転生ミミック娘の目指せダンジョンマスター
こわいこわいこわい。
人間が怖い。
わたしはいつも薄暗い洞窟の奥でひとり震えてる。
交通事故で死んだわたしは、気づくと異世界でミミックになっていた。
ミミックというのは宝箱に擬態して人を襲うモンスター。
でも、モンスターに転生したからって人に敵意なんて持ってない。
ただ死にたくない、生きていたいだけ。
だからわたしは、洞窟の奥に隠れて一日中震えている。
それなのに人間は宝を求めてわたしを襲いにくる――
◆
「おーい、パンドラー、いるかー」
「わひぃっ!?」
突然、洞窟に響いた大声でびくりと体が震えた。
「そんなガタガタ震えてたらモンスターですって白状してる様なものだろう」
少し蓋を開けてこっそり外を覗く。
そこにいたのは、見ているだけで正気を削ってきそうな奇妙な生物――ゴリマッチョな逞しい二本足を生やした宝箱、知り合いのミミックだった。
「もーっ!なんでこっち来るんですか、わたしの縄張りに来ないでくださいよぉ」
「ひどい言い草だな。汝がさびしがっているかもしれないと思い、我が心配して見にきてやったのに」
この保護者気取りのミミックは、ガイル先輩。
引きこもりなわたしの数少ない話し相手だ。
ちなみに、彼はわたしと違って生まれつき名前を持たない野良ミミックだったので、名前はわたしがつけてあげた。名前の由来は彼の得意技。宝箱へ手を伸ばした冒険者のアゴを一撃で砕くサマーソルトキックにちなんでつけた。
あと、普通のミミックが移動する時は多脚戦車みたいになる。人間みたいな足が生えるのはガイル先輩だけだ。
「このところヒマなのもあるが」
「先輩が冒険者倒しすぎたからでしょ。それに蓋を開けられる前に攻撃するのはミミック的にレギュレーション違反だから長老が注意しとけって」
「年寄りは頭が固くて困るな、相手にしなくていいぞ」
ガイル先輩はミミックなのに待つのが苦手で好戦的な性格していた。
待ちができないのにガイルとは……最近ちょっと名前の付け方を間違えたな~、と後悔してる。
「ところでパンドラ、生まれてからどれくらい経つ?」
「んん~10年くらいですかね」
「ならそろそろ進化できるんじゃないか」
「進化?」
異世界に来てからはじめて聞く言葉だった。
ミミックの場合、一度も戦闘をしたことがなくても、10年くらいで進化して新しい能力を得られるらしい。
念じると頭の中にステータス画面が浮かんでくる。
――――――――――――――――――――
名前:パンドラ
性別:女
種族:レッサーミミック
魔法:なし
技能:擬態レベル1
特記事項:ユニーク個体
進化が可能です。進化しますか。YES/NO
――――――――――――――――――――
おや、見覚えのないメッセージが出ている。
それじゃYESをポチっとな。
すると身体が光に包まれた。
種族はレッサーが外れてミミックに、スキルは擬態レベル2に上がっていた。
体も一回り大きい宝箱になっている。
「やった!これで人間に怯えないですむ!」
「いや、まだホブゴブリンよりマシになった程度だ。この洞窟に来る冒険者と戦うならあと2回は進化しておきたい」
どうやらわたしの安息の日々はまだ遠いらしい。なんでも近くに魔王軍四天王の城があって、ここまでやって来るのは強い冒険者が多いんだとか。
最悪だ~、一体どれくらい強くなったら冒険者に怯えずにすむんだろ。
参考にと日々冒険者を返り打ちにしている先輩のステータスを教えてもらう。
――――――――――――――――――――
名前:ガイル
性別:男
種族:びっくり箱
魔法:なし
技能:擬態レベル1
格闘レベル10(足技のみ)
身体強化レベル10
ブレイクダンスレベル10
再生
特記事項:後天性ユニーク個体
開けなくても蹴りが出る
パンドラのお兄ちゃん(自称)
――――――――――――――――――――
何でミミックの固有能力捨てて肉弾戦に全振りしてんのこの人?
