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まあちょっと説明を聞いて欲しい

※見切り発車で書き始めた作品。

※勢いだけで書いている

※合わないと思ったら記憶から削除して素敵作品を見て脳内リフレッシュ推奨

 私の事を説明する前に、まず二つのとある作品について話をさせて欲しい。


 まずは一つ目。

『ウィルシャナの稀花』

 これはいわゆる乙女ゲームであり、ヒロインたる主人公が「ウィルシャナの稀花」と呼ばれる花を開花させ、世界を救う物語。成人向け描写ががっつりされているPC版とそう言う性的要素を排除したコンシューマー版、そしていわゆるガチャをさせてキャラを集める系PRGのソシャゲ版の三つが展開されている。

 最初に出たのはPC版で、キャラのグラフィックや声優を豪華にしたのが良かったのだろう、コンシューマー版に移植された。この二つでそこそこいい感じに人気が出てから数年後。今後はソシャゲ版を出した。

 このソシャゲ版は世界観や目的は同じだけれども、恋愛要素は思い切り減っている上に主人公はPC版やコンシューマー版とは違い全くの別人になっている。しかも性別は男女どちらも選べるようになっている。ガチャしてキャラを出してそれを使ってRPGでバトルをするなら男キャラだけじゃ足りないだろというのが分かる感じで、しかし女性キャラも魅力的な子が多いのもあってそれなりに人気があった。

 乙女ゲームとして恋愛を楽しみたいなら、PC版かコンシューマー版。お手軽に世界観を楽しみながら冒険をしてバトルをしてをしたいならソシャゲ版という感じで棲み分けは出来ていた。ソシャゲ版ではキャラのちょっとした小話や裏話が分かったりするので、恋愛要素が無くても楽しめるという人はそこそこいた。それどころか、実機で新規スチルの追加は見込めないゲームよりも、スチルはないけれども推しキャラの新衣装だったり新規ボイスを聞けるのでソシャゲにどっぷり嵌ったという人もいたそうだ。

 当たればソシャゲの方がお金を稼げる金の卵になるという事もあるのでゲーム会社としては成功だったのではないだろうか。PC版やコンシューマー版の時から、好みの絵師だし声優も好きな人ばかりだけど、恋愛をしたいわけじゃないからなぁという意見はちらほら見かけていたので、そう言う層はこのソシャゲ版に飛びついた事だろう。恋愛要素はほぼ無いし、絵師さんは基本そのままだし、声優さんだって据え置きだ。そしてさらにキャラは増えて起用されている声優さんだって段違いに増えている。基本プレイ無料なので課金するのは本人の意思に委ねられるわけで。

 まあ、そんな感じで『ウィルシャナの稀花』は三種類の媒体を使い、それぞれ自分が目的とするものを選んでもらうスタイルで手堅く人気を得た。

 さて、そんな『ウィルシャナの稀花』だけど、このゲームにはライバルキャラが存在する。「ウィルシャナの稀花」を開花させるために選ばれる『乙女』がヒロインとライバルである。ライバルは別にヒロインを害したりするわけでもなく、誰かの婚約者というわけでもない。本当に純粋にライバルである。一生懸命「稀花」を開花させるために過去の資料を調べたり、様々な土地に調査に行ったりと、ひたすら真面目なキャラである。そんなライバルに負けないようにするのがヒロインである。このゲーム、攻略キャラが六人いるのだけれども、ヒロインが特定のキャラと交流している時にライバルキャラは他の攻略キャラと交流し親密度をあげる事になる。大事なのは「稀花」を咲かせる為には攻略対象キャラ全員の親密度を一定値維持しなければならない。その上で恋愛要素として特定の攻略対象者の親密度をマックスにさせる事でいわゆる愛の力で「稀花」を咲かせるのだ。

 全キャラの親密度を一定にさせる為にはライバルキャラが誰かと仲良くなるのを避けなければならないので、バランスよく全員と交流しなければならない。そうして全員の親密度が上がれば上がるほど、段々とライバルキャラはミスをしたり怪我をしたりするようになる。

 そしてゲーム終盤になりヒロインが「稀花」を咲かせる頃、ライバルキャラは高確率で死ぬ。何故か死ぬ。どうやっても死ぬ。ヒロインが攻略を失敗してバッドエンドに行ってもライバルキャラは死ぬ。だが、それは全てナレ死―ナレーションでのみ死を伝えられるので割とさらっと流される。

