表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

私の家族は面白い!?

うちってなんかすごく損してない?

作者: 白零志亜

「おねーちゃんただいまー」


 ん?だれ?

「おーいおきてー」

 気持ちよく寝てるのに起こさないでよぉ

「おーいお姉ちゃん?いきてるー?」

 死んでるよーもう眠たくて死んでるよー

「ちょっとだんまりですか、俺帰ってきたのにだんまりですカー」

 おかえりーはい言ったからもう寝かしてー

「おきないとー・・・こうだ!」

 ん?何ぃ?にゃんにゃのー?

「こうもしてやる!」

 にぇむいのにぃ、ねかへておー・・・

「ってほっぺたつねるなーーー!」

 途中から頬で遊ばれていることに気づいた私は目の前に立つ弟を睨みつけた。

「お・か・え・り!」

「ただいまー」

 私の形相にニコニコ笑顔で答える目の前の男。そんな弟の頬を私はお返しとばかりにつねあげる。

 顔に、先ほどとは違うニコニコ笑顔を浮かべながら。

「それでー?何で私は顔で遊ばれちゃってたのかなあ」

「い!痛いよお姉ちゃん!ついでに顔が怖いこわあいたたたた!?」

「あれだけあそぶなといっておいたはずなんだけど?」

「ご、ごめん!誤るからはなしていたいいたい!」

 その言葉を聞いた私は、少しためらってからしぶしぶ弟を解放した。

 

 私は鈴原美咲。

 身長は153ぐらいで体重ヒミツのデブッチョ。性格は明るいのか暗いのか自分ではわからない。つい最近友達に性格のことで言われたことは……

『みーちゃんて起こるとツンデレになるんだね』

 ほっとけ。


 目の前で赤くなった頬を押さえているのは私の弟――鈴原誠也。

 身長は生意気にも私よりちょっと高くて、体重は不明。ただ太っているのは確かだ。

 性格は姉である私でもよくわかんないことをたまに言うような……まあ、明るい奴。怒ると実はすごい怖い。

 私たちには兄弟が5人いて、一番上が高校2年生、そして私で誠也、だいぶはなれて小3と小1というちょっと訳ありの兄弟なのだ。

 ちなみにその中で女は私一人。男勝りのところはここから来ている。

 あとは強気な母と、面白い父と、自由奔放な祖父と我が家の頂点に立つ祖母。これで家族全員になる。

 今は皆仕事に出かけていて私と弟以外はいないけど……


 ん。そういえば……

 いててて……と頬をさすっている誠也をにらみつけていると、美咲はふとあることに気づいて部屋の時計を見上げた。

「あれ?今日は帰ってくるの早いんだね」

「お姉ちゃん、今日は水曜日だよ?」

「ああ、そうだった。わすれてた」

 水曜日。この日、弟が通う学校は部活も無ければ、部活前にしていく掃除も無い。なのでいつもより帰りは早くなる。

 というのをすっかり忘れていた美咲は、目の前にあるパソコンを睨みつけてうーんとうなった。

 現在時刻3:11ーー

 誠也が帰ってきたということはのんびりパソコンなどやってる暇はないな。

 というところに思い立って再び脇にいる誠也を睨む。

「・・・・何?」

 不思議そうに首を傾げる弟に一言。


「帰ってこなきゃよかったのに・・・」


「えぇぇぇぇーーー!?」

 姉の衝撃的な発言に思わず声をあげ「ひどい!」と叫ぶ。

「何?なんで?ほっぺたつねったのが悪かったの?それともお姉ちゃんのアイス食べたから?」

 誠也の言葉に美咲の肩がぴくりと反応する。

 しかしそれには気づかない誠也は次々と地雷を踏んでいく。


 あ!それともお菓子? ごめんね? 食べたくてつい食べちゃったんだ。

 えと、それとも音楽? ゲーム機の中に入れてた音楽を勝手に消したから?

 ごめんねごめんってば!あれはわざとじゃないんだよ!