しかも最後、あんたはいつわたしのお兄ちゃんになったんだ。
不審者を発見してしまった時の眼でじっと見つめる。
「実は踊るのが趣味でな、恥ずかしいから誰にも言うなよ」
ツッコみたいのはそこじゃない。
けどまぁ強そうなのは間違いないからいいか。
洞窟の冒険者退治はガイル先輩にお任せしていれば大丈夫そうだ。
…………いや、見せて欲しいとか思ってないから!
ここで踊んなくていいから!
◆
「宝箱はっけーん!」
ある日、いつものようにお昼寝していると人間の声が聞こえた。
冒険者だ。
ついに洞窟の一番奥まで来る冒険者が現れてしまった。
「この洞窟やたらミミック多いんだから不用意に近づくな」
「ヘーキヘーキ! ミミックなら開けるまで襲って来ないし、だいたいそんな雑魚モンスター、オレ様の敵じゃないって」
相当腕に自信のある冒険者らしい。
ミミックは弱いモンスターじゃないのに警戒もせず近づいてくる。
こわい、このままでは殺されてしまう。
カタカタと体が震える。
なんとかやり過ごさないと。
そうだ、本物の宝箱のフリをするんだ。
擬態スキルを発動して身体の中に何か価値のあるモノを創造する。
擬態スキルで作ったモノは身体から離れても数時間は形を保つ。
お願いだから、だまされて帰ってぇ。
「なんだこれ……おいお前ら、やべぇぞこの洞窟」
「どうした」
「いいから見てみろ」
わたしの身体の中には、セーラー服姿の女の子が生成されていた。
これ前世のわたしじゃん。
しかも事故って死んだ直後の血塗れの姿。
考えたら本物の財宝とか見たことないし、擬態スキルのレベル低くてよく知りもしない物は創造できないや。
「この洞窟、もしかして奴隷商のアジトなんじゃ……」
「魔族の人体実験施設なのかも」
「にしても死体を箱詰めって……胸糞わりぃにも程があるぜ」
空っぽになった宝箱を壊そうと男が剣を振り上げた。
うぎゃーやばいやばい、物に当たるの反対!
そんなの食らったら死んじゃう!
ぎゅうっと目を瞑る。
その瞬間、車に轢かれたような衝撃音と悲鳴が響いた。
「去れ人間」
ちらりと目を開ければ、仁王立ちするゴリマッチョな脚が、わたしを守るようにして視界を塞いでいた。
「ふざけるなッ! オレ様は帝国の勇者だぞ! オレ様と出会っちまったモンスターは皆殺しって決まってんだよォ!」
冒険者たちは壁際まで蹴り飛ばされたのにもう回復していた。
あれが治癒魔法ってやつか、すごいなぁ。
だけど、ガイル先輩の方が強者の余裕を感じられる。
帝国の勇者さんは勇者なのにその辺の街にいるチンピラ臭がひどい。
「妹が怯えるから今回だけは見逃してやると言っているのだ。次はそのブサイクな顔面に飛び膝を喰らわすぞ」
「誰がブサイクだ、顔すらねえミミックのくせにッ」
「待って、あのミミック普通じゃないわ。ここは退きましょう」
「つうかアレのどこがミミックなんだ。どう見ても邪神の脚だけ封印された聖櫃とかだろッ!」
冒険者は先輩から目を逸らさないように擦り足で後退りしていく。
帝国の勇者さんだけは最後までガイル先輩に吠えていた。
ふう、危機は去った、助かった。
それより先輩は今までどこにいたんだ。
やられちゃったのかと思って心配したじゃん。
聞いてみると、隣国のダンジョンで開催されていたフリースタイルダンス大会に参加していて帰国が遅れたらしい。
助けてもらってなんだけど、遅刻した理由に納得がいかない。
「むっすー」
「機嫌を直してくれ。だいたい宝箱に女の子が入ってたら誰だって不審に思うだろ。なんであんなものを出したんだ」
「あれしか出せなかったんだもん」
脚を生やす擬態しかできないガイル先輩に言われたくない。
先輩よりわたしの方がまともなミミックしてる。
しかしまあ、今回のことでよーくわかった。
いつまでも逃げ隠れするには限界がある。
死なないためにはわたしも強くならなくちゃダメなんだ。
わたしが何もしなくても敵は攻めてくる。
どうしたら人間に怯えないで済むぐらい強くなれるのか先輩に教えを乞う。
「力が欲しいか」
「はい」
「ならば、ミミックの最終進化形へ至るしか道はあるまい」
最終進化形とな?
