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生きることをやめました。

青い空 白い雲 照り輝く太陽どれもこれもが俺を追い詰める。

「ああっ」 

地面なんか見て死にたくなかった。

だから地面を背にして空を最後に見ることにした。

青い空は俺には眩し過ぎたが深く暗い地面よりはまだマシ。


今から俺は自殺をする。


遺書はちゃんと書いた。

最近の遺書はすごいと思う。遺書を書くための専用の本に、遺書セットがもれなくついてくる。そこには遺書を書く時に綺麗な字が書ける!が売り文句の売値の高い筆ペンがあったのだがどうも字を書く事自体が苦手な俺は、おっくうになり本人と証明されないかもしれないがワープロで打って作った。遺書は渋いオジサンが書くイメージが離れないので、筆文字設定にしていたせいか高校生の遺書には見えないから、さらに俺が書いたことが分からないが。

ちなみに俺の残っていた小遣いは全部神社の参拝に使った。ボランティア団体に寄付したくはない、なぜならそれ自体が詐欺ということもあるからだ。

騙されんのはもうこりごり。

最後の最後まで騙されたくない。だから死期の世界で何かいいことがあるように必死に願っておいた。486円でどれだけ良いとこに移転されるのかはわからないけども


俺がこれから死ぬ理由はいじめられていたからだ。

遺書には俺をいじめていた奴の名前もばっちり書いてやった。一番大きな文字になるように設定してばっちり書いてやった。後はワイドショー解説の偉そうなおっさんが俺のことを「なぜ周りの大人たちは気づいてあげられなかったのでしょうか」とかなんとか言えば俺のあいつらへの復讐は終わる。ちっぽけだが彼らが気にする将来的ダメージは大きいはずだ。


まず俺はどこで死のうかなといろいろと一週間前から考えた。

百年イチョウの木で首つり 理科室の硫酸をかぶる 家庭科室の包丁でリストカット

などいろいろ考えたが俺はこの学校の中で一番空に近い屋上で死ぬことにした。

空に近ければ神様が俺を救ってくれるんじゃないかと思って。

別に学校じゃなくても、自宅のマンションの屋上で死んでもよかったが、学校だと警察なんかが出入りしていただけるのでその時、彼らに変な噂でも流れれば完璧。


いじめられる原因は特になかったのだが 空気感からなんとなーくこいつをいじめよう空気がクラス中に伝染していじめられて今に至る。

いじめと言っても靴がボロボロにされるだとかバケツの水をかぶせさせられるみたいに王道いじめっ子がやるような証拠が残ることを奴らはやらなかった。

まあ、当たり前だろうドラマや漫画の中の机にカスやら馬鹿やらそんな証拠なんか残したらすぐに退学させられるからなんだろうがそのため、暴力もされなかったが証拠が残らない言葉の暴力と無視され続ける生活に表面上は慣れ続けていたが、俺の体のどっかで傷ついていたんだ。

だから今ここに立っているんだろう。


屋上の風は爽やかにべたついたワイシャツの中を冷たく吹き抜ける。

ああ、生きてた意味ってなんだったんだろう。

屋上のフェンスに、寄りかかるように座って少し考える。

俺が何したっていうんだよ、何か悪い事でもしたのかよ。

なんで誰も俺のこと守ってくれないんだよ

今さら考えても答えを出せないことを考えるなんて俺は生きていたいのだろうか

どうせ、生きていても嫌とも何も言えないただの人形にしかなれないなら死のう。

死にたくはないでもつらい。ここから飛び降りればすぐに楽になれる。

スッと立ち上がり覚悟を決めた。


靴は揃えない。

もしも失敗したときに彼らが屋上から落としたように見せかけるために

だから遺書も俺の部屋の机の上にある。

さて行きますか。

青い空には雲一つない。神はどこで俺を見ていたんだろう?

来世の時は守ってくれる人を最後まで作ってくれよな。

今になりゃ思い残すことは可愛い彼女ができなかったこと!