 ライバルキャラ自体はそこまで目立つわけでもなく、ヒロインが満遍なく全員と交流する為のアクセントとしているのだろうと思われていたのだけれども、とんでもない事実が判明することになる。それはコンシューマー版が出て暫くして発売された設定資料集でのこと。

 何故そのライバルは死ぬのか、という質問に対しての回答があった。

【実は、ヒロインとライバルキャラには幸福値と不幸値というのが設定されています。最初は50対50であり、ヒロインが他のキャラと親密度を上げる度に幸福値が増えて不幸値が減ります。では減った不幸値はどこに行くのかというと、ライバルに行きます。ライバルの幸福値はどうなるのか。それはヒロインからライバルに不幸値が渡る際に消費されるのです。そしてヒロインがバッドエンドに進む時に不幸値はどんどん増えるのですが、これは幸福値が不幸値に変換されます。しかしあまりにも増えすぎると悲惨な最期になるので、不幸値の一部がライバルに移行されます。その為、ライバルは死んでしまう事になるのです】

 つまり、ヒロインの為の不幸値の廃棄場所がライバルだったという事だ。ヒロインがバッドエンドに進んでも巻き込まれた挙句にヒロインが死なない代わりに身代わりのようにライバルが死ぬ。だからヒロインのバッドエンドでも生命は保証されている。

 あまりの事実に絶句したプレイヤーはかなりいたようだ。目立たないけれども常に死ぬライバル。その原因が全部ヒロインである自分が原因なのだから。ライバルは別に何もしていない。普通に花を咲かせるために努力していただけ。それなのにヒロインが幸せになる為に不幸値を押し付けられ自分の幸運値を消費させられ挙句に死ぬなど誰が想定していた、という話だ。ちなみにPC版でのライバルは攻略対象以外に凌辱されたりして衰弱死したり事故死したりする。悲惨すぎる。ビジュアルは悪くないどころか金色のふわふわの髪の毛に金色の目をした貴族のお嬢さんという感じの普通に可愛い女の子。

 ヒロインに自己投影するタイプは然程気にしていなかったが、ライバルキャラが死ぬことに疑問を抱いていたプレイヤーは絶句したという。

 その為、ソシャゲ版でこのライバルキャラが新規で実装された時は「大事に育てるよぉおお!」というプレイヤーがSNSで叫んでいた。


 では二つ目。

『稀花の乙女は死を回避したい!』

 これは『ウィルシャナの稀花』のライバルキャラであるエリザベータ=トルシュカを主人公とした小説である。一応スピンオフとして発売されたのだが、ゲームプレイヤーからの評価はものすごく悪い。5段階評価の内ゲームをプレイした人は1しか評価しない。その代わり小説しか知らない読者からの評価はそこまで悪くない。

 なぜこんなにも分かれているのか、と言えば、エリザベータが悪役令嬢になっていたからである。丁度この小説が出た頃、悪役令嬢の転生して断罪を回避する系の作品が本当に増えた。爆発的に増えた。従来の乙女ゲームにいない悪役令嬢というものが何故か生み出されそれが人気を博し一つのジャンルを築き上げた。

 その流行に乗ろうとしたのかどうかは分からないが、それらの要素がミックスされたとんでもない内容になっていた。

 ストーリーとしては次の通りである。


 エリザベータ=トルシュカはある日、自分が前世日本人で『ウィルシャナの稀花』のプレイヤーだったことを思い出す。エリザベータは自分が悪役令嬢であり、必ず死を迎えるという事を理解してしまう。死にたくない。そう思ったエリザベータはその死を回避しようと奮闘する。だが、攻略対象者の一人で婚約者の男との婚約解消は上手く行かず、気付けばヒロインと出会う事になる。そのヒロインもまたエリザベータと同じく前世日本人の記憶を有している転生者。ヒロインは攻略対象者全員と恋愛関係になる逆ハーレムを狙っている。エリザベータはそんな彼らに巻き込まれるのはごめんだと必死に逃げようとありとあらゆる手段を講じる。その中で、ゲームには出ていなかった男性に出会う。エリザベータはその男と共に自分を死なせようとするヒロインと彼女に篭絡された婚約者はじめ攻略対象者を断罪し、協力してくれた男と思いを通じあわせ幸せになるのだった。