 自分のを消そうと思ったら間違えてーー


 その先はもう聞いていなかった。



 数十分後・・・。


「あーもう!全く・・・」

 隣の部屋で頭にたんこぶを作って倒れている誠也を睨みつけながら、美咲は荒々しく食器を片づけていく。

 どうりでアイスが足りなかったりお菓子が無くなってたり、聞きたいと思っていた音楽が無かったわけだ。

 まさか"あいつ"の仕業だったとはねぇ。

「予想はしてたけどふつう人のもの食ったりするか?」

 毒づくと、もぞもぞと聞き取りにくい返事がリビングから聞こえてきた。

「だっ・・・て、お腹す・・・いて、たし・・・」

 そこまでいうと突然ガバッと起きあがる誠也。

 その顔は珍しく真剣だった。

「お姉ちゃんばっかずるいじ・・・ぶほっ!?」

 真剣に抗議という文句を言う誠也に、美咲の懇親の左アッパーが入った。

 決まった・・・。

 白煙を上げている左拳を握りしめ、決まった技の美しさに浸る。

 プロのボクサーでもここまできれいに技を決めることはできなかっただろう。

「さて、夕飯作らなきゃ」

 仰向けに倒れ、顎のあたりから白煙をあげる誠也に背を向けて夕飯に取りかかる。

 今日の献立は焼き魚に玉葱の味噌汁、そして冷や(ひややっこ)と言うシンプルなものだ。

 ご飯は家族が多い故に六合炊き、袋に入っている魚を出して、事前に暖めておいたグリルに二つほど並べて換気扇をつけ、焼けるのを待つ。

 その間に鍋に水と粉末のダシの素をいれて蓋をして煮立つのを待つ。

 グリルの様子を逐一見ながら味噌汁にする玉葱を切っていると、ようやく起きあがった誠也がキッチンにやってきた。

「お姉ちゃん、今日の夕飯はなに?」

 まるでなにもなかったように首を傾げる弟。

「焼き魚と味噌汁と豆腐ぅ」

 そんな弟にちゃんと答えてやるのもなんだか面倒くさくて、やる気なさげに適当に答える。

 すると私のすぐそばに、背もたれのない折り畳み式のイスを持ってきて、「えぇ~」と座りながらぶぅたれたかおでにらまれた。

「それだけ?」

「イヤなら食べなくていいよ? うち食べるから」

 心底不満そうに言う弟にそっけなく返しながら鍋の蓋をあけ、煮立ったダシの中に切った玉葱を投入する。

 再び蓋を締めて、いい匂いが漂いだしたグリルの様子を見、「もうちょいだな」と呟やきながら冷蔵庫をあけて豆腐を取り出す。

「他に何かないの?・・・」

「ジャガイモとか余ってたからポテトサラダ作ろうかと今考えてる」

「じゃそれも食べるから作ってよ」

「自分で作ったら?」

「えっ!?」

 豆腐を入れ物からだしてまな板の上においていき、四等分にしながら誠也に冷たい言葉をわざと投げかける。

 誠也も冗談だとわかっているので大げさな仕草で驚きを表現していた。

 体を後ろにのけぞらせたまま目の前で豆腐を切っているうちに抗議。

「こんなか弱い弟にお姉ちゃんは料理をしろと言うの!?」

 叫びに近い嘆きをあげる誠也に、美咲の手は止まった。

「へぇ~~?」

 なんだか妙に高い声質で相づちをうつ美咲。

 よく見てみればその顔は満面の笑みをたたえていた。

 しかし、誠也にとってそれはやってしまったと頭を抱えるほど大変な事態なのだ。


「どぉこの、だぁれがなんだってぇ~~?」


 にっこり作り笑顔を浮かべているのに、ゴゴゴゴ・・・と言う音が聞こえてきそうなほど怒りオーラを発している自分の姉に誠也はたじろいだ。

「あ、いえ・・・なんでもありません」

 冷汗を浮かべながら謝り、ハハハハ・・・と笑ってごまかして、なんとか機嫌をとろうと干したままの食器に手をのばし片づけていく。

「全く・・・あっ魚!」

 一つため息をついてじとっと働きだした誠也を見つめていると、鼻先に魚の匂いがかすめてはたと思い出してグリルへ急ぐ。

ーーガチャッ・・・

 勢いよくグリルをあけると、きれいに焼けるはずだった魚は、変わり果てた姿とそのやけ焦げた匂いで存在感を示しているようだった。

「・・・」

「・・・」

 二人同時に固まる。

 美咲はほぼ炭と化した魚を見おろしたまま硬直し、誠也はそんな姉の姿をみて冷や汗を額ににじませながら、ぴくりとも動けずに凝視している。

「お・・・・・・・・お姉ちゃ」


『おまえいっぺん死んどけぇぇぇぇぇっっっっ!!!!!』


 私ってなんかすごく損してない?

 そう思ってしまうとある夜のことでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