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本当の愛

 本当の愛


「愛が開いた?」

「私も経験があるの。ある日突然、今のラマナのように胸に穴が開いて、青空が見えたのよ。ヨガを習っていたから、ハートチャクラが開いたんだと思っていたわ。実際のところは、よくわからないけど、その後は、何というか、相手の嘘とかがわかったり、自分にも嘘がつけなくなったわ」

「そんなことがあるんだ、いや、ビックリしたよ」

「もう、胸の穴も治まってきたわね」

 私は、この不思議な体験の後、何とも言えない感覚を覚えた。体が軽いと言うかどちらかと言えば、心が軽いと言った方が近い感じだ。

 私は、オフィスの皆にお礼を言って、別れの言葉を伝えた。今はまだ、ここに戻って来る決心も暗号が確実にとけた確信もない。再び帰ってくると言えれば、皆の期待に応えられるのだろうが、今の私にはとても言えなかった。

 ライラとアディルと私は、オフィスを後にした。

 私の家の前に着くと

「ラマナ、私は、君を地球に送り届ける準備は出来ている。いつでも言ってくれ」

 そう言って、アディルとライラは、それぞれの家に帰っていった。

「地球か、そろそろ帰るか……」


 翌日、私はアディルの操縦する宇宙船に乗って地球へ帰った。

「この宇宙船は、やっぱり狭いんだよー」と叫んでいる間に地球の我が家の庭に到着した。

「ラマナ、今回は本当にありがとう。また会える日を楽しみにしているからな」

「愛歌にもよろしくね」

 二人はそう言うと、宇宙船のドアが閉まり、すうっーと静かに空へ消えていった。

 地球に帰ってきたんだな。カエルの声がうるさいけど、我が家が一番落ち着くよ。

 さてと、ラジオでもつけるか。まさか、浦島太郎になってないよな?

「さあ、今日は、土曜日、皆さんいかがお過ごしでしょうか」

 土曜日? 一週間も経ったのか、意外と時間がかかったようだな。

「只今入ってきたニュースをお伝えします。本日、午後二時頃、東京都港区の図書館が倒壊しました。立ち入り禁止区域内のため、負傷者はいなかったようです」

 えっ、東京の港区? あの戦艦コナンを返すはずだった図書館じゃないか!