 というものである。

 まず、エリザベータは悪役令嬢ではない。攻略対象者と婚約者などでもない。攻略対象者がゲームよりも改悪されている。というツッコミどころしかないような事ばかりを作品として世に出したのである。とは言えども、ゲームを知らない人間からすればよくある断罪回避作品としてそれなりに受け入れられたわけだ。

 ちなみに、エリザベータやヒロインに転生した前世日本人というのはものすごいうっすいエッセンスで、乙女ゲームをプレイしたことがあるという程度でしかない。なのに人格はしっかりと本来のキャラを汚染して食いつくしてしまっていて思考は前世日本人のものになっている。ヒロインはまあプレイヤーだからいいとしても、ライバルであるエリザベータは悲惨だ。本来のゲームではヒロインの為に死に、小説では自我を前世日本人とやらに食らいつくされて本人がどういう人間かなんてことは誰にも分からないようになっている。



 と、まあここまでグダグダと説明をしたのには理由がある。

 私の名前は、鳥栖絵梨。前世の記憶を持っていること以外はごく普通の日本人女性だ。その前世の記憶というのが、今までグダグダ話をしてきていた『ウィルシャナの稀花』に出てくるライバルキャラ『エリザベータ=トルシュカ』である。

 意味が分からないと思うけれども、まあそういうものだと思って欲しい。ゲームのキャラが前世だというのはあり得ないと思うでしょう。私も思うけれども、『ウィルシャナの稀花』というのは一つの世界として独自に確立されたらしい。プログラムされた世界とは別に、個を持ちそこにいるキャラクターは自我を持ち思考を持つようになった。魂というものが生まれ、自由行動をするようになり、もはやプレイヤーという人間から干渉される事のない世界。

 勿論ゲームは存在しているしプレイヤーは沢山その世界にアクセスして楽しんでいるけれども、それとは別で『ウィルシャナの稀花』の世界が生まれた。そこから私の魂はこの現代日本に移動させられて転生させられた。誰にって、女神様に。

 実は、この世界が独立するにあたり最大のネックになったのが『エリザベータ=トルシュカ』の理不尽すぎる死による暗黒点だった。エリザベータは何もしていないのにヒロインの為に不幸値を溜め込み死んでいく。それも何度も何度も。少しずつ世界として確立していく間に個が生まれ魂が生まれていく中で繰り返し死んでいくエリザベータをそのままにしてしまうと世界の崩壊に繋がる。その為、その魂を地球に移動させて浄化させようという事になったのだ。

 そうして移動してきた私にはエリザベータの地獄めいた日々を覚えていた。とは言っても、前世は魔法とかある世界だったが娯楽らしい娯楽は無いし、食べ物だって限られていた。それに比べて地球は最高だ。日本はサブカルが豊富だし、食べ物だってあらゆる国籍のものがある。信仰は自由だし、日々が満たされている。

 エリザベータの記憶は少しずつ忘れていき、鳥栖絵梨という日本人としての私がちゃんと主人格として存在していた頃、『ウィルシャナの稀花』が発売されたのだ。どうやら時間的な歪みというものが発生していたようだ。

 『ウィルシャナの稀花』のPC版が発売され、コンシューマー版が発売され、それから数年してソシャゲ版が配信されてそれなりの年数が経過して漸く独立した「稀花」の世界が生まれるのだが、その未来からエリザベータの魂を引っ張り込む時に、女神様は今の私よりも過去の時点で、私の母のお腹に魂を入れたようだ。

 まあそれは良い。その頃の私はエリザベータよりも絵梨の方の意識が強かった。年齢は18歳を超えていたので成人向けを購入してプレイ。成程、確かにエリザベータは気付いたら死んでいる。ヒロインのエロシーンはどうでもいいのでスキップはした。ちなみにPC版の方はノベルゲームに近く、選択肢で好感度を上げていく。好感度MAXになるとエロスチルゲットになる。どのくらいの親密度からエリザベータが不幸になるのかを調べる為に何周もしたけれど、ヒロインの喘ぎ声が鬱陶しすぎてボイスオフにした。一応ある程度の推測が出来た所で、コンシューマー版が発売されたので当然購入。

 攻略サイトでも作るのかというレベルでやり込んだのは、全部エリザベータが死ぬラインを見極めるためだけ。コンシューマー版はエロを全削除した代わりに細かい親密度上げ要素があった。ヒロインからエリザベータに不幸値が移行するきっかけと最大値になるのがどれくらいかというのはPC版よりもさらに細分化されていたのでもう一度集計し直したけれど、何とか分かった。

