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(後編)第三章 犯罪者①

美しき星(後編)~あなたは、魂の声を信じられるか?~

 第三章


 犯罪者


 急に大きな音を立てて、玄関が開いた。

「逃げて!」

 ライラが叫んで、走って入ってきた。

 何だ? どういうことだ?

 私は、地震が起きたときのように、気持ちだけは慌てているが、体が全く動かずにいた。

「とにかく、逃げるのよ、私についてきて!」

 ライラは、玄関で私の靴を持ってきて、居間で座り込んでいた私の手を引っ張ると、裏口から山に向かって駆け上がった。

「すぐに見つかってしまうわ。どうしたらいいかしら?」

 ライラは、時々上空を警戒しながら険しい顔をした。

「ライラ、何があったんだ?」

 裏山のヒノキ林のなかで、私は、ライラを落ち着かせてから質問をした。

「清田さんも捕まったの。オリジン装置の件よ」

「オリジン装置がどうしたんだ?」

「美しき星のオリジン装置を地球で起動させたのがいけなかったみたい。反逆罪よ」

「ええっ? 反逆罪?」

「そう、美しき星で一番重い刑よ」

「どんな刑なんだ?」

「死刑よ。しかも、もう二度と、生まれ変わることができないの」

「そんなことができるのか?」

「よくわからないけど、生まれ変われないって聞いているわ。アディルが、時間稼ぎをしているから、とにかく早く逃げましょう」

「逃げるって、徒歩でどうやって?」

「人混みの中にいれば安心よ、あの人たちは、酷いことはしないから」

「ライラ、正気か? この田舎のどこに人混みがあるというんだ」

「もうどこでもいいわ。とにかく、人が多いところに行きましょう」

 私たちは、一山超えて、孫の家まで行き、無断で軽トラを借りて近くの小学校まで飛ばした。二十人ほどの児童が、グランドでサッカーをしていた。

「あっ、ライラだ!」

 孫の真人が、ライラに気づいた。

 私たちは、石段の中ほどに腰掛けて、子どもたちを見ているふりをしながら、これからどうするかを話していた。

「アディルが時間を稼いでいるというのは、どういうことなんだ?」

「ラマナの居場所を知っているのは、清田さんとアディルと私だけだから、清田さんは、捕まっているので、もう地球に来させるわけにはいかない。アディルと私は、テレパシーで情報を得て、アディルができるだけ長く美しき星で、逃げ回って時間を稼ぐ。その間に、私が地球に来てラマナを逃がすことにしたの」

「そうか……。でもアディルも捕まる可能性があるんじゃないのか? ライラもだろ?」

「……」

 ライラは、とても不安そうな顔をしていた。

「ライラ、オリジン装置の件は、正直に事の顛末を話すよ。美しき星の人たちは、皆いい人ばかりじゃないか、きっと理解してもらえるさ」

「そうとは限らないわ。他の星のことになると全く違うわよ。特に今回は地球の人々への介入をしたのが大きな理由よ。それに、オリジン装置を地球で起動させようと言った清田さんの理由が、息子さんやラマナの命を救うためでは、利己的すぎだという理由だそうよ」