先輩みたいに一日中スクワットでもやらされるのかと思ったけど違うようだ。
「ミミックって進化していくとどうなるの?」
「進化の方向性によるが、その一つにダンジョンがある」
「ダンジョン? どういうこと?」
「つまり汝自身がダンジョンになるのだ」
先輩曰く、
世界各地にあるダンジョン。
その正体は、進化し続けて超巨大になったミミックなんだそうだ。
何度か引っ越し先を探して先輩と外へ見学に行ったことがあるけど、モンスターが勝手に生まれてきたり財宝が不自然に置いてあったりして変な所だと思ってたんだよね。
餌で釣って中で死んだ冒険者を溶かして食べる……確かにやってることはミミックの生態と同じだ。そっか~、ダンジョンってわたしのお仲間だったのか~。
「つまりこの洞窟も……わたしのママってこと?」
「いや、ここはただの洞窟だ。そもそもここダンジョンじゃないし」
「ダンジョンじゃなかったのかよ」
この洞窟は元々人間の貴族が王様に納める税金を誤魔化すために財宝を隠していた場所だった。そして、地脈から流れてきた魔力の影響で置かれていた宝箱が変化してモンスターになったのが、わたしとか先輩とか他のミミックらしい。
なるほどね~と頷いていたら、先輩が何か言いたそうに見ていた。
「どうだ、我がお兄ちゃんだと理解してくれたか」
「フツー同じ場所で生まれただけの人を兄とは言わないと思います」
「本当にそうか? 普通、常識、一般論……それらの言葉に正論という意味はない。汝は自分の言葉で我がお兄ちゃんではないと証明できるのか?ん?」
中学生に論破されて逆ギレする先生みたいなこと言い出したな。
しつこくてイラっとする。
同じ病院で生まれただけの男から「僕が君のお兄ちゃんだよ」なんて言われたら、誰でも警察に通報するでしょ。それが答えだわ。
まあ何はともあれ、わたしは変質者の疑いがある危ない先輩ミミックと共に、進化に必要な力を溜めるために冒険者狩りをはじめたのだった。
◆
わたしとガイル先輩のタッグはなかなか相性が良かった。
通常個体より小さなわたしはミミックだと見破られることもなく、冒険者があまり警戒せずに近づいてくる。そこに、ガイル先輩が背後から不意打ちをかますというコンボ攻撃だ。ミミックが自発的に攻撃するという反則行為により、冒険者は容易く倒されていった。
高位のモンスターを倒すほど人間が効率よく強くなれるように、モンスターも強い人間を倒したほうが修行の効率がいい。魂の内包量とやらが違うそうだ。
もともと強い冒険者が宝物を求めて探検に来る洞窟だったこと。以前先輩が逃がした帝国の勇者さんが『ここは邪神復活を企む魔族の重要拠点だ!』と吹聴したこともあって狩りの獲物には困らなかった。
先輩におんぶにだっこ状態だけど、わたしはどんどん進化していった。
「こいつを倒せばダンジョンミミックに進化できそうだな」
「長かったですねぇ」
「や、やめろォ! オレ様は帝国の勇者だぞ!」
「だまって妹の養分になるがいい!」
先輩がカニばさみで勇者の身体を拘束したところにトドメを刺す。
勇者から流れてくる力を受け取ってステータスを確認すると進化が可能になっていた。
もちろんすぐにYESを選択。
全身がキラキラと光り、種族がダンジョンミミックへと変化した。
ゴージャスになった宝箱の身体の中に巨大な力の核みたいなものが生まれている。
「うむ、洞窟もダンジョン化しているな」
不思議な感覚だった。
自分の中に先輩や他のミミック、冒険者もいる。
「うえ~、寄生虫が動いてるみたいできもちわるい~」
「言い方に気をつけてくれ。おじさ……お兄ちゃんの心は繊細なんだ」
「だから先輩はお兄ちゃんじゃないし」
ツッコみを入れようとすると先輩に向かって岩壁から小石が飛んだ。
なるほど、わたしの身体と洞窟が一体化している。
宝箱の体とは別に意識が広がっていく。
溢れるこの万能感、まさに無敵!