 発売された設定資料集を見て、こんなクソみたいな要素を盛り込んだ奴は許さないという気持ちになったけれど、まあそれも落ち着いた頃、大学を卒業して社会人になって、ソシャゲ版が配信された。事前登録をして課金もたくさんして、エリザベータが実装された時は大いに感動してガチャを回して完凸した。愛だよ、愛。他にも好きだなぁと思うようなキャラには課金した。その反面、乙女ゲームの攻略対象者とかは無課金でゲット出来たらするけど積極的に育てる気力が無かった。だってこいつらがヒロインといちゃらぶすればするほどエリザベータは死ぬんだから。

 そうやって毎日エリザベータを中心にレベル上げをしたり追加されるマップにテンションが上がり、イベントがあれば積極的に参加していた頃。

 あの、とんでもない小説が発売された。『稀花の乙女は死を回避したい!』だ。あまりにもエリザベータを貶める内容にブチギレそうになったが、スピンオフではなくこれは公式が出した二次創作だ。解釈違いだ。と思い込みながら一応読んだ。読んだ上で、エリザベータが一欠片もないと確認した。主人公はエリザベータ……じゃなく、エリザベータを乗っ取った日本人女だ。エリザベータじゃない。

 紙媒体ではなく電子書籍で購入していて良かった。


 と、まあここまでの説明が物凄い長かったけど、一先ずこれが『鳥栖絵梨』と『エリザベータ』と二つの作品について。


 じゃあ、なんでこんな話をしてるのかというとですね、『鳥栖絵梨』が現在ほぼ死んでいる状態で、エリザベータをこの世界に連れてきた女神様が、今度は元の世界に戻って欲しいと来たわけですよ。

 『稀花の乙女は死を回避したい!』が『ウィルシャナの稀花』の独立した世界に干渉して汚染しようとしているのだと。PC版とコンシューマー版の世界は独立していて、その世界はヒロインが稀花を咲かせる世界。既にエリザベータは地球に移動しているし、ヒロインの不幸値が移動するとかそういうのはなく、そもそも既に攻略対象者が定まった状態の世界なので平和に人々は暮らしている。

 ソシャゲ版の世界もまた独立して存在している。こちらは稀花を咲かせるのは乙女ではなくて特定の条件を満たした者という事になっている。

 この二つの世界は「ウィルシャナの稀花」という共通点で重なっているけれども世界としてはずれている。数学で言う所のベン図って分かる?あの状態なのね。円1が乙女ゲーム世界、円2がソシャゲ世界。共通部分は「ウィルシャナの稀花」

 ちなみに物理的に繋がっているのではなく概念として繋がっていると言えば分かるかな。存在する次元がほんの僅かにずれているのでお互いに感知は出来ない。でも「ウィルシャナの稀花」という特別な花は共通なので次元はずれていても磁石のようにくっついている状態。

 この世界は今までこれで平和に出来ていた。だが、『稀花の乙女は死を回避したい!』の世界がこの円1と円2全部を覆い尽くして一つの円にしようとしている。その理由が、『稀花の乙女は死を回避したい!』に出てくる転生ヒロインがあまりにも強欲すぎて『ウィルシャナの稀花』の世界すら食らいつくそうとしているから。

 ちなみに『稀花の乙女は死を回避したい!』に出てくるエリザベータと転生ヒロインの中にいる前世日本人は、私がいるこの日本からの転生者ではない。あくまでも作品の中で定義づけされただけの薄っぺらいなんちゃって日本人的な感じのあれだ。だから『稀花の乙女は死を回避したい!』の中に出てくる『ウィルシャナの稀花』のPC版とコンシューマー版があるのは作品内で定義づけされているから彼女たちは知っていても、ソシャゲ版のことは知らないし設定資料集のことも知らない。リアルに存在している日本からの転生者じゃないから。

 その上で敢えて言おう、転生ヒロインやべぇな。無意識に無自覚に食らいつくそうとしているのは、いい男は全部自分の為の存在!自分に傅いて自分を愛するのが当たり前!だって私がヒロインなんだもん!という強い意思に「ウィルシャナの稀花」が反応して独立していた『ウィルシャナの稀花』世界の共通部分に引っ付いて、円1と円2の世界に覆いかぶさって支配しようとしているからでしょ。