 玄関のドアの開く音が聞こえた。

「あらっ、お父さん玄関を閉めずにいったのかしら? 電気もつけっぱなしじゃない」

 愛歌が、ドタドタと居間に入って来た。

「えーっ、お父さんまだ出発してないの?」

「いや、今戻ったところだ」

「えっ、メールをもらってまだ二時間しか経ってないわよ」

「なんだって? 二時間?」

「ほんとに行ってきたの?」

「ああ、ちゃんと大仕事を済ませてきたよ。証拠は、ほれっ」

 袋から私の伝記を取り出した。

「お父さん、これ日本語じゃん。何の証拠にもならないよ」

「愛歌ならそう言うと思ったよ。ほれっ」

 私は楔文字の伝記を取り出して見せた。

 愛歌は、パラパラとめくって

「これは全く読めないわね」

「そうだろ。この顔写真が俺。いい男だろ?」

「そうね、お父さんより、ずっと男前ね」

「それでさ、もうビックリしたのが、この本を書いたのが、出版社の清田さんなんだ。清田さんは、なんと宇宙人だったんだよ」

 愛歌が眉間にしわを寄せて、

「何か、もっと嘘くさい話になってきたわね」

「いやいや、本当だって。今度アディルが来たら、聞いてみろよ」

「はいはい、それで、宇宙の危機は救えたの?」

「もちろん、この俺が大活躍さ!」

「それも嘘くさいわね。お父さん、ここで昼寝していたんじゃないの?」

「そんなわけないだろう! えっと他には、あっ、これ、ロングコート。サラからもらったんだよ」

「サラって誰よ?」

「えっと、彼女じゃなくて、知らない人の恋人だった?」

「なんだそれ」

「まあ、それはいいとして、この感じのコートは、地球にはないだろう?」

「そうね」

 愛歌は、コートを広げて、肌触りを確かめていた。

「それにしてもお父さんには似合わない、若ぶりな色合いね」

「そうか、似合うって言われたんだけどな…… 愛歌、この時間に家を空けていてもいいのか?」

「そうね、メールしておくわ」

 その間に、私は、台所でお湯を沸かしてお茶を入れた。

 お茶でも飲みながら、話すとするか。あっ、せんべいを食べるか。

 袋を開けていたから、帰るまでに湿気るんじゃないかと心配したけど、たった二時間か……


「それで、宇宙の旅はどうだった?」

「瞬き数回で到着したんだ。宇宙船は、スピードが速いんだよ。ただな、狭いんだよ、とにかく狭い。もうちょっと大きいので来て欲しかったよ」

「美しき星は、きれいなところだった?」

「ああ、想像したよりも美しかったよ」

 私は、愛歌に美しき星での出来事を事細かく話した。


「それにしても、お父さんは、超優秀から、英雄にまでなっていたのね。すごすぎるわ」

「俺が一番ビックリしているさ」

「ねえ、私もあいの響きをやってみたい」

「愛歌は、必要ないだろう?」

「でも、チャクラが開くかも知れないでしょう。やってみたい」

「両手を上にあげて、あいを三回響かせるように唱えるんだ。バイブレーションだ!」

「あい~、あい~、あい~」

「いや、こうだ。あ~い~、あ~い~、あ~い~」

「わかった。あ~い~、あ~い~、あ~い~」

 愛歌の声がバイブレーションとなった。

「あっ、愛歌、胸が……」

「えーっ、穴が開いている。ウソでしょう?」

「愛歌も開いたんだな」

 しばらく、胸に穴が開いて青空が見えているのを二人で眺めていた。その穴がふさがるのを確認したところで、急に愛歌の様子が変わった。

「あっ、ごめん、もう帰らなくっちゃ。また明日ゆっくり話しましょう」

 愛歌は、急いで出ていった。


 私だけでなく、愛歌にも同じ現象が起こるとは……。

 この「あい」の響きは一体何なんだろうか?

 私にはよくわからないが、何となく、魂というものの存在を感じるような気がした。


 その日、私は夢を見た。

「本当の愛ってなんなの?」とライラが、私に尋ねてきた。

「愛は、相手を大切に思う心だ。だがな、本当に必要なのは、宇宙の意志だ」

「本当の愛は、宇宙の意志?」

「そうだ。人類は、愛という聞こえのいい言葉に騙されて、わかったつもりになった者たちばかりだ。本当に必要なのは、宇宙の意志だ」

「宇宙の意志って、どういう意志なの?」

「その時代、その人に必要なエネルギーやメッセージのことだ。宇宙のエネルギーを受け取り、地球に流すことで、地球も人類も成長し続けることができる。魂と宇宙とが繋がった者だけが、ようやく自分の本当の道を進んで行けるのだ」

 私は、ハッとして目が覚めた。

 これは魂にアクセスするための方法だったのではないだろうか?

 そして、もしかすると、地球人は全員、魂にアクセスできないように「愛」と言う名の封印をかけられていたのではないだろうかと思った。


 私はすぐに、アディルとライラが地球にやって来た時からの出来事を記録し始めた。

 記録することがとても嬉しい。

『書きたい』

『書ける』

 心から湧き上がってくるこの喜びは、いったい何なんだ。

 涙が溢れて、パソコンの画面が見えにくくなっていても、この気持ちはもう誰にも止められない、止まらないのだ。

 これが魂の声だというのだろうか。

 私は、書き続けた。

 魂に記憶された文字の全てを出し尽くすまで。



次回は、いよいよ第三章!

毎日更新予定

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