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危機を救え③

「アディル、今、俺の心を読んだだろう!」

「すまない。ラマナがいつもになく考え込んでいたから、つい……」

「それより、アディル、透視で通れるところが見えるか? 館長も」

「できるよ。なぜすぐに思いつかなかったんだ。ラマナ、私の後についてきてくれ」

 アディルは、天井を確認した後、通りやすい場所を見つけて進んだ。

「館長は、この辺りじゃないかと思うが、何か見えるか?」

 アディルは、静かに集中して、土砂の一点をしばらく見ていた。

「ラマナ……。言いにくいんだが、館長は、もう……」

 そう言って、アディルは、首を横に振った。

 私は、唇をかみしめた。

「アディル、わかった。先を急ごう」

 私たちは、階段へと進んで行った。

 その間も保管庫は、小刻みにカタカタと揺れ続けていた。

 ようやく、階段の下にたどり着いた。

 ライラも透視能力を使って、階段下まで辿りついていた。

「ライラ大丈夫か? 他の皆も無事だな?」

「ええ、私たちは大丈夫よ。館長はどうなった?」

「透視で確認したんだが‥‥‥もう息絶えていた」

 アディルがそう言うと、ライラは、私の手をぎゅっと握りしめた。

「さあ、急ぐぞ、全部崩れる前に脱出するんだ」

「アディル、階段に障害物がないか見てくれ」

「階段には、何の障害物もないぞ」

「わかった、皆、四つん這いになって、急いで登ってくれ」

 最初に出口に到着した保管庫のスタッフが、扉を開けようとしたが、揺れで歪んだドアがピクリともしなかった。

「扉が開かないのか?」

「開きません。扉が歪んで開かなくなったようです」

 歪んだドアの隙間から漏れる光が、不安そうな皆の顔を浮かび上がらせている。

 全員で、ドアを何度も押してみたが、ピクリともしない。

 皆が息を整えていた時、大きな揺れが再び襲ってきた。

 大人がよろけたところにライラが押されてしまい、階段の手すりの隙間から、投げ出された。

 私は、咄嗟にライラの手を掴んだ。

 ドアの隙間からの光が、地下までの距離を確認させた。

 ここで手を離したら、もう助からない……

「誰か、手伝ってくれ」

「どうした?」

「ライラが落ちて」

「なんだって!」

 アディルが、うろたえている。

 スタッフの一人が、ライラの腕まで手を伸ばして、ライラを引き上げた。

 ライラとアディルは、ほっとした様子で、抱き合っていた。

 まずいな、このままでは、みんなここで生き埋めになってしまう。どうしたらいいんだ……。

 先ほどの揺れで、扉の隙間が前よりも広がり、光がたくさん漏れ入っているのが見えた。

「あっ、ここだ! この扉の隙間に、この本を一枚一枚破いて、外に出すんだ」

 後ろを振り向くと階段が下の方からどんどん崩れてきている。

「皆、できるだけ扉の方へよるんだ」

 皆は、ぎゅうぎゅうになりながらも必死で、紙を外に出した。

 全てを出し終えた時、揺れがピタッとおさまった。

「止まった、止まったぞ」

「良かったー」皆安堵した。

「アディル、この後は、何とかできるよな」

「任せてくれ。仲間に連絡をとって、助けに来てもらうよ」

 そう言って、テレパシーで連絡をとった。


 数分の後、美しき星のレスキュー隊が到着した。

「扉をこじ開けますので、少し離れてもらえますか?」

「無理だ。そんなスペースはない」

「困りましたね……」

「他に方法はないのか?」

 アディルが、レスキュー隊員とやり取りをしていたが、少しの間、無言になった。

「アディル、何と言っているんだ?」

「専門用語で、私にもちょっと日本語に訳せないんだ」

 しばらくして、外からまたレスキュー隊員の声が聞こえてきた。

「カプセルチューブを使うようだ」

「アディル、中から私が見えますか?」

「見えるぞ」

「私がこれから移動するので、皆さんが立っている端のところまで来たらストップと行ってください」

「わかった」

「ストップ!」

 三秒ほどでアディルが答えた。

「では、ここから、左手に1メートル進んだ所の下にカプセルチューブの穴を開けます。しばらくそのままでお待ちください」そう言って、地面を掘る作業が始まった。

「カプセルチューブは、地面を掘ると同時に壁を作ることができるんだ。直径1メートル程なので、人が歩くには狭いが、ここから脱出するだけなら一番早い方法だな」

 五分程すると、少しガタガタと揺れてきた。

 崩れた階段の壁が盛り上がってきたかと思った次の瞬間、大きなドリルが回転しながら、こちら側に出てきた。ドリルは1メートル程出たところで止まり、今度はゆっくりとバックしていった。少しすると、救助隊がその穴から顔を出してこちらに話しかけた。

