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08.Developer Mode


 「アメイジング……」


 思わずそんな声が漏れてしまった。


 なんでかって?

 そりゃ、とんでもないことになっちゃったからだよ。

 何がとんでもないかって言うのはちょっと時間を巻き戻す必要があるね。



 そんなわけで、時間は少しだけ遡る。遡るといっても一時間ちょっとだ。


 その時の俺は、『D>』の誘惑に負けて、こいつをタップしちゃったんだ。

 なんか、Dの後ろの『>』が明滅してたんだよ。そんな健気に自己主張されたらさ、押しちゃうじゃん。人族として。

 そしたら、出てきたのがこちら。



=====================

Developer Mode

---------------------------------------

File(F) Tool(T) Setting(S) ...

---------------------------------------

[Edit]

【名前】 アキト 【年齢】 6歳

【格】  5

【種族】 人族+

【身長】 175cm 【体重】 59Kg

【状態】 良好

【総合戦闘力】 3578


【筋力】[▼] 30 [▲] 【体格】[▼] 25 [▲]

【敏捷】[▼] 35 [▲] 【器用】[▼] 33 [▲]

【魔力】[▼] 24 [▲] 【知能】[▼] 51 [▲]


【スキル】[Edit]

開発Lv5、翻訳Lv4、鑑定Lv2


【特性】[Edit]

神族神霊の友

全状態異常耐性、物理耐性、魔法耐性、痛覚耐性


【加護】[Edit]

創世神の加護(真)

知識神の加護(特)


【称号】[Edit]

創世神のパパ:僕たちの助けが必要な時は呼んでね! ……必要じゃなくても呼んでいいよ。

カネリンの相棒:いつでも一緒だよ!

=====================



 凄いことに、色々修正できるっぽい。

 しかも、この画面、まるでタブレット端末みたいに触れるんだよね。

 しかもしかも、[Edit]をタップしたら画面下部にキーボードが出てきて色々編集できるの。

 しかもしかもしかも、パッド式のキーボード面倒だなぁって思ったら、自分の胸の前あたりの空間にサイバーな感じのバーチャルキーボードが出てくるんだよ。しかも振れるとキーの打鍵感が伝わってくる素敵仕様。

 Dって、Developer ModeのDだったんだね!


 テンション爆上がり。


『開発スキルがこんなスキルだったとは驚きだね。イザナギ、イザナミの行き過ぎた愛を感じるね~』


 行き過ぎた愛、言われてますぜ、ナギさん、ナミさん。

 まぁ、確かに、初めて一人暮らしする子供に色々持たせる過保護過ぎる親御さん感があるっちゃぁあるか。


 でもこれ、俺的には凄い、すんごい嬉しいんだけど。

 何せ、暇があればスマホやらパソコンやらを弄ってる人だからね。家に帰ってまずやることが、パソコンを弄ることだもんね。電源は基本切らないからロック解除するだけ。それくらいのヘビーユーザーだから、このスキルはマジで嬉しい。


『確かに、アキト向きのスキルだよね。……あ、アキトがこのスキルを使ったからか、開発スキルの情報が少し展開されたよ。 ……うわ……』


 うわ、って何さ。


『いや、これ、本当に凄いスキルだよ。流石、創世神。グラースの開発(・・・・・・・)ができるスキルだ』


 ──はい?


『限定的な範囲ではあるけど、グラース、つまりこの世界を開発できちゃうスキルだね。ちょっと念じてみて……って言っても難しいか。使い慣れたIDEを思い出してみて?』


 IDE。統合開発環境と呼ばれるやつだ。開発者には馴染み深い言葉だけど、あんまり認知はされてないよね。

 まぁ、動画編集する人にとっての動画編集ソフトだと思ってくれれば良いかな。ちょっと違う? まぁ良いじゃない、ニュアンスが伝われば!


 で、言われた通りにIDEを思い出してみる。

 IDEというよりも、IDEを含んだ自分のパソコンだな、それを思い出しちゃった。


『あ、ちょっと、それはやりすぎ……ッ』


 カネリンが何か慌ててるけど、簡単に思考を止められるわけも無いじゃないですか。しかも思い出してるのは使い慣れた開発用のパソコンだ。一日で一番目にしてる時間が長いやつなんだからさ。

 そしたらなんと、俺の眼前にそれに似た『開発環境』が現れるじゃないですか!


「む?」


 その瞬間、物凄い眩暈がした。

 ベッドに座っていたけど、思わず倒れこんでしまった。


「お、お、お……」


 直ぐ治まるかと思ったけどそんな事は無く、寧ろどんどん悪化していく眩暈。頭痛もし始め、吐き気もしてきた。……なにこれ、ちょっとやばい。


『徐々に慣らしていかないといけないのに、初めから全力出しちゃうから……。今アキトは魔力を使い過ぎた状態なんだ。だから鑑定して自分の状態をチェックするとか駄目だからね! ゆっくり、そのままベッドに横になって』


 お、おぉ。まさに鑑定で自分の状態を確認しようとしてたよ。危ない危ない。

 というか、これがラノベで良く聞く魔力欠乏症ってやつですか?