 で、なんで私がその世界に戻らなきゃいけないのかっていうと、『稀花の乙女は死を回避したい!』のエリザベータだと勝てないらしい。そりゃそうだ。何度も何度も何度も死んで何度も何度も何度も凌辱されて、絶対に死んでしまうエリザベータの魂はここにある。そのままでは世界を滅ぼしかねないと言われた『エリザベータ』はここにいるわけで、エリザベータの皮を持つだけの中身が甘っちょろい生み出された日本人女では太刀打ちできるわけもない。多分作者は転生ヒロインの馬鹿さを出す為に相当強欲でどうしようもないお花畑な脳みそを与えたのだろうけど、「ウィルシャナの稀花」というのはそう言う単純でありながら強力な意思を持つ者に影響されちゃうんだよね。

 つまり、転生ヒロインに太刀打ちする為に転生ヒロイン以上の強い意思を持つ私に戻れっていう事かな。『エリザベータ=トルシュカ』として『稀花の乙女は死を回避したい!』の世界に。

 独立した世界という事はシナリオは無いし、自由行動出来るし、小説内で描かれていたような未来は間違いなく起きないという事なんだけどいいのかな。と女神様に聞いたら、他の世界への侵食を止めるのであればどうなってもいい、とのこと。まあ今の私なら世界を破滅させるということは無いし、『稀花の乙女は死を回避したい!』の世界を他と同様、新たなる円3にしろということなのだろう。「ウィルシャナの稀花」を共通点として。


 まあそれは良い。それは良いのだけれども、それよりもまず大事なことがある。

 現在の『鳥栖絵梨』はほぼ死んでいる。うっかり事故に巻き込まれて99%死ぬ。そんな状態で時間が停止して女神様からお話を受けてるわけです。

 で、選べるのは三つ。一つ目はお断りしてこのままこの世界で死ぬ。二つ目は私の体はここにあって肉体は死に魂はあちらの世界に行く。私の事を皆覚えている状態。なので向こうの世界で私は万全に力を発揮できない。三つ目は体どころか存在を完全に消去し、私が生まれて育ったという事を完全になかったことにしてあちらに世界に行く。この場合はあちらの世界で完全な状態で私は力を発揮できる。

 さあどうする。となった時、まあ一つ目はない。死にたくはない。では二つ目と三つ目となるけど。悩みに悩んで私は三つ目を選んだ。忘れられるのは辛い。でも私に関わった人たちが私の死にショックを受けてしまうのは避けたい。これでも私の家族は全員仲良しで、末っ子で生まれた私を姉と兄はそれはもう溺愛してくれた。兄と姉は私が死んだと知ったらそれはもう嘆き悲しんで苦しむだろう。あちらの世界で私が生きている事など彼らは知らないまま苦しむくらいなら、私という存在をすっかり忘れてもらいたい。


 ついでに女神様は一つだけ願いをかなえてくれると言った。こういう時何を頼むか人それぞれだろう。だけど私は前々から妄想していた事がある。私ならどうする。異世界に転生したら。エリザベータの時のような世界に転生したら。地獄すぎる。何がって、娯楽も何もない、サブカルも何もない、知識を得る手段が本当に限られている、そんな世界は地獄すぎる。

 私なら、こう頼む。

「充電永久不要で地球のネットワークに常時接続可能で大容量スペックのイヤホン付き端末が欲しい!」

 出来れば今のスマホに入っているデータは全部移行するか、このスマホの容量を増加してくれたら最高です。通話機能要らないし、無駄なアプリも削除していい。欲しいのはネットワークとブラウザとゲームアプリと色々な専用アプリ。カメラとかはまああるといいよね。

 なんでこれを頼んだかというと、知識チートなんてまず出来るわけないのよ。創作小説でよく見るけど、知識チートってあるじゃない。あれって意外と無理があるのよ。だって世界を変えるレベルの知識って早々持ち合わせてる?経験豊富な中年の人とかなら分かるけど、十代後半から二十代前半くらいの人間がそんな知識持ってるのは早々無い。

 だけど、私があの世界に行って転生ヒロインを完全粉砕するには絶対的で圧倒的な力が必要になる。そこで、地球のネットワークに常時接続できて検索出来る媒体が必要になる。スマホくらいの大きさであれば隠せるじゃない。しかも『ウィルシャナの稀花』とか『稀花の乙女は死を回避したい!』の世界には都合のいい事に魔法がある。エリザベータは空間魔法が使えた。だから身軽に各地に旅出来たのよ、大容量の荷物を空間魔法に収納できたから。そんな空間魔法を使えばスマホを収納なんて軽い軽い。