「子どもが先だそうだ。ライラ先に行けるか?」アディルがそう言うと

「うん、行ってみる」

 ライラは、救助隊の方へ手を伸ばした。

 横に1メートルの距離であれば比較的簡単なのだが、斜め下にトンネルの穴があけられているので、普通に手を伸ばしても届かない。こちら側は、寝そべるしかなく、手をつなぐだけでは、とても危険だ。

「命綱はないのか?」

「わかった、ちょっと待ってくれ」

 しばらくして、命綱が投げ込まれた。

「ロープの端をどこかに縛ってくれ」

 私は、階段の手すりにロープをしっかりと結び付けた。

「この命綱を付けて、ゆっくりとこっちへ来てくれ。この穴より下に行くからここにマットを用意した。足を前に突き出して、足の裏でマットに着地するように来るんだ」

 ライラに命綱を付けてやり

「ライラ、ゆっくりだぞ」

「わかった」

 一人目、成功だ。

「次、アディル行けるな?」

「わかった」

 二人目も成功だ。

「次は、あなたが行ってくれ」

 保管庫のスタッフに指示した。順調に五人目まで脱出でき、残るは私一人となった。命綱を付けようとした時、ロープを繋いでいた手すりが折れて、ロープごと下に落ちてしまったのだ。

「新しいロープを用意します。少し待ってください」

 そう言って、レスキュー隊員はいなくなった。

 私は、ため息を一つついた。やっぱり、俺は、ついていないのかな……。

 アディルがトンネルから、ひょこっと顔をだした。

「ラマナ、迎えに来たぞ」

「ありがたいんだが、こういう状況さ……」

「ラマナなら飛べるさ」

「こんな状況で、よくそんな冗談が言えるな」

「元気づけてやろうと思ったのにな」

 レスキュー隊員がロープをもって、戻って来た。

「命綱をしっかり固定して下さい。私たちが、必ずロープをひっぱり上げるので、一旦下に落ちてもらえますか?」

「下に落ちる?」

「はい、下に落ちて下さい」

「おいおい、本気か?」

「すまん、通訳をちょっと間違ったようだ。正確には、2メートルほど下に降りるんだ」

「下に降りる……」

「ラマナ、できるか?」

「できなかったらどうなる?」

「おいて帰るさ」

「うそだろっ? やるよ、やればいいんだろう」

「よし、それでこそラマナだ」

 私は、命綱をしっかり固定して、なるべく振り子のようにならないように、そっと降りられる場所に移動した。

「一、二の三でいくぞ、いいな」

「わかった」

「ラマナ、壁にぶつかりそうになったら、手足で押さえろよ」

「一、二の三!」

「痛っ!」

「ラマナ、大丈夫か?」

「ああ、ちょっとぶつかっただけだ」

「引っ張り上げるぞ」

 私は、壁で体が擦れないように、手足を上手く使った。トンネルの穴に上半身が入るとレスキュー隊員が私の腕を持って引っ張り上げてくれた。

「さあ、早くここを出よう」

 アディルがそう言うと、皆急いでカプセルチューブから外へ出た。

外には、ライラや一緒に閉じ込められた者が待っていてくれた。私たちは、皆で抱き合って喜んだ。

「ラマナ代表、この度は、我々の不注意で、このような事態を招いてしまい、大変申し訳ございませんでした」

「いや、私の方こそ、館長を助けることができず、本当に申し訳なかった」

 ここの保管庫のスタッフ全員が、肩を落とした。

「後のことは、私たちがしますので、皆さんはどうぞお引き取り下さい」

 そう言われて、私たちは何と言っていいかわからず、帰路に就いた。


 帰りは、レスキュー隊が乗って来た大きな宇宙船で帰ることになった。大型バスが二十台ほど入りそうな車庫には、私たちが乗って来た小さな宇宙船とカプセルチューブの掘削機、五台の中型の宇宙船などが停泊している。私たちは、上階の客室へ移動した。客室には、リクライニングソファーが二百席くらいあり、目の前には大きなスクリーンに映像が映し出されていた。国際線の飛行機のように、移動している間に映画をみることができるのかと思ってアディルに聞いてみた。

「この宇宙船は、小さい宇宙船よりもスピードが遅いのか?」

「いや、変わらないよ」

「移動中に映像をみるわけじゃないのか」

「ああ、この宇宙船は、ホテルと言ったらいいかな。皆が他の星で仕事をしている間、近くで待機しているんだ。作業を終えて、夜、ここに戻ってきて過ごすことができるんだ。この宇宙船には、ベッドルームが二百室、トレーニングジム、プレイルーム、ジャグジー、何でも揃っているよ」

