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約束と希望  作者: 幸人
13/17

準備

 寒かった冬も終わり、恵みの春が来た。

 冬の間、耐えていた種子が芽を出し、花を咲かせた。

 大学生の春休みは長い。だから、その休みを利用して初めての旅行で京都を選んだ。


 僕は、家に居てもやることもないので、いつもの「夜行」に行くことにした。

 「夜行」は、午前中からやっているからありがたい。

 夜には、いつも賑わっているこの通りも平日の真昼間は、人が居ない。

 「武内君、早いね」

 僕に笑顔で手を振る先客がいた。あの日ハンカチを届けたやもさんとは、あの日以来友達になった。

 「やもさん、来てたんですか」

 「こいつ、真人の話しかしないんだよ」

 「店長!!その話はしない約束だよね?」

 「そうだった。悪い悪い、今の話忘れてくれ」

 店長は、ニヤニヤしながら厨房の方へと消えていった。

 「さっきの話気にしないで。本当に何もないから」

 店長のあの顔から、やもさんの方が正しいのだろう。

 やもさんが、思い出したかのように僕を見る。

 「そうだ。これ、あげるよ」

 僕は、手のひらで受け取ったものを見る。

 「君の危機の時、必ず助けてくれるよ」

 やもさんの声が、僕に安心感をもたらしてくれる。

 「やもさん、これは何ですか?」

 「これはね、爆薬だよ。でも、安心して。怪我とかはしなくて、光と音がするだけだよ。特大のね!」

 やもさんの笑顔に、背筋が凍る。

 後ろでは、いつの間にか戻ってきた店長が豪快な笑いを響かせていた。

 僕は、この場の不思議な雰囲気に思わず苦笑いを浮かべる。

 僕は、やもさんから貰ったそれを大切にしまう。

 お守りにしては、少々物騒すぎる気がしなくもない。自爆するイメージしか湧かないのは、きっと気のせいだ。


 春の京都への旅支度で忙しくしていたその日、物部君からお誘いがあった。

 僕は、軽く身支度を済ませ集合場所の駅前のカフェに向かう。

 カフェに入ると、物部君は迷わず奥の角の席に座った。

 物部君が、手招きをしていた。

 「旅行中は、彼女から目を離さないように。特に狐には気を付けた方がいい」

 「狐?何で?」

 「これ以上聞かないでくれ。真人君のため、そして何より君の大切な彼女のためなんだ」

 物部君は、有無を言わさない口調だったが、淀みのない目で噓を言っているようには見えなかった。

 「物部君が言うなら何も聞かない」

 得体のしれない不安を覚えながら、僕は笑顔を作る。

 「ありがとう。俺の方でも、出来ることはしておく。良い旅になることを祈っているよ」



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