もはや冒険者など恐るるに足らず!
「いや、これからがまた大変なんだが」
「ほへ?」
「ダンジョンの核は防御力もないのに、一回壊されたら終わりだからな」
「聞いてないんですけどォ!?」
ダンジョンミミックに進化したら、その後はダンジョンを改造して自分を守らせるための強いモンスターを勧誘する必要があるらしい。
自分で生んだモンスターを育ててもいいけど、それには時間がかかる。その上、ガイル先輩のような凶悪モンスターにパワーレベリングしてもらわなくてはならないため効率が悪い。つまり、大事なのは人材育成よりも人材誘致となる。
人材誘致と同時進行で餌となる人間をおびき寄せる目玉も用意しないといけない。
身体が大きくなったことで生きていくだけでも大量の魔力が必要になっている。ダンジョン内に住まわせるモンスターの食料なんかも必要だ。それらを賄うために、餌となる強い人間をおびき寄せるのだ。
……うーん、RPG的な戦闘パートが終わったと思ったら、今度は経営シミュレーションがはじまったでござる。ただ安息な日々を求めていただけなのに……
「でもモンスターって何があったら喜ぶんですかね?」
「いつでも蹴れる冒険者のサンドバッグとかあると喜ばれるぞ」
「それで喜ぶのはガイル先輩だけです」
「じゃあ筋トレ施設」
「いらない」
先輩が欲しいものは論外だけど、方向性は案外間違ってないかもしれない。
すなわち、わたしが目指すのはアミューズメント施設だ。
モンスターの娯楽はよく分からないし、血生臭いのはわたしが嫌。
というわけで、あまり魔力を使わない低コストで出来る改造から。
まずは洞窟奥にあった広い鍾乳洞を温泉に改造してみた。
野生のモンスターでも水浴びはするからね。
きっと喜ぶモンスターはたくさんいるはずだ。
最初にやって来たのは、サキュバスのお姉さん達だった。
美容効果を求めてきたらしい。
しかも、湯を汚されたくないと他のモンスターが使う前に施設を占拠された。
「ビッチは出て行け! 妹が卑猥なエロトラップダンジョンと勘違いされるわ!」
「アンタの見た目の方がよっぽど卑猥でしょうが」
「なんで箱に足が生えてんのよ、そっちこそ下着くらいつけなさいよ」
「我が宝物は宝箱の中にちゃんとしまっておるから下着なぞ要らんのだ」
「サイッテー!」
「ビッチの脳みそでは小粋なミミックジョークが理解できんか」
ガイル先輩が「妹の教育によくない!」とサキュバスと戦争をはじめた。
しかし、冒険者から「邪神の脚」と恐れられるガイル先輩も魔法にはめっぽう弱く、サキュバスを追い出すには至らない。
そうこうしている内に、ダンジョンにサキュバスが住み着いたと聞きつけた弱男冒険者が集団で訪れるようになった。
弱男冒険者。
それは最低辺の冒険者たちだ。
運も才能もなく、山師として一発当てることすら諦めた社会の敗北者であり、最後はサキュバスに精気を吸い取られ幸せな死を迎えたいと願う哀れな存在。
「勝手に人間が来て魔力も溜まるし、効率的には最高なんだけど……」
「自ら死を求めるとは、古代の魔王が作った人間牧場を想起させる悲惨な光景だ」
このままだと弱男の自殺の名所とか呼ばれそうでイヤだな。
サキュバス達とは、温泉を人質にして人前にはあまり出ないよう交渉した。
彼女達には、わたしの代わりに魔法でダンジョン内の環境を整えてもらう。
魔力の節約は大事よね。
でも、弱男を釣るのをやめた分、サキュバスを住まわせる食料が補えない。
なので今度はダンジョンの土壌を改善してみた。
これで洞窟内でも普通の農作物を育てられるようになるぞ。
すると強い冒険者に狩られるだけの弱いモンスター……ゴブリンやコボルト、オーク達が外から逃げるようにして住み着いた。
この一帯は弱いモンスターには住みづらい場所だったらしい。彼らはわたしの指導に従って畑を作り、人間から奪ってきた家畜を育てるようになった。
しかし、彼ら弱小種族の苦難は終わらない。弱いモンスターが生息していると広まれば、駆け出し冒険者が修行の場所として訪れるようになる。
といっても、勇者のようなアホみたいに強い人間から一方的に狩られるよりはマシだ――とゴブリン達もせっかく手に入れた棲み処を手放そうとしない。彼らに開放しているダンジョンの入り口付近では、いつも戦闘が行われるようになった。
「……おや? 駆け出しからベテラン冒険者まで来てる。これって意外といい感じなのでは?」
「スケベ男もまだ来るしな」
「そこはもうあきらめました」
モンスターも死ぬけど人間も死ぬ。
ダンジョンミミックとなったわたしにとってはどちらもイイ餌だ。
大事なのはこのサイクルを終わらせないこと。
そう考えると、わたしってなかなか優秀なダンジョンマスターなのかも!