「利己的か……」

「もし、俺が逃げ切ったとしても、清田さんは、処刑されてしまうんだろ?」

「……」

「じゃあ、ダメだ。俺は、清田さんに命を助けられたし、清田さんには愛歌がいる。小さな赤ちゃんがいる者に、俺の分も背負わせるわけにはいかないよ」

「……」

「ライラ、大丈夫、心配するな。アディルに、テレパシーで今の話をして、今から美しき星へ行くと伝えてくれないか?」

 しばらくの間、ライラは、目を閉じて集中していた。


「アディルと連絡がとれたわ」

 ライラは、そう言って腰を上げた。

 ちょうど、体育の授業が終わり、皆が校舎へ向かって走ってきた。孫の真人が、石段を登りながら「じっちゃーん」と大きな声で呼んだ。

「真人、これからしばらくの間、留守にするから家のことをよろしくと、お父さんに言っておいてくれ」

「えっ、そうなの。いつ帰るの?」

「いつ帰るかわからないけど、なるべく早く帰るよ」

「うん、わかった」

 真人は、校舎へ向かって走って行った。そして、校舎に入る手前で振り返り、私たちに大きく手を振った。

「ライラ、行こう」

「……」

「ライラ、どうした? 泣いているのか?」

 ライラは、私に背を向けた。

「ラマナ、ごめんなさい。私が、あなたを巻き込んでしまったのね」

「えっ、何言っているんだ、オリジン装置のことは、ライラには関係ないことじゃないか」

「私が、あの時、ラマナを美しき星へ連れて行かなければ、地球でのんびり暮らせたのに……」

「ライラ、のんびり暮らせはしなかったよ。アカシックレコードの崩壊は、全宇宙を巻き込む問題だったんだぞ。これは、俺の使命で運命なんだよ」

「私、本当にどうしたらいいか、どうやってラマナを助けたらいいか……」

「大丈夫。俺だぞ。美しき星の英雄だぞ」

「……」

「黙るなよな」

 私は、うつ向いているライラの肩を持って前後に体を揺すった。


 美しき星 警察署取調室

 私の目の前には、おそらく翻訳機らしきものが一台机の上に置かれていた。

 取り調べ室と言っても、日本のドラマに出てくるような、薄暗く、グレーの事務机、パイプ椅子、窓には鉄格子、被害者などが犯人確認のために通される隣室にあるマジックミラーなどはない。この取調室は、壁一面木材で出来ており、木製の机と椅子、監視カメラ二台、窓は、部屋の上部に細い明り取りがついている。

 黒いラインの入ったコートを着た男性が二人、部屋に入ってきた。

 私は、日本でも取り調べなど一度も受けたことなどもちろんないので、不安でたまらなかった。椅子に深く腰掛け、深い呼吸をして気持ちを落ち着かせた。

「あなたと一緒にこれを企んだシュリから、概ね話を聞いているが、君からも話を聞かせてもらおう。オリジン装置のことをどうやって知ったのか、そこから話してもらおうか」

 シュリ……、清田さんの美しき星での名前は、そうか、シュリだったな。オリジン装置を地球で起動させたのは、確かに計画して実行したが「企んだ」という言い方には語弊がある。

「おい、何とか言ったらどうなんだ。オリジン装置のことをどうやって知ったんだ」

「……」

 どこからどう話せばいいんだ。私は少しためらった。どうやって知ったかと聞かれると、祖父の過ちを公にしなければならないのと、今更祖父の責任だということを私の口から言うのは、責任転嫁しているようで言い辛かった。

 取調官が、何度か咳払いをしてから、資料を見ながら話し始めた

「シュリが実家を訪ねたときに、両親から手渡された書類に紛れ込んでいた古い手紙の中にオリジン装置のことが書かれていた。彼は、そう言っておるぞ。どうなんだ、間違いないか」

 私は、驚いて取調官を見た。何故清田さんが、彼の両親が不利になるようなことを言うのか見当もつかなかった。私は彼に合わせて、オリジン装置のことは彼から聞いたと答えるべきなのか、考えを巡らせていた。

「なぜ、答えないんだ!」

 取調官は、両手で強く机を叩いた。

 私は、ビクリとして生唾をのんだ。

 取調官は、眉間にしわを寄せて、私をじっと見つめている。私は、それを直視することができず、下を向いて目を閉じた。

『アディル、ライラ、私はどうすべきだろうか。清田さんの言ったことが正しいと言えば、私の祖父は守られることになるが、私は、清田さんを守りたいと思う。しかし、それももう遅いのだろうか……』

 警察署の外から、聞きなれない歌が聞こえてきた。

 ライラの声に似ているが……

「%&$“&%~、清田さんは~、&%$#=~、勘違いしたと言って~、&%$#‘&~。正直に話して~、%&$#$~、大丈夫~、%#&%%~、二人とも助けるわ~、&%$&#%」

