第2話:王の依頼と呪われた姫
王都を襲った魔物を撃退した私は、王宮に招かれた。
「勇者様、こちらへ」
案内されたのは、金色の装飾が施された壮麗な玉座の間。天井には豪華なシャンデリアが輝き、大理石の床には美しい赤絨毯が敷かれている。私は玉座に座る国王と目を合わせた。
「貴殿が、王都を救った勇者か……」
国王は威厳に満ちた声で言った。
「まあね!」
私は胸を張って笑顔を見せる。騎士たちも、尊敬のまなざしを向けている。そりゃそうだろう、私のハンバーガーで魔物を一掃したんだからね!
「よくぞ来てくれた。実は、貴殿に頼みたいことがあるのだ」
国王の顔が険しくなる。
「……頼み? いったいなに」
「娘、セレスティアを救ってほしいのだ」
「姫様を?」
私が尋ねると、国王は深いため息をついた。
「セレスティアは、謎の呪いによって眠り続けている。どんな治療魔法も効果がなく、神官や魔導士たちも手の施しようがないのだ」
「……それは厄介ね」
「しかし、古文書にはこう記されていたのだ」
王は侍従から古びた羊皮紙を受け取ると、ゆっくりと朗読した。
『ある物を口にすれば目覚める』
私は思わず目を見開いた。
「……ある物? それってもしかして……ハンバーガーじゃない!?」
「な、何だそれは?」
国王や側近たちは怪訝な顔をしている。
「ハンバーガーっていうのはね……ふんわりバンズにジューシーなパティ、トロトロのチーズ、シャキシャキのレタス、そして秘伝のソースが絶妙に絡み合った至福の食べ物よ!」
「そ、それが……娘を救う手がかりになるのか?」
「間違いないわ。この世界には食べ物がないんでしょ? だったら、姫を目覚めさせる食べ物はきっとハンバーガーよ!」
「しかし……そのハンバーガーとやらを、どうやって手に入れるのだ?」
「……たぶん、姫を目覚めさせるには特別なハンバーガーが必要なのよ」
王は顎に手を当て、思案する。
「……実は、手がかりがある。禁断の闇の大陸に、答えがあるかもしれぬ」
「禁断の闇の大陸?」
私が聞き返すと、側近の一人が説明を始めた。
「かつて、この世界には『食文化』が存在していました。しかし、魔王が現れてから、食の概念を封じたのです。その結果、人々は食事をすることなく、魔力のみで生きる世界になりました」
「……食べる楽しみを奪うなんて、魔王って最悪ね!」
「その食文化が封じられた場所こそ、禁断の闇の大陸なのです」
「つまり、そこへ行けば『最高のハンバーガー』を作る手がかりが見つかるかもしれないってことね」
王は神妙な顔で頷いた。
「そういうことだ。だが、あの地には強大な魔物が巣食っている。勇者よ、貴殿に行けるだろうか?」
私はニヤリと笑い、手を握りしめた。
「このハンバーガー魂があれば、どんな敵だってぶっ飛ばせるわ!」
「まさか!行って頂けるのですか?」
騎士団長が興奮気味に私に詰め寄る。
「当然よ。私が求めてるのは食べられるハンバーガーだから!」
私は真剣な表情で言った。
「だから、禁断の闇の大陸に行く。そして、姫を目覚めさせるハンバーガーを作る!」
王は深く頷いた。
「勇者よ……感謝する。ぜひとも、娘を救ってくれ!」
「任せて! 美味しいハンバーガーを作るついでに、姫様も助けてあげるわ!あっ!」
こうして私は、ハンバーガーを食べるついでに姫を救うため、禁断の闇の大陸へ向かうことになった——!