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プロローグ

空に雲ひとつ浮かんでいない新月の夜。

また一つの命が逆転する。

現代科学が発展し、電灯等の明かりの類いが普及した今でも月がない日は特別であり、また一抹の不安を呼び起こすものである。

屋根に遮られ星明かりすらもが届かない分、濃くなった闇のなかである者は恐怖で震え、またある者は悲しみのあまり泣き崩れる。

これは何かの因果か、それともこれは夢幻の類いかと思い、否そうあって欲しいそうあってなければならないと考える。

ある者は血塗れになりながら許しを乞い、ある者は苦しみに悶え早く終わらせて欲しいと懇願する。

彼らが見た者見ている者はただ一人の「人間」

だがそれは人の皮を被った何かにしか見ることができない。

人を終わらせるのは大半の場合は人が原因と考え、常に疑うことを善きとしていた彼らならではの思考ではない。

彼らの一人は考えた。

これが人なら俺らはなんだ、これが化け物の類いなら納得がいく。だが理不尽だ、これは理不尽すぎる。いくらなんでも、、これが子供の筈がない。

そう、倉庫の護衛して雇われていた十余りの人間に畏怖の念を起こさせ半数以上を殺戮し、残った数名も使い物にならなくなっている。

この状況を作り出したのは、、

「ただの子供だった、か。」

錆びついて間もない扉を軋ませ老人がそこに入ってくる。

「だが子供にしてはいささか強すぎるな、、ということはお前は俺と同族か?」

子供は軽く首をかしげ、その後軽く縦にふった。

「そんな年で貰い物とは、、つくづく運がないものよなぁ、、お前は」

子供が老人に近づき扉から淡く漏れだす光に照らされる。

子供は、、少年だった。彼は10より少し上のような体躯をしており、顔や体の至るところに血を浴びていた。

「今回はここまでとしてうちへおいで」

と言う老人の声を聞き少年は頷いたかと思うとすぐさま踵を返し、ある方向へと向かっていく。

「うぁぁぁあ!やめ、、やめろ、!」

と少年が向かったほうから絶叫が飛び出る。

「彼は何を貰ったのでしょうね…」

と老人は呟きゆっくりと扉をあけ外に出る。

外には、、銃を緊張した面持ちで構える男が手の指ほどいた。だが彼らの一人足りとも老人がでてきたことには気づかない。

自分の目の前に立たれているのにも関わらず。

老人はゆっくりと足を踏み出し足元に落ちていた小石を拾い上げると、包囲している男たちの後ろに放り投げる。

コツン

と僅かな音がたった瞬間、爆発的に閃光と爆音が発生する。

そして石が落ちた所は黒焦げになり舗装の為に敷かれたアスファルトを僅かばかりえぐりとばしていた。

音がした瞬間に反応し正確に同じ場所を撃ち抜くという神業に等しい行為を行った男達は、元の位置を捕捉し直すという簡単なことができなかった。

「さて、準備は整ったようですし…行くか。」

と老人の声で扉の陰から少年が出てくる。

二人はジャクジャクと雪を踏むような音をたてながら倉庫から離れる。

彼らが通った道には赤い足跡が残っていたが彼らの他にそれを目にできるものは居なかった。

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