「外が騒がしいな。あれは、何の歌だ?」

「ちょっと見てきます」

 取調官一人が、部屋の外へ出て確認してきた。

「変な格好をした女の子が、歌いながら歩いているだけですね」

「それにしてもめちゃくちゃな歌だな。下手くそだし。まあいい。さて、ラマナさん、そろそろ話してもらえますか?」

 ライラ、いったいどんな格好をしているんだ? あっ、いや、そんなことより、ライラ、本当にありがとう、私は正直に話すだけだな。

 私は、咳ばらいを二度してから話し始めた。

「えっと、彼は、ちょっと勘違いしたのだと思います。手紙に書かれていたのは本当ですが、その手紙は、私の祖父から預かったものです。彼の両親は、全く関係がありません」

 取調官は、眉間にしわをよせ調書を確認した。

「なぜ、そんなことを彼は言ったんだ」

「さあ? 単なる勘違いだと思いますよ」

「まあ、いい。それで、その手紙には、なんと書いてあったんだ?」

「その昔、美しき星は、天の川銀河の星で暮らしていたが、星の寿命により、地球へ移住することになった。地球では、人々が仲良く暮らしていたが、ある時、他の星から侵略者が来て、皆が投獄されてしまった。祖父は、皆を助けるために、アカシックレコードの保管庫を爆破し、オリジン装置を持ち出したところ、彼らに見つかって地球に置いてきてしまったということでした。その手紙を読んで、私たちはオリジン装置を探して持ち帰る計画をしたのですが、またもや悪い奴らに見つかり、命を狙われ、地球で起動することにしたのです」

「それで、オリジン装置は地球に置いたままだと言うのだな」

「はい、そうです」

「あなたの祖父からの手紙には、オリジン装置を美しき星へ持ち帰るように書いてあったんだな?」

「はい……」

「なぜ、地球に置いたままにしているのだ?」

「それは……」

 そう言えば、あの事件が解決したならば、美しき星へ持ち帰ることを考えるべきだったのかと考えていた。

「答えられないのか?」

「……」

 待てよ、もしも今、地球からオリジン装置がなくなってしまったら、地球人は皆、また魂にアクセスできなくなって、元の木阿弥になってしまうのか?

「わかった。もういい」

 取調官らは、私の答えを待たずして部屋から出て行った。


 半日ほど経過しただろうか。

 取調官がドアを大きく開けて入ってきた 取調官は、机を叩いて、私の目の前まで顔を近づけて、すごい剣幕で威圧してきた。

「どこに隠したんだ。お前の家にはどこにもオリジン装置はなかったぞ」

「そんなはずはない。私は隠したりしていません。居間に置いてきました」

 私は、取調官の顔をよけて、少し後ろに仰け反りながらだったが冷静に答えた。

「では、何故、見つからないんだ」

「それは、私にはわかりません」

「オリジン装置が、見つからなければ、さらに罪が増えることになるんだぞ。それでもいいのか?」

「知らないものは、知らないとしか答えようがありません」

 少しの間沈黙が流れた。

「あの少年と少女の名前は、何と言ったかな?」

「えっと、アディルとライラですか?」

「そうだ、アディルとライラだ。彼らを連れて、もう一度探させてくるんだ」


 オリジン装置がないだと? どういうことなんだ。誰がどこへ持って行ったと言うのだ。まさか、あいつらがまだいるのか?

 あいつらの手に渡ってしまってはならない。何としてでも探し出さなければ…… 

 それにしても子どもまで捜査に加えるとは、美しき星は、何と酷いことする星なんだ。私は、今まで感じていたこの星の人たちのイメージが悪くなっているのを感じていた。

 アディルとライラのことがとにかく心配になっていた。

「すみませんが、私も地球へ連れて行ってもらえませんか?」

「何を言っているんだ。そんなことができるわけがないだろう。そう言って、オリジン装置を持って、逃げるつもりなんじゃないのか?」

「いえ、そんなことは一切考えていません。それよりも、悪い奴らにオリジン装置を悪用されるのが一番怖いので、早く見つけなければと思っただけです」

「そう思うなら、今すぐ、オリジン装置の場所をはくんだ」

「私は、隠してなどいません」

「すぐに場所を言わなければ、あの少年たちが、拘束されてずっと探すことになるんだぞ」

「彼らは、無関係なんです。彼らを連れて行かないでください」

「あなたも良く知っていると思うが、あの子たちは特殊能力を持っているんだ。その能力を持っているものは、警察に協力する義務があるんだよ。子どもだと言ってもな、頭脳は大人と同じだからな」

「……」

「あの子たちが心配だろう。さあ、早くオリジン装置のありかを話すんだ!」

 聞く耳を持たない取調官を前に、私は頭を抱えていた。どうすればいいんだ?


「捜査は私たちがするから、あなたは、黙って言われたことに答えればいいんだ」

 そう言い残して、取調官らは部屋から出て行った。


 アディルとライラは、無事だろうか?

 清田さんは、どこに連れて行かれたのだろうか?

 私は、独房に入れられて、自分で何一つできないもどかしさを感じながら過ごしていた。



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