暗号の謎
暗号の謎
「アディル、奴らに、バレたのか?」
「この宇宙船を見つけるとは、奴らも相当な技術を持っているようだな……」
私たちは、美しき星の防衛本部に到着した。
「これから、防衛長官に会って支援を依頼する。ラマナは、一緒に来てくれ。ライラは、清田さんたちを自宅に送って、必要なものを手配してくれないか?」
「ええ、わかったわ」
美しき星の防衛本部長官室
「おお、久しぶりですな。ラマナ代表」
私は、もちろん長官を覚えていないが、親しそうに握手を交わした。
「三人がそろうのは、何千年ぶりですかな? ラマナ代表は、すっかり別人になられて、アディルは、随分とお若くなりましたな、ハハハハハッ」
「長官、そんな冗談を言っている場合ではないんです。一大事ですから」
「いや、すまん、すまん。早速、話を聞こうじゃないか。まあ、かけたまえ」
私たちは、ソファーに腰かけた。
「宇宙船が攻撃されたという連絡は、先ほど受けているが、一体何が起こっているのだ?」
「どうもまだ地球を牛耳っている奴らがいるようなんです」
「何? 五次元に次元上昇してから、もう三十年経つと言うのにか?」
「ええ。ラマナが日本で出版した本の内容が、地球人を目覚めさせるものだとして、出版差し止めを要求した上に、ラマナを殺そうとしたのです」
「なんだと!」
「清田さんや奥さん、息子さんが被害に遭われて、現在奥さんがカプセルで治療を受けています」
「わが星の大事な命を奪おうとするやつは、ほっとけんぞ」
「地球の次元上昇までは良かったのですが、人類の意識向上が全く進んでいないことで、奴らがまだ手中に収めているようです。奴らもかなりの技術力があるようで、私たちの宇宙船も攻撃を受けてしまいました」
「ふむ……。戦いはできるだけ避けねばならぬが……なかなか、手ごわそうだぞ」
「ええ。何か良い方法がないものかと」
「やはり、オリジン装置を見つけ、地球で起動させるのがよいのではないだろうか?」
私は、そう切り出した。
「オリジン装置? それは何ですかの?」
「詳しいことは、また説明しますが、この星に代々伝わる装置が、現在地球にあるようなので、それを探して、起動させようと思います」
「そうなるとどうなるのだ?」
「私の書いた本を読まずとも、地球の人々は、目覚めることになるでしょう。奴らが一番嫌うことです」
「なるほど。防衛隊は、どう手伝えば良いかの?」
「奴らの追跡と、私の援護をお願いできないでしょうか?」
「わかった。人員を集めるために、少し時間を頂けるか?」
「今日は遅いので、明日の朝、各責任者を集めて会議を開催していただきたい」
「わかった。明日八時にここへ集合してくれ」
「長官、よろしくお願いします」
長い一日だった。私は、本当にクタクタになっていた。
「ラマナ、大丈夫か? 早く家に帰って、休んだ方がいいな」
「ええ、そうします」
「宇宙船を借りてくるから、それで送るよ」
「ありがとう」
ライラが、私の家の前で待っていた。
「上手く行きそう?」
「ああ、明日の朝八時に防衛本部で会議だ」
「結構早いのね。私たちもここに泊まるわ」
「えっ? 親が心配するだろう?」
「大丈夫。ラマナ代表と一緒だと言うと安心するの」
「なんてったって、英雄だからな」
アディルがにやついた。
「まったく俺を出汁に使って、二人でイチャイチャするつもりなんだろう」
「そうよ!」
「否定しないのか?」
「この星では、素直に生きるだけよ」
「ふん、そうですか。でも、ベッドは一つしかないぞ」
「そんなこともあるかと思って、私たちのベッドも用意しているの」
ライラは、つかつかと部屋に入っていき、クローゼットを開けた。
「ほらっ、これこれ!」
小さなクッションは、スイッチを押すと、シングルベッドの大きさに一瞬で膨らんだ。
「私たちは、これで一緒に寝るから」
「一緒に?」
「うん、一緒に」
「なんか、前にもこの会話したよな?」
「そうね」
「もうどうでもいいから、仲良く一緒に寝てくれ」
「シャワーも借りるわ」
「アディル、タオルも着替えもちゃんとあるからね」
ライラはクローゼットから取り出した。
「今日は、ラマナに先にお風呂に入ってもらえよ」
「そうね。ラマナ、先にお風呂に入って、早く休んで」
早く休んでか……。二人が賑やかすぎて、休めんだろうよ……。
「上がったよ。次、どうぞ」
「一緒に入るか? ライラ」
「別々に、順番で入るんだ!」
「ちっ」
「アディル! 今『ちっ』って言ったな!」
アディルは、知らん顔してお風呂に行った。
「あいつめ、風呂から出てきたら、懲らしめてやる」
ライラは、ベッドにシーツをかけて準備をしていた。
「ところで、清田さんの奥さんの状態は?」
「うん、まだ意識は戻ってなかったわ」
「そうか、やはり時間がかかるのか……」
「それとね、話してもいいのかな?」
「何?」
「清田さんて、離婚しているんだって。だから、もう奥さんじゃないって」
「えっ、そうだったのか……。まあ、結婚して子どもがいるってことの方が驚いたからな。いつも宇宙船で暮らしているって言っていたから、おかしいとは思ったんだ」
「清田さん、宇宙人だってこと話してなかったんだって。食事を一緒にできないことで、生活が成り立たなかったみたい」
「なるほどね。そりゃ、一緒に生活して、隠し通すのは難しいな。今からでもちゃんと話せば復縁できるんじゃないか?」
「そうね! 明日、伝えてみるわ」
「あー、すっきりした。ライラ、お風呂どうぞ」
タオルで頭を拭きながら、アディルは、私と目を合わせることなく布団に入った。