 検索を理由にしてるけど、まあお分かりの通りメインの理由はゲームや小説や漫画を楽しむ為です。娯楽の無い世界なんて苦痛でしかないじゃない。しかも、まだまだ完結していない作品だってたくさんあるし、ゲームだってこれからっていうのが多いんだよ。

 一つだけ願いをかなえてくれるなら、これ。

 女神様は苦笑して、受け入れてくれた。しかも私のこれまでの貯金とかは課金に使えるようにちょいちょいとちょっとよくわからないあれこれをしてくれた。つまり、私の貯金が無くなるまでは課金できる。それだけじゃない、あちらの世界で私が自分の力で稼いだらその分を加算してくれるという。つまり、頑張ってお金を稼げば私は何時までも課金出来て、漫画や小説を電子書籍とは言え買えるし、ゲームに廃課金できるわけで。

 ありがとうございます女神様!と叫んだのは当然だ。死にかけ状態だけど。更に充電永久不要としているが、実際の動力は私の魔力になるらしい。私の魔力で端末を動かせるようにしてくれる。更に神様パワーで容量もかなり増やしてくれた。これで幾らでもゲームを入れられるというわけで。

 とは言えども、ちゃんと世界をどうにかするのが前提。出来なかったら没収になるし、私自身は転生ヒロインのせいで死んでしまう可能性がある。


 私に与えられたミッションを確認。

 『稀花の乙女は死を回避したい!』の独立した世界が他の二つの世界を侵食しないよう、転生ヒロインの心を徹底的に粉砕する。殺すのはNG。でも心を折るのはOKだそうだ。出来ればまともな人間性にして欲しいという事だけど、出来ればレベル。


 注意すべきこと。この世界にいるいわゆる攻略対象キャラとされる男たちは、エリザベータが知ってるようなまともな性格ではなくて、改悪された性格をしているということ。転生ヒロインは自分が幸せになる為にはエリザベータが死ぬ必要があると思っている事。これに関しては不幸値設定は知らず、毎回ゲーム内で死ぬからそう結論づけているそうだ。

 そして『稀花の乙女は死を回避したい!』でエリザベータと最終的に恋人関係になる男。これはちょっと厄介なのでおいおい考える。


 女神様は私を胎児の頃からに戻してくれるらしい。まだ魂が宿っていない綺麗な体。そこに『鳥栖絵梨』と『エリザベータ』が融合した魂をぶち込む。今までエリザベータの記憶やらなにやらはかなり沈み込んでいたけれども、多少引っ張り出して私と半々にする事になった。だって私はどこまでも日本人でお貴族様の振る舞いが出来ると思わない。でもエリザベータなら出来る。貴族思考も出来る。日本人として生きるにはエリザベータは難しい事ばかりだったけど、あちらの世界では私の方が生き辛い。だから半々。そうやって綺麗にくるくる融合して五歳になるまでは記憶は思い出されないまま。で、五歳になった時、女神様から端末と一緒に記憶を戻してくれるそうだ。アフターケアばっちり。そこからは私の好きなように動いていいらしい。

 この五歳というのが、『稀花の乙女は死を回避したい!』の作中で転生エリザベータが記憶を取り戻した頃らしいんだけど、それはあり得ない事になった。だって魂は『ウィルシャナの稀花』の『エリザベータ=トルシュカ』ががっつり存在しているので。作中の転生日本人とやらの出番はない。


 という事で、私『鳥栖絵梨』と『エリザベータ=トルシュカ』の魂はあちらの世界に移動します。

 さようなら地球!さようなら日本!

 ありがとう、皆!私の事を皆が忘れても私は皆のことを忘れない。大好きだよ!

 お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん、おじいちゃん、おばあちゃん。友達の皆。大学の先輩、後輩。会社の皆。

 本当にありがとう、元気でね!ばいばい!

誤字脱字報告は何時もありがたく思っています。

勢いで書いて勢いで投稿して、後で誤字脱字修正しよう~とかなっているのは、

書き上げた直後って目が滑って誤字を誤字だと認識出来ないからです。


滅多に書く事ではないのですが

もし続きが気になるよ、とかありましたら評価してくれると嬉しいです。

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