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第1話:至福の一口を求めて

 目の前に置かれたハンバーガーを見つめながら、私は思わず息をのむ。1ヶ月前から、ここのハンバーガーを食べるのを、楽しみにしていた。


 木製のプレートの上には、ふっくらとしたバンズに挟まれた分厚いパティ。とろりと溶けたチーズが肉の上で輝き、シャキシャキのレタスと瑞々しいトマトが美しく重なっている。こんがり焼けたバンズの香ばしい匂いと、ジュワッと焼かれた牛肉の芳醇な香りが鼻をくすぐる。


「やばい……これは絶対にうまいやつ」


 そっと手を伸ばし、ハンバーガーを掴む。指先に伝わるバンズの柔らかさ、ずっしりとした重み。持ち上げた瞬間、チーズがゆっくりと伸びるのが見えた。


 口の中に広がる味を想像しただけで、もう我慢できない。かぶりつけば、バンズがふんわりと潰れ、肉汁が溢れ出し、とろけるチーズがパティと絡み合う。

 そこに、レタスのシャキシャキ感、トマトの爽やかな酸味、ピクルスのほのかな刺激が加わり、さらに特製ソースが全体を包み込んで――


「……早く食べたい」


 私は深呼吸し、両手でしっかりとハンバーガーを持ち直した。そして、期待に胸を膨らませながら、口にっ!!


 ――その瞬間、目の前が真っ白になった。







「——勇者よ、目覚めるのです」


「……ん?」



 その声に私は目を開けた。見知らぬ天井。大理石の床。周囲には美しい装飾が施された部屋が広がっている。


「……ここは?」


 起き上がると、目の前には金髪碧眼の女神が立っていた。彼女は優雅に微笑みながら言った。


「貴方は異世界に召喚されたのです。魔王を討ち、世界を救うために——」


 なるほど、いわゆる異世界転生ってやつか。だが、それよりも重要なことがある。


「……ねぇ!私のハンバーガーは!?」


「ハンバー……ガー? 何でしょう、それは?」


 話を聞いて、私は愕然とした。この世界の人間は、魔力のみで生きていて食べ物が存在しないらしい。つまり、ハンバーガーの概念がないらしい。これは由々しき事態だ。


「おかしい!世界を救うとか言ってるのに、ハンバーガーが存在しないとか……この世界、終わってるんじゃない!」


「え……?」


 私は拳を握りしめ、決意した。


「なら、私がこの世界でハンバーガーを作る!!」


 その瞬間——


【ユニークスキル:神聖魔法ハンバーガー創造】 を獲得しました。


「……ん?」


 スキルの説明が頭の中に響く、「このスキルは、あらゆるハンバーガーを創造し、戦闘において魔法として使用することができる」。


「ハンバーガーが……魔法になる?」


 私はスキルを試すために、手をかざしてみた。すると、目の前にふわふわのバンズ、ジューシーなパティ、とろけるチーズが挟まれた 「疾風のチーズバーガー」 が出現した。


「美味しそっ……」


 思わずかぶりつきそうになった、その瞬間、私の意識に直接語りかける声が聞こえた。


 ——警告!危険!


「えっ!………」


 後ろ髪を引かれつつチーズバーガーを投げると、訓練用の鎧にぶつかり、風の刃が鎧の回りに発生した!


 スパッ!スパッ!スパッ!ガシャァァン!!!


 鎧は粉々に砕け散った。


「お……おおおおおっ!?」


「う、うそ!……あんな強力な魔法が、無詠唱で……!」


 女神も驚きの表情を浮かべている。


「だが、私の欲しいのは食べれる方のハンバーガーだっ!」






 私は女神に案内され、王都へと向かった。すると、城の前で巨大な魔物が暴れているのが見えた。


「助けてくれえええ! 城が破壊される!!」


 兵士たちが悲鳴を上げる中、私は颯爽と登場。


「任せて。私が、この世界を救う!」


 スキルを発動し、次々と魔法のハンバーガーを召喚する。


【炎のチリバーガー】 → 炎を纏い、敵を燃やし尽くす!

【冷凍フィッシュバーガー】 → 超低温の冷気で敵を凍結!

【メガトンビーフバーガー】 → 重量500kg、ぶつけるだけで粉砕!


「ええぃ!!!」


 最後に私は、メガトンビーフバーガーを放り投げ、魔物の頭に叩きつけた。


 ドゴォォォン!!!!


 魔物は衝撃で吹き飛んだ。


「な、なんだと……!? 全ての、魔物を一撃で倒しただと!?」


 兵士たちが私を見つめ、驚愕し、称賛している。



 だが私は「誰か!……食べれるハンバーガーを作って!!」と思うのであった。







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