「さて、寝るとするかな。おやすみなさい」
よし、今日こそは、懲らしめてやろう。私は、布団を引っ張りはがして、アディルの脇の下やおなかをくすぐってやった。
「やめろ! やめてくれー。うわっ、ハハッ、笑い死ぬー、やめろー」
「やめてほしいのか? ん?」
「もう、舌打ちなんてしません。ごめんなさい、もうやめてください」
「よし、やめてやろう」
「くそっ」
「今、くそって言ったな。コチョコチョするぞ」
「すっ、すみません。もう言いません」
「よし、勘弁してやるよ。明日も早いしな。さあ、もう寝るぞ」
会議は、早朝にもかかわらず、各方面の代表が集まっていた。
まず、偵察隊を地球に向かわせることになった。
それぞれの部署に、できるだけ多くの人員を集めるよう依頼したが、最低二日はかかるとのことであった。
私と、アディル、そして防衛長官は、緻密なスケジュールと対策を練り、準備を整えていた。
「ラマナ代表は、こちらにいらっしゃいますか?」
「ああ、この前は、ありがとう。いろいろとすまなかったね」
祖父の家に案内してくれた記録者が、会議室に訪ねてきた。
「私もこの作戦に参加させていただきます」
「ありがとう。頼もしいよ」
「ちょっと、お時間よろしいですか?」
「ああ、どうしたんだ?」
「あの、ラマナ代表は、お母様の家は訪ねられましたか?」
「母の家? いや、知らないんだが」
「お母様は、別居されていらっしゃったので、別の家があるんです」
「そうなのか?」
「これが、住所です」
「私もはっきり覚えていなかったので、先ほど一人で確認してきました」
「えっ、わざわざ行ってきたのかい?」
「はい」
「それは、申し訳なかったね。ところで、母は、まだ元気なのですか?」
「いえ、もうかなり前に亡くなられていて、今は、どなたも住まわれていないようです」
「そうだよな……」
「おじい様の家に行かれる前に、お母様の家をも訪ねられたと言われていたのを思い出したので、もしかすると何かのお役に立てるかと思いまして」
「ありがとう」
「それでは、私は、記録者の会議へ行きますので、これで失礼します」
そう言って、彼は出て行った。
「ラマナの母親か……」
「アディルは、私の母を知っているのか?」
「いや、知らないな」
私は、はぁ?という口の状態でアディルを睨んだ。
「あっ、いや、全く知らないのもおかしな話だなと思ったんだよ。長い付き合いの中で、家族の話が一度も出てこなかったのは、わざと隠していたんじゃないのかと思って」
「私が、母のことを隠していた?」
「行ってみたらどうだ? 出発までまだ時間がありそうだぞ」
「そうだな、行ってみるか」
彼は、丁寧に地図も書いてくれていた。駅から三つ目の家に印がついていた。駅で降りて、あたりを見回し、三つ目を数えた。他の一般的な家よりもかなり大きい家だ。ベージュ色の壁が、日本の古民家のようで、私は郷愁を感じていた。家の扉を開こうとしたとき、隣の家から一人の女性が出てきた。
「あなた、ラマナ代表じゃない?」
「ええ」
「やっぱり。この前のニュースを見たからわかったの。お母様の家に来られたのね。あの時のこと、覚えている?」
「あの時?」
「前回、来られた時に、私はまだ子どもだったけど、よくこのお家に行って遊んでいたの。そしたら、あなたがやってきたの。ところで、あの時の暗号は解けた?」
「暗号?」
「お母様が書かれた暗号よ」
「母が書いた?」
「そうよ。お母様は、有名なミステリー作家だったのよ。特に暗号を書くのが好きで、私が遊びに行くと、いつも暗号を書いてくれたの。それを解くのが大好きだった」
「母は、あの時、何といって私に暗号を渡したか覚えていませんか?」
「何て言っていたかしら? まだ子どもだったから……」
「あっ、いや、いいんです。もし覚えていたらと思っただけですから。少し家の中を見させてもらいます」
私は、扉を開けて家の中を見て驚いてしまった。
「えー、図書館かと思ったよ」
「本が沢山あるでしょう」
「お母様の書かれた本は、こっちの壁一面の棚全部。それ以外は、参考資料の本だって言われていたわ」
アディルが、一冊手に取った。
「えー、あの有名なホノコじゃないか? ホノコがラマナの母親なのか?」
「そうよ。母親は、有名作家。息子は、英雄。すごいわよね」
「そういうことだったのか、だから皆に内緒にしていたんだな」
アディルは、一人納得していた。
私は、母が書いたという本を一冊手に取った。
「あっ、それはね『探偵は十六歳』。三十巻までのシリーズものよ。主人公の男の子がかっこいいの。大好きで何回も読んだわ」
「へー、『探偵は十六歳』か。俺もこのタイトルで小説を書こうかな?」
「ラマナ代表も小説家なの?」
「ああ、一応」
「お母さん似なのね」
お母さん似か……。
私は、苦笑いをした。
私が別の本を取ろうとした時
「あっ、その本は、出版されなかった本だわ。自叙伝よ」
「自叙伝? なんで出版されなかったんだ?」
「お母様が途中でお亡くなりになったの。最後まで書かれていないけれど、出版社の方が追悼で作成されて、ここに贈呈されたのよ」
「この本、借りていってもいいかな?」
「ラマナ代表のお母様の本ですから、ご自由にされていいと思いますよ」
「ありがとう」
暗号の謎が一つ解けた。暗号は、私が書いたものではなく、暗号好きの母が書いたものだということだ。しかし、なぜ母は、あのメッセージを残したのだろうか?
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