『まだ魔力は残ってるから魔力欠乏症ではないよ。それになるともっと気持ち悪くなるし、最悪気を失う。今のアキトは、百メートルを全力で走って息切れしたみたいな感じかな。だから数分横になってれば元に戻ると思う』


 それは何より。魔力の扱いはちょっと気を付けよう……。


『まぁ、いきなりこれだけの魔力を使えたのは、超ハイスペックな肉体をイザナギとイザナミが用意してくれたからだけどね。普通はこんなにいきなり大量の魔力を使うなんて無理だから』


 あー、スポーツカーのアクセルをべた踏みしちゃった感じなのかな。納得。

 ……うぷ。色々考えるのもやめて、ちょっと休もう。



  ◇◇◇



 本当に、5分くらい寝てたら完全に元に戻った。

 カネリンの言葉を疑ってたわけじゃないけど、初めての体験だったから不安もあったんだ。でも、今はもう平気。

 何だか若干疲れが残っているような感覚はあるけど、これが魔力を消費したときに感じるものらしい。


 そんなわけで、再び開発スキルを起動する。


 うむ。二度目はそんなに魔力を消費しなかった。あれは初回限定の消費だったみたい。

 するとどうでしょう。眼前には半透明の色んなウィンドウ。視界の端には様々なアイコンが並び、そっちに注意を向けると凄くなめらかにアイコンがクローズアップされる。

 手元には、ステータス画面を弄る時にも出てきた、サイバーな感じのバーチャルキーボードとマウス。意識すれば目線に追随するカーソル。

 それぞれの画面はタッチ操作もできるみたいだし、手元のキーボードとマウスでも操作可能だ。

 地球の技術レベルでもこれは実現できないよ。未来的なサイバー空間だ!



 思わず色々試しちゃったよね!

 目の前にこんなものがあったら試しちゃうよね!


 その時間が大体一時間くらいかな?

 その結果、思わず漏れ出たのが「アメイジング……」



『アキトの集中力もアメイジングだよ』


 そうですね、すいません。

 俺が集中して無言で弄ってた間、ずっとカネリン放置しちゃったもんね。

 わざとらしすぎるカネリンの念話咳払いでようやく気づいた感じだもんね。放置しなくて正解だよ。下手したら丸一日以上ああやってるからね、俺。


「ごめんな、カネリン」


 声を出してちゃんと謝罪。

 うん。完全に俺の落ち度だからね。


『しょうがないな~。まぁ、アキトがこういうところあるのは前からだもんね』


 おう。集中すると周りが見えなくなるタイプだからね!


『褒めてはないよ?』


 うん。知ってる。

 でも仕方ないじゃん? 俺の知り合いのエンジニアも、成人してから性格矯正なんてできるわけないって言ってたし。

 いくら社員教育を施して、色んなスキルを叩き込んだり有用なマインドセットを刷り込もうとしたって、社会人ってことはもうそれなりに生きてきた大人なんだから、その人の在りようなんて変えようが無いんだよ。三つ子の魂百までなんです。


『だから人を放置しても良いっていう理論にはならないからね?』


 ごもっともである。

 だから俺は、こういう時全力で謝るのです。


 本当に申し訳ないと思っています。二度と同じことは繰り返さないと言う努力は怠らないかも知れない。


 せめて言い切れって?

 ごもっともである。



 また話が逸れてしまった……。


 そう、開発スキルの話だ。

 これ、本当に色々できそうだ。──というか、夢中で弄って一時間過ぎちゃうくらいには色々できるんだよね。

 カネリンは限定的って言ったけど、それは【グラウィス】を開発したりするのに比べたらって意味だろう。全てを自分たちで作っていったメタバースとは違って、ここはナギやナミたちが創り上げた世界であり、多くの人たちが生きている世界なんだ。その世界そのものの在り方を変えてしまうようなことはできないのは当然だと思う。【グラウィス】だったら指先一つで大陸一つを消し去るとかも可能だったからね。流石に開発スキルでそれは無理だ。

 それでも、限定的な空間だったり、自分の所有物と認められているものに関しての開発(・・)は結構できそうな印象なんだよね。


『色々できそうだと思ってドキドキできるのは、この世界だと本当にアキトくらいだと思うよ。ヘルプ機能だって充実してるとは言い難いし、ビルドとかデプロイとか言われても意味不明だと思うし、プログラミングは専用の言語っぽいから、ある程度前提知識が無い人は取っ掛かりすら掴めないスキルじゃないかな』


 確かに。

 いきなり目の前にこんな宙に浮かぶ開発環境が現れたところで、開発経験が無い人が見ても意味不明だろうなぁ。気晴らし用に音楽とか掛けたりできるから、そういったスキルだと思われる可能性すらありそう。


『アキト以外には扱えない、アキトの為のスキルだよ』


 ありがたいことです。このお陰で色々と一宿一飯の恩返しが捗りそうだよ。

 感謝です。感謝の正拳突きならぬ、感謝のタイピングでもした方が良いのだろうか。


『それは要らないと思うよ』


 ごもっともである。



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