〜HSPの少女〜 二限目
遠くから市木さんの様子を見守る。
昨年度授業を担当していたが、きちんと話したことはなかった。
ひとりぼっちなのか?と思っていると後ろから2人の女子生徒が声をかけていた。
二見さんと谷さんである。
2人とも昨年度、私が担任をしている。とても優しい生徒だ。
確か、小学校が3人とも一緒だったな。優しい2人だし一緒にいてくれるとありがたいなとふと思った。
「ふーちゃん(二見)いっちゃん(市木)一緒のクラスになれたねーよかったー!」
と嬉しそうに話しかける谷さん
やっぱり優しい子だ
「いっちゃんとたーちゃん(谷)がいれば安心だね!」
と二見さんもとても嬉しそう
「ふーちゃんとたーちゃんがいれば安心だよー」と市木さんも笑顔で返している。
やっぱり仲良しなのか。仲がいいという情報はあったから一緒のクラスにしてみたのだがこれで良かった。
「今日学校早く終わるし帰ったら3人でどっか行こうよー」
と二見さんが2人を誘った。
谷さんはすぐさま
「いいよーいこいこー。」
と答えた。
市木さんは
「いいねー!いこいこー!」
とハイテンション
周りから何も知らずに見ていると本当に昨年度後半休んでいた生徒なのか?と思ってしまう。
何気ない会話である。
3人その後どこへいくか話し合い今流行りのカフェに行くことが決まったところで5組の教室に入っていく。
何気ない会話。
普通の会話
《そろそろ教室入っちゃってください!昇降口変わるね》
主任が気を遣ってくださり、昇降口を離れて教室に入る事ができた。
教室に入ってみると
新学期らしく、ガチャガチャわいわい騒いでいる生徒が多い。市木さんは谷さんと二見さんと楽しそうにおしゃべりをしていた。
チャイムの音が鳴っているがなかなか耳に入らない。
みんな会話を楽しんでいるよう。
「はーいそろそろ座ってーチャイムなってるよー」
朝の会が始まる
日直などが決まっていないが、昨年度級長をやっていた前山君に朝の会をお願いすると快く引き受けてくれた。
出欠を確認し、連絡事項はないか確認する。年度当初のなので無いのだが、昨年度と同じ流れで淡々と朝の会が進んでいく。
不登校が多いクラスという事は最初からわかっているが初日から3人いないとは
とほほである。
まあ、学校が終わったら速攻電話連絡していつ会えるか確認してしますかーと
心の中でつぶやく
そんなことを考えていると私に話をふられた。
入学式と始業式について簡単に説明していく。
そこからは、いろんな事が高速で流れていくように進み気づいたらもう下校時刻になっていた。
帰りの会は昨年度女子の級長経験者二見さんが気づいたらしてくれていた。気の利く生徒である。
「ふーちゃんいっちゃん一緒に帰ろー」
と谷さんから声がかかっている
「なんか3人で帰るって新鮮いつも2人だったもんねー」
と二見さんがポツリと呟いた
「えーなんか悪いなー」
と市木さん
あー。気を遣ってるな。大丈夫かな?と少し心配になる。
「どうせ帰ったら3人でカフェ行くじゃん!」
と谷さんのナイスフォローが入る。
何気ない会話なのだが年度当初はこう言った会話一つ一つがすごく気になる。
聞き耳を立てるのもはばかられるが
聞こえてくるものは仕方ない。うん。仕方ないのだ。
結局3人は一緒に帰って行った。
【楽しそうで良かったな市木さん】
「なんかヒヤヒヤする場面もあったんですけどね。谷さんがフォロー入れてました」
【あの子もすごい気を使う子だもんな】
「明日からまた大変になりますね」
【そうだなー。】
こうして初日は終わって行った。