにもな傷跡は見なかったことにした。

他の男子も姫神はじめも特に大きな声で不審者!とか変態!とか叫びださかったのが不幸中の幸いだった。

も、もしかして彼らも私のことをオカマだと思ってたとか…?いやいや、ないない。


まあとにかく、ゴールするのが先だ。

今度は間違いなく女子のほうへ。

すでに何人かがもうすぐ着替え終わるようにいた。

袋を開けてみれば、国民的キャラクター、ハラえもんの着ぐるみ。メタボリック症候群にかかった未来のロボットだ。顔が点と線だけで書かれた愛着のわく顔である。モブの私にとって。


まあこれなら顔も見えないし、とさっさと着替えて外に出れば。

ゴール付近では何故か無駄にかっこいい幕末志士の格好をした姫神はじめがくわわり、花ちゃんを除く3人が写真撮影をねだられ人だかりができていて。


ハラえもんはその横を何食わぬ顔で通り過ぎた。

花ちゃんはきっと着替えに行ってしまったからいないので用はない。

ハラえもんも何人かから写真撮影を頼まれたので、ハラえもんの決めポーズ「もう食べれない」をして写ってきた。大好評だった。









先日、色々ありまして作文の勉強を始めたのですが、それにつきまして、自分の文章力のなさがいかに酷いものかを実感しました。

ストックで15話まですでに書いてしまっているのですが、これから書く16話からは少し文章を意識しようと思います。


ここまで読みづらく、大変申し訳ありませんでした。15話までこの酷さが続きますが…すみません、よろしくお願いします。


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