シンデレラ
四人兄妹の末っ子、光に頼まれたらおとーさんは断れない? 眠いけど結局シンデレラを話す羽目になりました。「どうしてうちの娘は『尾も白い』で納得してくれないんだろう……」とはおとーさんの言葉。そんな話で満足する子供がどこに居る。
「お父さん~。お話して~」
「ごめん、今日は眠い……」
「私が眠れないの~」
おとーさんは関係ないぞ?
名も無き父だ。最近娘に名前何だっけと聞かれて凄く傷ついた哀れな父親だ。
誰か慰めて!
「お父さん~」
「うん……お姉ちゃんとお兄ちゃんがまだ遊んでるから混ざっておいで」
『ぶくぶく』とか『深爪ぇ~』とか聞こえてくるからきっと、娘が息子『で』遊んでるんだろうなぁ。おとーさんも混ぜろ。あぁでも眠い。仕事疲れた。
「それは明日にとっとくの~。お話~!」
むむ……仕方がない。
昔々、あるところに。白い犬が居ました。
「その犬は尻尾も白いので尾も白い~、なんてつまらない話は止めてよ~?」
ちぃ。
昔々、ヨーロッパのどこか。
お金持ちのお父さんと、その娘がおりました。
ある日、お母さんを亡くした娘の所に、新しいお母さんと、二人のお姉さんがやってきました。
「シンデレラだね~」
その新しいお母さんは、安っぽい服を好み、ヘルスィーな料理を好み、家政婦さんを皆辞めさせて家事を自分でやりました。
「全然違うね~」
お父さんは、いい妻だとかなんとか言って、しばらくしてぽっくり逝ってしまいました。
「なんとかの部分には何が入るの~?」
ご自由にお考えください。
お父さんの葬式の後。
とても悲しんだ新しいお母さんは、貯め込んだ金を急に使い始めました。
「悲しんでるの~?」
娘は、三人の世話をする羽目になってしまうのでした……ぐぅ。
「お父さん~。続き~!」
あぅ。
ある日、家に四枚の招待状が届きました。
『王子の妃を選ぶんだってよ。ん、興味ねぇ。っつかめんどくせぇ』
『わー、あたしってばえらばれちゃったらどーしよー。どーもしないけどー。行く気もしないけどー』
『私だってまだまだ若いのよ……二児の母だからって……負けないわよっ! あぁあなた、見守っていてね!』
『ふむ……王子の妃、という事は未来の王妃? 一生楽して暮らせる? おぉおおおお、すげぇええええええ!』
上から、長女、次女、母、娘(一応シンデレラ)です。
「……あのね~。上から純お兄ちゃん、お姉ちゃん、シンデレラのお母さん? 岳お兄ちゃんみたいな言い方だったんだけど~」
気のせいだ。
「そうかな~?」
気のせいなの。
三日後、お城で舞踏会が開かれました。
『さぁ! 行きますわよ!』
『ん、めんどくせぇから行かねぇ』
『またあなたはそんなこと言って! 立派な貴婦人になれませんわよ!?』
『なりたくねぇ』
『なんてこと! あぁ、なんてことでしょう! 紙よ!』
新しいお母さんは泣きながら、丸めた紙に叫びます。
「……紙~?」
そこはスルーの方向で。
『じゃ、あたしも行かない。舞踏会とかつまんない。人ごみイヤ』
『あぁああああ! なんてことでしょう! 二人目の娘まで! 背に腹は変えられませんわ! シンデレラ!』
新しいお母さんは半狂乱になりながらシンデレラを呼びます。
『準備OK! いつでも行けるぜっ!』
シンデレラはリュックを背負い直し、真っ白な歯をきらーん☆ と光らせます。
「誰~? なぜにリュック~?」
『腕が自由だから、いくらでも食えるぜ! 腹も減った! 行くぜ母さん!』
さて、シンデレラは何のための舞踏会か分かっているのでしょうか?
「わかってな~い~」
お城に着くと、
「魔法使い出番なかったね~」
皆がダンスしている中、一人ガツガツとたっかい料理を食べているシンデレラが居ました。
「見てて痛いね~」
そんな、自分の妃の座をどうでもいいことのように食べ続ける彼女に、王子は嬉しくなりました。
そして、
『お嬢さん、一曲お相手願えますか~?』
「私口調~?」
軽く後ろでまとめられた黒髪が、無駄にさらさらと音を立てます。
「無駄にって言わないでよ~」
イケメンは嫌いだ。
「純お兄ちゃんは~?」
好青年風のイケメンは嫌いだ。
「……続きは~?」
シンデレラは、
『今んぐんぐ、オレ忙しんだよあむあむ。ほら、相手なら母さんにしてもらあむむぐっ』
しかし、その新しいお母さんはちょうどトイレに行っていたのでした。
「何してるのお母さん~」
『ほら、そんなこと言わずに~。私と踊りましょうよ~』
シンデレラは逃げました。
「ダメでしょ~」
ブドウを食べながら、まずはシャンデリアの上にガシャン!
「跳躍力凄い~」
続いてどこぞの伯爵の太ったお腹でぼよんっ!
「そのお腹はトランポリン~?」
最後には王子様へ愛のキーック!
「王子様かわいそ~。愛の無いキックの間違いじゃないかな~」
そして、シンデレラは残った料理を大きなランチボックスに詰め込んで、帰りました。
「意地汚いな~」
『にーちゃん! ねーちゃん!』
「もうモロにお兄ちゃん達じゃない~」
『おぉっ! こんなにいっぱい持って帰ってきたの!?』
『でかした』
女の子のくせにズボンばっかりはいている長女はぱくぱくと。
シャツを出して着ているだらしない長男は本を読みながら。
そしてシンデレラは第二弾を取りに行く間にもぐもぐと。
三人はお腹一杯、美味しい料理を食べたのでした。
おしまい。
「えっとね~。言いたいことがたくさんあるの~。
1、お母さんどうしたの~?
2、性別最初と最後で変わってるよ~。
3、私は蹴られて終わりってどうなの~?」
「1.お母さんは無事、王子様と結ばれました。
2、子どもたちネタは途中で思いついたんだから仕方ない。
3、光は蹴られたんじゃない。光は……ほら! ランチボックスだ! 大活躍!」
そしておとーさんは殴られましたとさ。痛い。
ちなみに没ネタ、ツンデレラの言葉。「べ、別に王子と結婚なんかしたくないんだからねっ!」内容が思いつかなくて没にしたんじゃないんだからねっ!