もし、生まれ変わったならもっと積極的な男になってちゃんと勉強しよう

幸せな人生を歩むために。


屋上の柵は意外に高くカッコの悪い登り方しかできなかった。

ズボンがガッツリ破れたがどーせ死ぬ。死人に口なし耳もなし悪口も聞こえない。


静かにこの世界から消えよう。バイバイいじめられっ子の俺。

チャイムがいつもどおりのメロディを奏でる聞き終わる前におれはそうッと地面から足を放した。


体全体に風が気持ちよくあたるそれが、なぜか懐かしく感じる。

さすが重力。風が強い。

そのうち俺の頭ぐっちゃぐちゃになるんだろう。16年の人生を学習したのが無駄だったな

だが、大丈夫。臓器なんかも誰にもやる予定はないから、無駄な期待もさせないし、感謝されない素晴らしい死にざま。

それにしても、時間の流れがとっても遅い気がする。

もう、10分はたっているような気がする。

死ぬからかなぁ。

そろそろ走馬燈が見えるのかな。










ヒュ――――――――――――――――――――――――

空は青い。いまだに空が見える。

アレ?時間の流れ遅くないか。

もう、一時間以上たっている気がする.......。

走馬灯も見えないし走馬灯が死にぎわに見えるっていうのも嘘なのか?また騙された。

そうっと下を見ると青だった。

正確に言うならば真っ青な海だった。そこへまっさかさまに落ちる俺。

すみません水泳の授業もっと真面目に受けておけばよかったです。

俺は、波のないプールでしか泳げません

まあいっかどーせ死ねるし。


バンッッ


固い音がして背中にすごい衝撃が来る

空が遠くなる。

手で空をつかもうとする俺。何してんの?

「「生きたいの?」」

自問自答したつもりだったのに、誰かと声がかぶる。

目の前に妖艶な少女がいた。

少女はニッコリ笑うと

「じゃあ決まり」

水の中の声なんて聞こえないはずなのに海に優しい声が響き渡る

「さあ、行こうか?」

息も吸えないのに声が出せるわけないのに俺は問う。

「どこに行くの?」

行くあてなんて俺にはない。あるとしたら天国か地獄だ。

そして君は

「誰?」

今のでもう息がだいぶもう.もう..ダメ.息が苦しい..早くはやく..

死にたいよぉ...はやくぅら.くに.なりた.....い

「私は.........」

なに?聞こ.え.な.......ィ........





少年を抱きかかえながら妖艶な少女は海岸に腰を下ろす

シンデレラの魔法が解けるように妖艶な少女は海から足を離すと、あどけない幼き少女の体に見る見るうちに変わる。

深く青い海からもらった海色に染まる髪を地上で結いなおす幼い少女は少年を海岸に寝かせてそうッと呟いた。


「私はあなたに...王に仕える者です。」

「いつ会えるかと楽しみにしておりました。」

少年は聞こえているはずがないのに少女は言葉を繋ぐ


「こんなに早く、若き王に会うのは初めてでどうすればよいのかがわかりません。

恥ずかしながら私はあなた様がが落ちてきたとき、えっとその....一目ぼれしてしまい

いつものような対処ができなかったことをどうかお許しください。

ですが、あなた様は自らを殺して落ちてきたのでよろしいですよね


たとえ向こうの世界に戻れなくても.....。」



日は沈み海は赤く染まる。

それでも少女は話すことをやめない

「先代の王はちょうど一年前にお亡くなりになりました。私が戦乱で守れなかったために....。

たった一人の王の妹君が今、国をまとめようと必死だったのですよ

でも、今からこの国はあなた様がまとめる16年前から決まっていた運命。

その運命は変えられない

だから、だから.....

もう、安心して暮らしてよいのですよね?」

青く染まったその瞳からは溢れんばかりに涙が流れてくる


「助けてください...

この国を妹君をエルマーをデイラをそして私を


守ってください


王、ラリアン王よ。」


青き少女は泣きながら助けを求めた生きることをやめたい何もできない少年に。


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