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第7章 「フルスロットル、側車付地平嵐!」

 何発も撃ち込まれた麻酔弾で筋肉が弛緩し、自慢のジャンプ攻撃も著しく弱体化。

 この状況に危機感を覚えた巨大ツチノコは、尻尾を咥えて転がり落ちる事で不利な戦局を覆そうと試みたんだ。

 玉虫色に光る特大サイズのタイヤと化して大地を揺るがしながら転がり落ちてくる、全長二メートル半の巨大ツチノコ。

 それが危険な存在である事は、確かに変わりないよ。

 だけど私達人間には、団結力と英知という心強い武器がある。

 理性のない巨大ツチノコに、私達人間の強さを思い知らせてやろうじゃないの!

「巨大ツチノコめ、シミュレーション通りの突撃戦法と来たか!準備は良いか、吹田千里准佐!」

「はっ!承知しました、和歌浦マリナ少佐!」

 直属の上司である少女士官に敬礼で応じながら、私は多機能ヘルメットの内部コンピューターを操作したの。

 手早く、それでいて正確にね。

 いよいよ私の花道だもの、しくじる訳にはいかないよ。


 そしてハンズフリーマイクに向かって、滑らかな発声で叫んだんだ。

「オペレーション開始!側車付地平嵐、発進せよ!」

 次の瞬間、オリーブドラブの国防色に塗装された輸送車両の後部ハッチが開き、格納部の中から武装サイドカーが猛烈な速度で飛び出していったんだ。

 高速回転するタイヤで豪快なスキール音を轟かせ、黄色い砂塵を狼煙代わりに巻き上げてね。

「よし!やれ、地平嵐!」

「チ、チィ?」

 その猛々しくも雄々しい勇姿には、巨大ツチノコも驚いたみたいだね。

 象牙色のベースカラーに赤いラインをペイントした滑らかな流線型のカウルに、クリーンエネルギーを使用した無公害エンジンの超馬力。

 そして何より、サイドカーのボンネットにロボットアームと共に搭載されたレーザーライフル。

 これこそが人類防衛機構に正式配備されている、武装オートバイの側車付地平嵐だよ。

 だけど単なる武装サイドカーだと思って甘く見たら、すぐに後悔する事になるだろうね。

「地平嵐、フルスロットル!目指す敵は、斜面を転がり落ちる巨大ツチノコだ!」

 私の呼び掛けに応えるように、象牙色の武装サイドカーはアクセルを一気に開き、此度の捕獲対象へ猛スピードで突進を開始したんだ。

 この多機能ヘルメットには地平嵐のリモートコントロールシステムも搭載されているから、こうして乗ってなくてもラジコンみたいに動かせるんだよ。

 言うなれば側車付地平嵐は、私の命令に忠実な頼もしい猟犬って所かな。


 そうそう、多機能ヘルメットでコントロール出来るのは側車付地平嵐の操縦だけじゃないんだよ。

サイドカーのボンネットに搭載したレーザーライフルだって、ロボットアームとの連動で遠隔射撃出来ちゃうんだから。

 今からは私の本領発揮って局面なんだから、ここはビシッと決めないとね。

「目標捕捉…距離良し、角度良し!」

 ヘルメットのバイザーに表示された車載カメラの映像を確認すれば、狙いを定めるなんて朝飯前。

 視線の動きで照準を合わせれば、後はマイクに向かって叫ぶだけだよ。

「レーザーライフル、撃ち方始め!」

 そうして多機能ヘルメットに搭載されたマイクへ命令を下した次の瞬間、サイドカーに搭載されたロボットアームが機械音を響かせて引き金を引き絞ったんだ。

 奥河内の山間部に立て続けに轟いたレーザーライフルの銃声には、我ながら痺れちゃうよ。

 言っとくけど、私は別に命令違反を働いた訳じゃないからね。

 唐代の中国で名を残した杜甫(とほ)って詩人も言っているけど、「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」だよ。

 要するに、私の狙いは巨大ツチノコじゃなくて他の所にあったんだ。

 そしてそれは目下の敵が激しく狼狽える様を見るに、まんまと功を奏したみたいだね。

「チイイッ!?」

 至近距離で次々と炸裂する小爆発に、凄まじい閃光と爆発音。

 間髪入れずに飛んでくる火の粉や砂利も、厄介な障害物だろうね。

 こうした威嚇射撃の副産物によって軌道を狂わされ、巨大ツチノコの回転移動は次第に覚束なくなってきたんだ。

 右に揺れたり、左に揺れたり。

 これじゃまるで、自転車の補助輪を外したばかりの小学一年生じゃない。

「アハハハッ!巨大ツチノコったら、完全に浮き足立っちゃってるよ!まあ、足なんてないんだけどね。」

「チチ、チイイッ!」

 ままならない回転移動と私の軽口に苛立ったのか、それとも至近距離で炸裂する爆発に命の危機を覚えたのか。

 どちらが正解なのかは分からないけど、巨大ツチノコの奴ったら苦し紛れの反撃に打って出たようだね。

 回転移動のタイミングを見計らって口から毒液を吐いてくるし、鱗に覆われた皮膚は毒液で濡れ光っているじゃないの。

 この鱗の隙間から分泌される毒液も相まって、昔の山間部の住民は「当たっただけで死ぬ程の危険な有毒生物」としてツチノコの事を恐れたんだよ。

 とはいえ目下の標的である巨大ツチノコが躍起になって攻撃しているのは、無線操縦している無人の武装サイドカーな訳だからね。

 幾ら攻撃しても無駄だってのに、野生の性というのは哀れな物だよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 原案送った身としては何ですけど、ここまで力の差があると哀れに見えてきますなぁ(;'∀')
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