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(後編)あいの響き①

美しき星(後編)~あなたは、魂の声を信じられるか?~

 あいの響き


 週に一度の面会の日に、ライラは必ず私を訪ねてきてくれた。

「地球はね、光を失ったかのように見えるわ」

「それは、どういうことなんだ?」

「魂にアクセスできない人が、また増えたってこと」

「オリジン装置を失ったからか?」

「うん、きっとそうよ」

「元の木阿弥なのか?」

「そんな感じね。お隣の移住者は、都会へ帰っていったって」

「えっ? 都会も仕事がないだろうに」

「田舎よりは、まだましだって。自給自足なんて、できやしないじゃないかって、鍬を投げて出て行ったって話よ」

「そもそも、自給自足は無理な話だろ?」

「田舎に住んでいる人は、わかっているけど、都会から移住してくる人は、大きな夢を持ってくるからね」

「そうか……」

「私たちは、農業をするために田舎に住んでいたわけじゃなかったでしょ?」

「えっ、そうだったのか?」

「そうよ」

「でも、農業はしていたじゃないか?」

「食べるための野菜やお米を作る暮らし方をしていたのよ。食べ物をお金に変える農業ではなくね」

「暮らし方か……」

「どう暮らしたいかでしょ?」

「そうだな。お金で食べ物を買って暮らすか。自分で作って暮らすか。でも、自給自足できそうな気がするのは、わからんでもないな」

「自給自足の暮らし方がしたいなら、もうサバイバルするしかないじゃない?」

「確かに」

「考え方を変えないと、田舎の良さは感じられないわ」

「そうだな。何にもないけど、全てある。全てあるが、多すぎる。草刈りが大変なんだよ」

「何よ、哲学的ないい話でもするのかと思ったら、草刈りが大変って」

「でも、そうだろ?」

「確かに」

 二人とも草刈りの大変さをため息交じりに話した。

「ところで、真人と守人はどうしている?」

「二人とも、じっちゃんのことを心配していたわ」

「そうか……」

「学校も大変なことになっているって言っていたよ」

「何があったんだ?」

「先生たちが、今までのことを反省して、すごく厳しい授業に変わってしまったって。なんでもかんでも先生の指示に従わないとひどく怒られるらしいわ。ペンケースの位置まで指定されるって。宿題も山のように出て、放課後遊べないって嘆いていたわ」

「ペンケースの位置まで指定されるのか?」

「そう。これでは、自分で考える子どもにならないわよね」

「そういえば、あの頃、不登校ばかりだってニュースで言っていたけど、その後は、どうなったんだ?」

「オリジン装置が起動していた頃は、家庭で学習するスタイルだったみたいだけど、今では、家でゲームばかりしているらしいわ。親も子どもをただ見守るだけ。あれは、単なる甘やかしね」

「これでは、ますます将来が危ういな……」

「将来どころか、今が危ういの」

「えっ、どういうことだ?」

「また、政治が元に戻ってしまったの。マスコミのせいだわ」

「ええっ? また、嘘を垂れ流しているのか?」

「そうなの。また、嘘や恐怖を植え付けていたわ」

「何の恐怖なんだ?」

「またパンデミックよ」

「まだ、そんなことをやっているのか?」

「そうよ。また病院が薬を大量に投与しているの。そのせいで病気になって、また病院へ行く」

「マッチポンプだな」

「そう。みんなも一旦気づいたはずなのに、どうしてまた信じてしまうのかしら? 宗教もそうよ。みんな宗教から離れたのに、また宗教を求めて多くの人が集まっているの」

「新しい宗教ができたのか?」

「いいえ、古い宗教がまた復活したの。何千年も前の教えこそが正しくて、人々を救うのは宗教しかないと吹聴して回っているわ。それに、また宗教が政治を動かしているの」

「政教分離は、やはり机上の空論か……」

「宗教の教えが唯一のルールだから、そのルールを法律にしたいと思うのは、不思議ではないわね。政治に興味のない人が多いって嘆いていたけど、宗教に入る人が増えたから、政治に興味を持つ人が増えたみたいよ」

