超短一寸法師
一寸法師のワンシーンを、おとーさんが改造して話しました。ちょっと余計な一言加えただけで、こんなに話は変わるんです。ワンシーンだからめちゃ短い。読むのに一分かからない。
お姫様と一寸法師が、宮参りの旅をしている最中、鬼がお姫様をさらいに来ました。
鬼は一寸法師を飲み込みましたが、一寸法師は体の小ささを生かして鬼を腹の中から針の剣でちくん!
何度もやられるうちに、鬼は一寸法師を吐き出してしまいました……
「を、変えてみたいと思う」
「いつもおとーさんの話って何かを改造したのばっかりじゃん」
それを言うな、娘よ。
「で、変えてどうなったの? 一応あたし受験生で、勉強中なので手短にお願いします」
「勉強中って、ワークの下に漫画が見えてるぞ」
「絵の勉強だよー」
…………お前、受かる気あるか?
「がはははは、こんなやつ、一飲みにしてやる!」
鬼が一寸法師をつまみあげました。
(ふん、私を飲み込んだら、私はお前の腹を中から突き刺してやるさ……)
鬼がその口をがばぁっと開けて、彼を飲み込もうとした、その瞬間!
「お待ちなさい!」
「うん?」「ひ、姫っ!?」
お姫様は、勇気を振り絞り、言いました。
「きちんと噛んでお食べなさい!」
「あ……それもそうだな」「えぇえええええ!? ちょ、姫!? 鬼も従うなぁっ!」
一寸法師は噛み砕かれ、飲み込まれ、二度と現れることはありませんでしたとさ。
「ひ、姫……何で……」
「だって消化に悪いじゃない」
「うん、確かに丸呑みは消化に悪い。でも噛んだらあたしの気分が悪い」
お粗末さまでした。