◆
気づけば、わたしは順調に力を蓄えていた。
戦場を求めた鬼族が住み着くようになり、人間から奪った宝物欲しさにドラゴンまで住むようになった。
もう洞窟の奥で人間を恐れて震えることはなくなった。
しかし、わたしは重要なことを一つだけ見落としていた。
人間だった頃の感覚が残っていれば、こんなことにはならなかったのに。
「なんでダンジョンに進化したのに挨拶にも来ないのよ! 組合ナメてんの!?」
わたしは大先輩であるダンジョンミミック達から詰められていた。
彼女達への挨拶回りをしなかったせいで。
人間にとってダンジョンは資源の宝庫。
ダンジョンにとって人間は餌。
このバランスを崩さないために、お互いの立地条件などからダンジョンの難易度を決めて人間の流通をコントロールしているダンジョンミミックの組合が存在していたのだ。
ガイル先輩、わたしそんなの聞いてないですよぉ。
「すいません。箱入り娘なもので世情に疎くて……ミミックだけに」
「誰が上手いこと言えなんていったのよ!」
「ひぃっ」
「だいたい生まれて10数年のミミックがどうやってそこまで進化できたの!? 私なんて三百年以上かかったのよ! はやく白状なさい!」
「なにかズルでもしたんでしょう! もしかしてバックに魔王がいるの!?」
「組合を裏切るつもりならタダじゃおかないわ!」
「次の会合までに満足いく答えを用意しておくのね!」
鬱陶しいお局様……もとい、大先輩達は気がすむまでわたしを罵倒し、恫喝し、最後に組合費と言ってわたしの溜め込んだ財宝の半分を要求して帰っていった。
「なにぃ! 我がダンス大会へ出てる間にあのババアどもが来たのかッ!?」
肝心な時に留守にしがちなガイル先輩が驚きの声を上げた。
「来たのかッ!?」じゃないですよもうっ。
大先輩方は、自身のダンジョンに住まわせている最強のモンスターを引き連れてわたしを脅しに来たのだ。もう怖いなんてもんじゃなかった。八つ当たり気味に先輩に文句を言う。
しかし、ガイル先輩にとってこの状況は想定内だったようだ。
ついにこの時が来たと笑っている。
ダンジョンは大きく、消費されるエネルギーも大きい。
外から奪える資源を独占しなければ生きていけない。
この世界にいくつも存在はできないのだ。
組合とは若いダンジョンを成長させないために作られた老人のための組織。
いずれ数が増えれば、ダンジョンミミック同士が互いに生き残りをかけた食い合いをしないと全員飢えて死ぬのは目に見えていた――などと物騒なことを抜かす。
「だが妹よ、全てのダンジョンを倒した暁には永遠の安息が約束されておるぞ」
せっかく安定した生活ができるようになったと思ったのに、今度はダンジョン同士での潰し合いがはじまるらしい。
最初はダンジョンミミックに進化すれば一生安泰って話だった気がするんだけど、どうしてこんな事になったんだろう。おかしい、戦いが大好きなガイル先輩にハメられた感が否めない。
「我らの戦いはこれからだっ!」
ミミックに転生したわたしの戦いは続く――!!