「えっ? 政治に興味を持たせるためには、教育ではなく宗教だったということなのか?」

「そういうことね。政治を利用したい人だけが、政治に興味を持つのよ」

「もしかすると、前よりひどくなったのかもしれないな。これは、オリジン装置のせいか……」

「オリジン装置は、素晴らしい機械だわ。でも、元々、魂にアクセスしていない人たちには、ただの催眠をかける道具でしかなかったのかもしれないわね」

「催眠がとけたら、元の世界に、いやもっとひどい世界になっていったのか……」

「あっ、時間だ。また地球へ行って、様子を見てくるわ」

「ああ、真人と守人に、じっちゃんは元気だから心配するなって伝えてくれ」


 私は、ライラから、現在の地球の様子を聞いて、早くここから出て、地球に帰らなければ取り返しのつかないことになるのではないかと感じていた。


 私は、独房にいる間に、三冊のノートに書き溜めたメッセージがある。

 ライラが私に『一人でいる間に、もし、つむじに何かに違和感があったら、自らの魂を信じて、送られてくるメッセージを書き留めてみて。私が、地球で書き残したように』と差し入れをしてくれていたのだ。

 つむじに何か違和感? 私には何のことやらさっぱりわからなかったが、何もないこの独房で、まっさらなノートと鉛筆は、私に安心感を与えてくれた。

 独房に入って、ほとんどの時間を何もすることがなく過ごすしかなかった私は、運動のためにヨガをして一日を過ごした。シャバーサナをして、瞑想しようと思っても、私の心の中には『なぜ、どうして私はここにいるんだ』そういう思いばかりがよぎった。ビジョンも何一つ見ることはなかった。シャバーサナをして、幸せに感じるときは、そのまま、眠りにつけた時だけだった。

 いつだっただろうか、ある時、つむじがムズムズするのを感じた。

 私は、ハッとして、ノートを取り出した。

『与えたし、白き光、使いなされ、白き光』

 誰かの声が聞こえたわけではない。しかし、確かに、こう言っているのがわかったのだ。

 昔、ばっちゃんもそんなことを言っていた。

『わかる』という感覚だ。そうか、これが、わかるという感覚なんだ。

 私はようやくその意味を自ら体験することで理解できたのだった。


 メッセージは、次から次へとやってきた。

 繰り返し同じようなメッセージが来るときもあるが、全く意味が分からないこともある。

 翌日になって、前日の話の続きなんだなと後になって気づくこともある。

 ある時は、とても懐かしい友人からのメッセージのような時もあった。

 私は、孤独の中にいたが、メッセージを受け取れるようになってからは、毎日が賑やかだった。ノートを閉じる暇なく、メッセージを書き留めたときもある。一人だが、孤独ではなく、必ずここから出られるという安心感と希望を持つことができていた。 