「へぇ、それは、すごいな」

 船内放送が流れた。

「そろそろ出発するから、席に座ってシートベルトをしろってさ」

 アディルが翻訳して伝えてくれた。

 私は、すぐ近くの席に腰を下ろした。私の左隣にライラが座った。右隣には、アディルが座ろうとしたところで、私は、アディルの足の傷に気付いた。

「アディル、その傷、大丈夫なのか?」

「ああ、このくらいは何ともないさ」

 ライラが、私の前に身を乗り出して、アディルの傷の確認をしている。私は、ライラもケガをしているのではないかと気になって

「ライラは、ケガはないのか?」

「うん、私は大丈夫」

「それにしても、みんな顔が汚いな。この汚れこそが、私たちの勲章だな」

 三人はお互いの顔を見て笑った。

 アディルが、ふと思い出したかのように

「そういえば、さっきは、本物のラマナのようだったぞ。勇敢で賢いラマナが帰ってきたようだった。瞑想のお陰で、魂にアクセスできたんじゃないのか?」

「まだ死にたくないから必死だっただけだよ……」

 私は、少し照れくさかった。


 再び船内アナウンスが流れた。

 宇宙船は、ゆっくりと上昇し水平方向に移動した。そして、今回もあっという間に、美しき星へ到着したのだ。

 到着した場所は、宇宙船の空港らしい。大中小の色々な形の宇宙船が空港を埋め尽くしている。まさに圧巻の光景だ。こうやって見るとなかなかのSFだな。次の小説は、SF小説にするか……。

「ラマナ、聞いているのか?」

「あっ、えっと、何?」

「ここからは、小さな宇宙船に乗り換えて家に帰るか、カプセルチューブに乗るか、どちらがいいか?」

「小さな宇宙船は、またキツキツ?」

「そうだな」

「じゃあ、カプセルチューブでお願いします」

「ライラ、ラマナに付き添ってくれるか? 私は、宇宙船で向かうよ」

「わかったわ。ラマナ、私についてきて」

 先ほどまでいたあの星で、救出してもらったあのチューブの中を通るんだよな。どんな乗り物か楽しみだな。

「ここが駅よ。このパネルで、行き先を選んでタッチするとすぐにカプセルがくるわ。カプセルの扉が自動で開いて、寝そべるように座るとシートベルトが自動でセットされて、扉が閉まって動き出すの。ほらっ、もう来たから先に乗って、到着したら降りてね」

私は、ライラに言われた通りに、寝そべるように乗り込んだ。

カプセルの中は、とてもシンプルだ。窓もテーブルなど、何一つない。シートベルトが体をぎゅっと押さえつけてきた。

「ワーッ」と叫んだと思ったら、すぐに扉が開いた。

 次のカプセルに乗っていたはずのライラが先に降りて、私のカプセルに近づいてきた。

「どうだった? 早かったでしょ」

「えーっ、本当にもう着いたのか?」

「これで、二十駅分」

「早すぎて、これじゃあ、電車の旅というような楽しみはないな」

 私は、ゆっくりとカプセルから起き上がって、駅から出て数分歩いた。

 家の前には、アディルが先に着いて待っていた。

「ラマナ、今日は家でゆっくりするといいよ」

「私たちは、自分の家に帰るわ」

「私は、ここから、カプセルチューブで十駅先に住んでいる。何かあったら叫んでくれ。テレパシーで聞きつけて、すぐにやってくるよ」そう言って、二人はカプセルチューブの駅に向かった。

 私は、私の家だという家に入ってみた。

 右から左に部屋の中を見渡した。机が一つ窓際にある。左側にベッドが一つ。八歩ほど歩いたところに扉がある。開けてみると、正面に洗面台、右にはトイレ、左はお風呂、これだけだ。ミニマリストだな、俺。

 ピンポンとベルが鳴った。ここも呼び鈴は、ピンポンか、ちょっと感動だな。

「ラマナ、これ渡しそびれたわ」とライラが戻ってきた。

「クルミとヘーゼルナッツ。もしお腹がすいたら食べてね。飲み水が必要なら、洗面台のお水は飲めるからね」そう言って、走っていった。

そういえば、お腹がすいてもいい時間だよな。でも全く平気だ。やっぱり、人間は、食べなくても生きていけるように設計されているかも知れないな。

 私は、とりあえず顔を洗って、ベッドに横になった。今日の出来事を振り返っているうちに、そのまま眠りについてしまった。


毎日更新予定

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