『あいの響き、これより歌いて下さいませ』

 私は、メッセージの通り『あいの響き』を歌い続けた。

 声のバイブレーションは、頭の先から、足の裏まで全身で感じた。

 この感じは、まるで宇宙の意志が電気信号となって、体全体で受け止めているようだった。


『新しき仕組みは、光の色なり

     それぞれの色、織りなして 

               色のチカラを使いなされ』


『光とは、扉を開く仕組みなり

  こころの扉

  身体の扉

  そして、宇宙の扉を開いて開いて参りませ』



「アディルは、元気にしているのかい?」

「ええ、いつものように元気よ。アディルもラマナに会いたがっていたわ」

「清田さんの面会に行ったから、俺の方には来られないんだろ。そういうシステムだから仕方ないさ」

「私は、ラマナに会っているから、清田さんには会えないけど、彼も元気にしているみたいよ」

「そうか、それは良かった。あっ、そうだ、今日は、ライラに報告があるんだ」

「えっ、なあに?」

 私は、ノートを彼女に見せた。

「えっ、メッセージを受け取ったの?」

「ついに、俺もスターシードの仲間入りさ」

「すごい、どうだった? つむじがムズムズしたでしょ?」

「ああ、すごくムズムズして、最初は、つむじをかきむしっていたよ」

「わかるわ。懐かしい」

 ライラは、嬉しそうに微笑んだ。

「それで、メッセージは、どう? わかる?」

「わかるのもあるけど、わからないのもある」

「そうね、そんなもんだったわ」

「わからなくても気にならなかったのか?」

「気にはなるけど、わからないものはわからないもの」

「そりゃ、そうだな」

「ほらっ、覚えている? アディルが送った中にあった『白き山、待ちておる』っていうメッセージ、あれ、わかるわけないでしょ」

「確かに、あれだけだと雪山かと思うよ。でも、どうしてわかったんだ?」

「山好きの人がいてね、白き山っていえば、白山だよって教えてくれたの。重要なことは、誰かが、ちゃんと私に伝えてくれる仕組みになっているのよ」

「伝えてくれる仕組みか……」

「重要なメッセージは、何度も何度も繰り返し送られてくるわ」

「何度も来ているぞ」

「それ、きっとラマナにとって重要なメッセージよ」

 私は、ノートをめくって、何度も届いているメッセージを確認した。

「新しい仕組みは、光の色だって言うんだ。その色の力を使えっていうメッセージなんだけど、どうやって使うか、さっぱりわからないよ」

「新しい仕組み……私にもずっと届いていたわ。これって、やっぱりあの古文書の教えの通りね」

「えっ? あいの響きの?」

「そう。その時代に、その人に合った教えを受け取るの」

「宇宙の意志を受け取っているってことか?」

「そういうことだと思うの。えっとなんだっけ? 光?」

「光の力を使えって言ってきているんだ」

「光か、懐かしいわね。私も地球が五次元に上昇したときに、宇宙の大祝賀会があって、光を発しろっていうメッセージが来たわ」

「えっ、ライラにも来たのか?」

「うん。2025年8月25日。ラマナにも来たの?」

「いや、ディストピア、じゃなかった、ケプラーでも同じことがあったんだ。五次元に上昇したときに、光を発した者たちがいて、その記念に宝石がちりばめられたコロシアムが今でも残っているんだ」

「地球にも作って欲しいわね」

「ダメだよ、地球では宝石が盗まれるだけだ」

「確かに……、それで、試してみた?」

「試す?」

「光の力よ。ラマナは、瞑想したらビジョンを見ることができるんでしょ? 第三の目が開いているっていうことよ。第三の目を使って、光に色を映し出すの。それから、念のチカラを使うのよ」

「念のチカラ? ライラは、超能力が使えるから、簡単に言うけど……」

「私が、超能力を使えるようになったのは、ラマナと一緒で、ビジョンを見てからよ。ラマナもきっとできるようになるわ。それに、私、超能力って、新しく身に着けるものではないと思っているの」

「は? どういうことだ?」

「元々、人間は、そういう能力を持っていて、何かのきっかけで引き出されるのよ」

「何かのきっかけ?」

「私は、瞑想だった」

「瞑想か……確かに、初めてビジョンを見たのは瞑想だった」

「ラマナのビジョンは、現実を映し出して、危機を救ったでしょ。既に超能力を発揮していたってことよ」

「そうなのか? 俺、テレパシーの方がいいんだけどなぁ」

「そうでもないわよ。相手の心がわかりすぎて、疲れるときも多いのよ。一人になりたいっていつも思っていたわ」

「それで、ばっちゃんは、孤独を愛していたのか」

「孤独を愛していたわけではなくて、孤独が必要だっただけ。でも、孤独ではなかったわ。私の中に、信頼できる友ができた感じね」

「友か……」

「時には、師。時には、恋人」

「恋人?」

「いつも優しく私に寄り添ってくれる存在ね」

「アディルがいるのに?」

「アディルは、別格」

「へぇ」

「ラマナもね」

「ついでにですか?」

「大切な存在よ。ねえ、ラマナも一人の時間が必要なタイプでしょ」

「そうなんだよ、俺も一人の時間が必要……いや、一人の時間が好きなタイプだな」

「だったら、今はちょうどいいわね」

「いや、この状況は、それとは違うだろう」

「まあ、似たようなもんだし、どうせ、暇なんだから、超能力を引き出してみて」

「どうせ暇とか言うなよ」

「あらっ、間違ったかしら?」

「いいえ、その通りでございます」

「時間だわ。また来るね。あっ、ノート、今度また差し入れするね」


 ライラが、帰った後は、静けさが深く重く感じられた。

 長く一人でいる時間よりも、人恋しさが募る。今、ライラと別れたばかりだというのにだ。私の周りの人たちのことを考えずにはいられない時間だった。



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